25 新しい靴と決意と私
「アルちゃん 待ってたよ いらっしゃい」
「カナちゃん 今日も遊びに来ちゃったよ」
カナリアの宿泊する『黒猫亭』に突撃訪問をした日から、私は毎日カナリアの元へと足を運んでいる。年齢も同じ18歳だということもあり、会話を交わすうちに、アルちゃん、カナちゃんとちゃん付けで呼び合う仲にまでなった。
「アルちゃんにお友達ができて嬉しいわ」
「おともだち?」
「そうよ、お友達 お仕事とか義務ではなく、たわいの無い話や遊んだり、悩みを相談したり、お互いを思いやれる存在になった関係のことよ」
ジェシカには、カナリアの部屋に訪ねている事を報告している。ジェシカには、父親のラルバからもカナリアが、すっかり以前のように明るく笑うようになったとお礼の言葉をいただいたと伝えられた。その時に、私たちのような関係を『おともだち』と呼ぶのだと教えてもらった。
アリオスは、悩みを相談したり、信頼しているし、一緒に住んでもいるけど、お仕事から始まった関係だ。師匠と呼んでいることからも、『おともだち』ではない。エルビスもジェシカだって、親しくしているが、お仕事仲間だ。
エルビスもジェシカも私のことを『アルちゃん』と呼ぶけども、私から、『エルビスちゃん』、『ジェシカちゃん』と返しづらい。どう考えても、保護者枠だ。この距離感の違いが『おともだち』との違いなのかな?
いつものようにアーくんとお茶の準備をする。本日のお茶は、グリーン茶を用意してみた。ほんの少し渋味があるが、暖かいお湯で淹れるグリーン茶は、お饅頭によく合うのだ。お気に入りの餡子がたっぷり入ったお饅頭のお供として持ってきたんだよね。
ソファーに並んで座り、まったりとお茶を啜る私たち。
「ああ、ほっこりする」
「お饅頭が何個でも食べられるよ」
くすくすと笑いながら「何だかおばあちゃんにでもなったみたい」とお饅頭とグリーン茶を堪能した。
『ホッホー』
アーくんが、カナリアの足元に近づき、履いている靴をコンコンと突いて首を傾げる。バルヘルムの革を丁寧に嘗めした明るい赤色の可愛らしい靴。カナリアの着ているワンピースによく似合っている。踵もそれ程高くなく、長時間履いていても疲れにくそうだ。
「アーくん、靴を突いちゃダメだよ カナちゃん…アーくん可愛いからって興味を持っちゃったみたい ごめんね 素敵な靴なのに」
「ううん、いいの、いいの 下ろし立ての靴だからかな?アーくん、革の匂いが気になったのかな?」
やっぱり、新品の靴だったらしい。アーくんもどうして突いちゃうかな。『姫、私め如きですが、役目を果たしました』とでも言いたいのか、ちゃっかりと私の膝に乗ってきて頭をぐいっと押し付けてきたよ。
「あのね、アルちゃん この靴、お父さんが買って来てくれたの」
「ラルバさんが?」
「うん、それでね アルちゃん 私と一緒に街を歩いてくれないかな?」
あの日から、部屋に引き篭もったままのカナリアから出たお出かけのお誘い。思わず大きく目を見開いた。
「私ね、ここで、アルちゃんとお話ししていること、お父さんにいつも話してたの」
「わちゃあ、私、失敗して師匠に怒られたことや、師匠の子供っぽいところとかいっぱい話しちゃったよ」
「うんうん、アリオスさんが、アーくんと本気で喧嘩した話とか可笑しかったね」
思い出すだけで、笑っちゃうとカナリアが、肩を震わせながら笑いを噛み殺している。アリオス、ごめんよ。せっかくかっこよくカナリアたち親子を助けたけど、私が全て台無しにしちゃったよ。
「お父さんがね、よく笑うようになったねって、泣きながら喜ぶのよ」
「泣きながら?」
「うん、それでね、思い出したの マローの街をいろいろ見て回りたかったこと」
カナリアが、私に近寄り両手をとって握りしめた。しっかりと私の目を見据える瞳は、力強さを感じさせる。
「お父さんからは、歩き始めるために靴をプレゼントしてもらったわ」
「うん、カナちゃんにとても似合っている」
「しっかりと背中を押してもらった気がする」
カナリアが、すうっと大きく息を吸い込んだ。
「アルちゃんと一緒なら怖くないと思うの お願い、私と一緒に街を歩いてくれる」
「うん、よろこんで」
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