23 不安と涙と笑顔
乗り合い馬車は、収穫祭間近という事もあり数十人の乗客が乗り合わせていたらしい。
「冒険者のような出立ちで、途中魔物に出会ったのですが、私たち乗客を率先して守ってくださいました 私たち親子もそのためすっかり気を許してしまいました」
ラルバとの会話をメモをとるために走らせていたペンを止め、ジェシカは、ピクリと片眉を動かした。メモから視線を外すと不思議そうに首を傾げる。
「乗り合い馬車には、基本魔物避けが施されているはずですが、魔物に襲われたのですか?」
ラルバは、顎を摩りながら、そう言えばと何かを思い出した様子だ。
「私も乗り合い馬車で、マローに何度も来たことがありますが、魔物に襲われたことは一度もありませんでしたね 今回二度ほど魔物と遭遇したんですけど、男たちが馬車に乗って来た直後と、その後、しばらくしてから、休憩を取ったんですけど、確か…再出発した後でした」
うっわぁ、聞いてるだけでもきな臭い。自作自演の計画的犯行じゃないの?
「私たちが宿泊する宿も場所を知っているからと案内を買って出てくれて、土地勘もありませんでしたので、その言葉に甘えてしまった訳です」
「あなた達は、何も悪くないわ」
ジェシカ言う通りだ。ラルバだって、カナリアだって、まさか襲われるなんて思うはずがない。
「少しずつ人気のない道を選ぶように歩いて行くため、不審に思い本当に道が合っているのか確認したのですが、近道だからとか、大丈夫だとか曖昧な返事をされ……」
「誰も居なくなった路地で、お父さんがいきなり殴られたんです」
カナリアが、両手をぎゅっと握りしめている。ラルバが、殴り倒され、男たちに囲まれた恐怖を思い出しているのだろう。
「よく頑張ったね」
私は、強く握られた両手を包み込むように両手を重ねた。溜まらず、ポロポロと涙を流すカナリアをラルバが肩を抱いて引き寄せる。私は、大好きなマローの街が、この親子にとって恐ろしい思い出だけにならない様にと願った。
「うん、うん アルさん お父さんを助けてくれて……ありが…とう」
涙をいっぱい浮かべながら、精一杯微笑んで見せたカナリアの笑顔が、強く心に残った。
「おう!ジェシカ、嬢ちゃん お疲れさん」
ギルドへ戻ってくると、アリオスが既にエルビスの執務室に戻って来ていた。アリオスは、アリオスで、昨日の事故報告をしていた。
「師匠にもお礼を伝えて欲しいとラルバさんが言ってましたよ」
「大したことはしてないんだがな」
ポリポリと後ろ頭を掻いているのは、お礼を言われ照れている証拠だ。あの時、誰よりも早く行動に出たのはアリオスだった。私は、あくまでもアリオスのフォローをしたに過ぎない。逆に私だけだったら、助けに行ったかどうかも怪しい。
「SSSってのが、伊達じゃないって改めて実感しました」
「おおぅ パンケーキでも食いたいのか?」
「違いますよ」
師匠というだけあって、やはりその背中は大きい。確かにパンケーキの腕前も申し分ないけどね。
「魔物寄せを使った可能性があると?」
「はい、お二人の証言から間違いないと思いますよ」
乗り合い馬車が魔物に襲われたことや、そのタイミングなどからジェシカは、そう推察していた。
「目的は、娘の誘拐か?それとも暴行目的か?」
「狙われたのは、たまたまでしょうけど、恐らくその線でしょうね」
ジェシカも不愉快極まりないと眉間に皺を寄せた。収穫祭は、地方からもたくさんの人がやって来る。皆が皆、お祭りを楽しみにしているのではなく、あの男たちの様に良からぬ企みを企てる輩もいるわけだ。
「警備体制の見直しと各所への注意喚起 やることが多いな」
エルビスが、大きくため息を吐きながら席を立った。
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