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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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111/114

111 ラストダンスと大魔王と私

 私とモナリィは、この合同演習での三日間の歴史しかない。だけど、この戦いの中での数分間は、幾年もの歴史に等しいくらい濃密な対話だった。


 モナリィが、私に熱い告白をしてくれたように、私もモナリィに同じだけの熱量で返さなければならない。


 だから、私は、頬にもう一本の赤いラインを入れさせてあげた。


 私の頬に刻まれた二本の赤いラインを、モナリィが熱い視線で追っていく。上下に打ち分けられる拳も上に打たれた拳だけ、手のひらで軽く触ってあげた。


「!」


 苦しそうに歪むモナリィの顔が、拳に感じた感触で、彼女が気がつかないうちに私の上半身ばかりを狙うようになってきた。


「うりゃああああああ!」


 蝋燭の炎は、最後は強く揺らめくもの。ラストスパートと言わんばかりに連撃の雨が降る。


 うん、やっぱりモナリィは、目が良いね。


 モナリィの身体が、欠乏した酸素を求め、息を吸い込み始めた。赤いラインを見つめる視線が、わずかにブレる。


 私の強化した視力と聴力は、その僅かな瞬間を見逃さなかった。


 右手でモナリィのツインテールを軽く指先で弾くと、一瞬だけモナリィは私を見失わせることができた。


 そして、ツインテールがハラリとモナリィの視界から落ちていくのと同時に私もモナリィの視界から消える。そして左手に持った枝っぽい杖の先についた二枚の葉っぱをモナリィの喉元へと差し出した。


 私とモナリィの動きがピタリと止まる。


 モナリィの撃ち出した拳の先には私はいない。だけどモナリィの喉元には、私の枝っぽい杖の二枚の葉っぱがピタピタと触れていた。


「ああ、やっぱり敵わないや」


 全てを出し切ったモナリィが、潔く敗北を宣言した。


「勝者 嬢ちゃん!」


 アリオスの声が、私たちの戦いの終わりを告げた。


「ぐはっ 息も吸うことができなかった」

「うおおおおお! 強すぎる! 強すぎるぞ!」

「モナリィ! カッコよかったぞ!」


 少しの静寂の後、訓練所に響き渡る声援が、私たちの戦いが、完全に終わりを迎えたのだと感じさせる。


 モナリィが、ペタリと床に手足を投げ出して座って私を見上げる。その瞳には、もうギラつきを感じさせない。いつもの柔らかい弧を描いたモナリィの微笑みだ。


 私もちょこんと膝を抱えて、モナリィの横に座る。


「終わっちゃった」

「終わっちゃったね」


 モナリィと目を合わせ、ふふふと笑う。そしてモナリィが二本の赤いラインが刻まれた私の頬に右手を添えた。


「ヒール」

「!!」


 私の頬に刻まれた二本の赤いラインが、消えてしまった。


「私、ヒーラーだし って何、そんなに哀しい顔をしてんのよ」

「だ、だって せっかくモナリィが刻んでくれた勲章なのに き、消えてしまった」

「はあ? アルさん バッカじゃないの 女の子がそんな傷残しておく方が、可愛くないでしょ! 本当に最初から、最後までズレてんだから」


 ああ!一生モノの勲章だったのに、容赦なく跡形もなく消えてしまった。くうっ ヒーラーとして腕が立つモナリィに負けてしまった。忘れないうちに、赤いラインを永久保存しておくべきだったのに。


「モナリィ! アル!」


 レンが、興奮して大きな声を上げて私たちの元へ走ってきた。そして、ガバリと私たちに覆いかぶさるように肩を組んできた。


「すげえ、すげえ、すげえ! モナリィの連撃もアルのクレバーな対処も何もかもすごかった 俺もいつか絶対に並んでやるからな!」


 おっと、男の子ってこんなに熱苦しいんだ。


「レン あんた死ぬわよ?」

「え? モナリィ 何言ってんだ?」


 モナリィ、レンが死ぬわけないじゃん。何、不吉なことを言ってんの? 私もレンと同じように、首を傾げる。


「クソ坊主 まだ、わかってねえようだな」

「ひぎゃっ!」


 ほら、見たことかと呆れかえるモナリィの視線を追うと、私たちの背後に、指をポキポキ鳴らして仁王立ちするアリオスが、殺気を隠そうともせず立っている。


 顔面蒼白になったレンが、一歩、二歩、三歩と腰が引けた様子で離れていった。


「レン………ったく、アイツは、アリオスさんを学習しねえな ほら、お疲れさん」


 モナリィは苦笑しながら、差し出されたコップを手に取った。


「バートさん ありがとうございます」


 バートが、戦いを終えた私たちを労いながら果実水を持ってきてくれた。さすが、痒い所にいつも手が届く。私も素直に「ありがとう」とお礼を言って、彼からコップを受け取った。


 キンと冷えて、さっぱりとした果実水が、全身に染み渡る。ごく、ごく、っと喉を鳴らしながら一気に飲み干した。


「うはっ 最高!」


 モナリィも、全ての疲れが吹き飛んだというくらい、弾けた笑顔で飲みきった。そして、レンを睨みつけるアリオスとにじり、にじりと後ずさりをするレンを見て、呆れた顔をして言った。


「アリオスさまをご機嫌にするなんて、一番簡単なことなのにね」

「!」

「?」


 モナリィの発言に、私とバートは、驚愕だ。あの理不尽大魔王SSSランクの超問題児、めんどくさいランキング不動の一位、そして映えある裏切り者ランキング殿堂入り一位のアリオスを、簡単にご機嫌にできるだと!?


 そんな何よりも難易度の高いミッションを完遂できるなんて、モナリィ、あなたが一番で良いんじゃないでしょうか?




バートが、今、一番ドキドキしてます


どんなドキドキ作戦か、お楽しみな方は、ぜひブックマークをよろしくお願いします

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