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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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110 お仕置きと乱舞と私

 まもなく30分のインターバルが終わる。


 モナリィが、私との対戦のために、集中力を高めている中、私だって集中してモナリィと戦えるように、この30分をフルに使って準備に走り回った。


 アイテムボックスには、アリオスへのお仕置きのために使うべくお饅頭を七個、アリオスの高級ベッドの代わりに敷き詰めるべく藁束、そして、バートにこれ見よがしに見せしめて食べるためのアイス!


 全て私セレクトで見定めてきた選りすぐりの品物を買い集めてきた。


 ゆっくりと訓練所の中へ入っていくと、すでに中央には、しっかりと覚悟を決めた表情のモナリィが立っている。


 モナリィと目が合った私は、ニッと口角を上げた。私のインターバルの30分、タイムスケジュールは、完璧だった。


「へえ、嬢ちゃん 気合い入ってんな」


 既に審判として中央で私を待っていたアリオスが、私の表情を見て声をかけてきた。


「まあね」

「!」


 アリオスに仕掛けるお仕置きのことを考えるだけでも、ワクワク、ドキドキして楽しみで仕方がない。お仕置きについて、バレるわけにはいかないので、短く返事を返した。私の返事を聞き、モナリィの表情が、さらに引き締まっていく。


 普段は緩やかに弧を描いているモナリィの瞳が、真っ直ぐに私を見つめる。インターバルの間に練り上げたであろう彼女の魔力のオーラが、溢れ出て、モナリィの覚悟と強い意志を感じた。


「アルさん 手加減なんてしたら、絶対に許さないから」

「!」


 なんということでしょう! アリオスのせいで、アリオスのせいで、何もかもアリオスのせいで、モナリィから絶対に許さない発言を受けてしまった。全部、全部、アリオスのせいだ。


「何ブツブツ言ってんだ?」

「!」


 諸悪の根源、アリオスをギンッと睨みつける。その瞬間、ゴチンとゲンコツが落とされる。


「準備はいいか?」


 アリオスは、私を放置してモナリィに声をかける。コクリと頷き、私に視線を戻した。


 モナリィは、本気だ。私も覚悟を決めなければ、彼女に対して失礼だ。私は、すうっと静かに息を吸い込み、肺を絞るように吐き出していく。


「ありがとう アルさん」

「………」


 モナリィのお礼が、どういう意味だったかなんて、私だけがわかっていればいい。私の無言の回答を、モナリィにも正しく伝わったみたいだ。


 訓練所の空気が、ヒリヒリする。私たちを見守る冒険者たちも、ただ静かにアリオスから放たれる言葉を待っていた。


 アリオスが右手を高く上げる。凝縮された時間が、スローモーションのようにゆっくりと見えた。


「始め!」


 アリオスの声が終わるや否や、モナリィが後ろに下がる。


「…………集え 術式展開 攻撃力アップ スピードアップ」

「展開! スピードアップ さらに倍増! 

聴力強化 視力強化 筋力補強」


 モナリィの練り上げられた魔術が、彼女の全身を包み込んだ。一瞬の遅れで、全てが終わる。私自身もモナリィに合わせて、スピードアップを重ねがけした。


「うおおおおおお!」

「初っ端から派手な術式かましてきたぞ!」


 アリオスが、私たちに巻き込まれないように、サイドステップで、距離を取った。相変わらず、冷静に見ているね。


 モナリィが、軸足を蹴ると同時に、私の目の前に現れる。今時点で、モナリィがいた場所に土煙が立ち、ドンと地面を蹴った音が遅れて届く。


 モナリィから突き出される拳が、私の顎を捉えようとコンパクトに伸びて来た。


 私は、拳の軌道をしっかり確認しながら、最小限の動きで首を逸らしていく。私の頬に、すうっと一筋の赤いラインが刻まれた。


 私の動きに大きく目を見開いたモナリィが、すぐさま距離を取った。凄い!凄いね!モナリィ、私は、ドキドキが止まらないよ!


「……凄い」

「うん、凄いね」

「だから、私は、全力で挑む!」


 モナリィのツインテールが揺れた。


「……っらああああ!」


 モナリィが、気合を入れた咆哮を上げながら、ただ立っている私に向かって突進して来た。モナリィから打ち出される左右の拳が、全て私の急所めがけて飛びかかってくる。


「あはははは! モナリィ、最高!」


 モナリィが、息を止めて打ち出してくる連撃を私は、顔を捻り、右足を後ろに下げ、腰を回転させ、その場を一歩も下がらずに、至近距離で躱していく。


 一撃でも喰らったら、私、絶対に倒れちゃうね。

私は、モナリィの撃ち出す拳と、踊り続けた。


「うおおおおおおおお!」

「嵐の中で踊っていやがる!」

「おい、めっちゃ笑ってるぞ おい」


 私たちを応援している冒険者たちが、興奮しきった様子で、声が大きくなっていく。


 視覚強化した私は、モナリィの拳の軌道と残像が見える。筋肉の収縮まで、しっかりと確認することができた。


 聴力強化した私は、モナリィの打ち出す拳の音を全て拾っていく。訓練所に響き渡る声援も、私たちを審判しているアリオスの呼吸まで、しっかりと耳に残っていた。


 だからこそ、私だけにわかること、モナリィだけが感じ取れたことが、ここにあった。


アリオス じっと見てます

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