27 出会いと別れと最終兵器
私とカナリアは、本日何度目かわからないくらい抱きしめ合っている。というのも、カナリアの父親であるラルバの下見が終わり、本日エルガ村へ帰るからだ。
「本当にお世話になりました カナリアもいつものように笑えるようになったのは、アルさんを始めみなさまの心遣いのお陰です」
ラルバは、帽子を取って深々と頭を下げている。アリオスやジェシカと交互に握手を交わしながら、ほんのひと時の出会いの感謝と別れを惜しんでいた。
「アルちゃん、収穫祭には、絶対に来るから!」
「カナちゃん、今度はもっともっと色んな所に案内するからね」
いっときの別れであることはわかっていても、絶えずどちらかが近づいては、「約束だよ」と抱きしめ合った。私たちの髪には、お揃いのスズラ草の髪留めが留めてある。
「今度は、このスズラ草が咲き乱れるジュレルの丘に行きたいな」
カナリアが、自分の髪に留めているスズラ草の髪留めを右手で優しく撫でた。
「うん、今度はジュレルの丘に連れてってあげる」
私もカナリアとお揃いのスズラ草の髪留めを指先で撫でた。お互いにスズラそうの髪留めを触り微笑み合う。エルガ村までの帰り道、穏やかな旅路でありますようにと願った。
「そうだ! カナちゃん」
私は、再びカナリアに近づく、そしてカナリアの髪留めにそっと指先を触れさせた。
「物理攻撃無効展開 精神異常無効展開 魔物対魔結界展開 位置情報把握展開 ………構築展開」
私の指先から魔力が髪留めへと流れていくから髪留めが、淡く青白い光を放つ。
私の魔力の流れを感じたのかアリオスが驚くほど大きく目を見開いて、私の方を見ている。ジェシカが、アリオスの視線に気づき、思わず何か声に出しそうになり、慌てて口を手の平で覆った。ラルバは、今も何度も頭を下げてお礼を述べている。
「カナちゃん、その髪留め絶対に失くさないおまじないをかけておいたよ」
「おまじない?」
「そう、おまじない 私、魔術だけは得意なんだ」
アリオスが、横で「おまじない?アレがおまじないだと?呪いの間違いだろ」小さな声で、ぼそっと囁いていたが、聞かなかったことにする。なんて失礼極まりない発言だと思ったけど、気にしない。
「またね、またね、またね!」
何度も振り返っては、手を振るカナリアと頭を下げるラルバが、小さく見えなくなるまで見送っていた。
「はあああぁ やり過ぎだ 大バカタレ」
誰にも聞こえるような大きなため息を吐いて、私の頭にゴンとゲンコツを落として来た。
「初めて出来たおともだちが、とっても大事なのはわかるけど、もはやあの髪留め最終兵器よ」
「気がついた時は、魔力発動してやがったから止めるに止められなかったじゃないか 何かやる時は、報告、連絡、相談って教えたよなぁ、その耳は飾りか?」
ぐいぐいと耳を引っ張られ、私は涙目になる。カナリアに何かあっては遅いのだ。また、あんな哀しい笑顔は見たくない。
「それで、今回は、どんな効果を付けたんだ」
説教はするけれど、付与した効果には、興味があるらしい。
「物理、魔術、精神、思いつく限りの攻撃無効に精神干渉、精神異常の無効でしょう、攻撃されたら10倍返しのカウンター構築に、盗難紛失防止に、位置情報がわかるようにもしておいたかな?」
両手の指を折りながら、髪留めに付与した魔術構築を伝えた。何処か遠い目をするジェシカに、額に手のひらを当てるアリオス。どう見ても褒められるような魔術ではなかったみたいだ。
「本当は、通話機能もつけたかったけど、カナちゃんの魔力が必要になるから、それは諦めた」
「んなもん、絶対につけんじゃねえぞ」
「国家予算レベルの髪留めだわ」
便利な機能だと思ったけど、絶対にダメだと却下されてしまったよ。
「とにかく、人前で大規模な魔術はぶっ放すな」
「そうよ どこで誰が見てるなんて、わからないんだからね」
少し口うるさいお小言が、ちょっぴり嬉しいなんて、そんな気持ち知らなかったな。
「ジェシカさん、大好き」
「ジェシカだけかよ」
フンと鼻を鳴らすアリオスに、ベッと舌を出して、ジェシカに抱きついた。改めて、私はマローの街とここに住む人たちが大好きだと思うのだった。
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