109 もふもふとモナリィの覚悟と私
モナリィが、肩で息をしながら突き上げた拳をゆっくり下ろす。モナリィよりも大きな身体のザラエフは、両手、両足を広げて大の字になったままで床に倒れている。
その側で勝者として立ったモナリィは、天を仰いだままゆっくりと呼吸を整えていた。
「モナリィ、カッコいい」
私は、惜しみない拍手を勝者のモナリィへ贈る。
私の声と拍手がモナリィの耳に届いたのか、モナリィは私の方へ顔を向け、ニッコリと口角を上げていった。そして、私に向けて親指を立ててサムズアップした。
さすが、私のお友達! モナリィの勝利に嬉しくなって、私はモナリィの側へ駆け寄った。
「モナリィ おめでとう すっごく、すっごく、カッコよくて強かった!」
「アルさん ありがとう」
私が興奮状態のまま、モナリィの両手を握り、ぶんぶんと振るも、どこか静かに受け止めるモナリィ。
大の字になったザラエフの元には、レンの時と同じく水の入ったバケツを持ったバートが駆け寄った。
バートが、ザラエフに遠慮なくバケツの水をぶっかけた。
「ブハッ」
息を吹き返したザラエフが、頭を振りながら上半身を起こした。
「くっは 体格差というハンデがあったのに やられたな 次も魅せてくれよ」
「うん しっかり挑むつもりよ」
なんか、男と女の友情って感じで、混ざりたい。そんな私のキラキラな思いを台無しにするのが、アリオスだ。
「ウチの嬢ちゃんは、強えぞ!」
私にのしかかるように肩を組んで、引き寄せてきた。なぜ、アリオスが、わざわざザラエフやモナリィに挑発するようなことを言っちゃうんだ。相変わらず、空気を読んでくれない。抗議の意味を込めて、思いっきり頬を膨らませる。
「師匠 ウザい」
「フフン ウザくて結構!」
両腕でアリオスを押して、突き放そうとするも、逆に喜んで、頬を突いてきたり、頭をポンポン撫でてきたり、揶揄ってくる。
『ホッホー』
「フン」
アーくんが、再びアリオスに飛び蹴りアタックをかまして見るも、空いた右手でペイッと払ってみせた。
「バート ウチの嬢ちゃんは、そこら辺の弱い奴らにゃ譲れねえよな?」
「ちょっ アリオスさん! 何、本人の前でバラしてくれてるんですか!」
ご機嫌のアリオスが、バートにまで変なことを共有する。バートは、口をハクハクさせて、顔を真っ赤にさせた。
「もう やだ この人」
バートの側に近寄ったアーくんをむんずと捕まえて、もふもふの羽毛に顔をぐりぐり埋める。
バート、気持ちがよくわかるよ!こうなったら、一緒にアリオスにお仕置きをしよう!アーくん、暴れないで、しばらくバートにそのアーくんのもふもふを堪能させてあげて!
『わふ!』
観客席で大人しく私たちを見ていたアリオスの従魔ガルこと毛むくじゃらが、一つ吠えた。
柵をヒョイッと越えて、尻尾をふりふり、てててっと私たちの元にやってくる。
私は、毛むくじゃらの首元に抱きつき、バートがアーくんにしているように、毛むくじゃらに顔を埋めた。ああ、お日様の匂いが、私の荒んだ心を癒してくれる。
『わふ!』
「ガル ………ったく わかったよ 悪かった」
アリオスが、毛むくじゃらの頭を優しく撫でる。やっぱり毛むくじゃらは、頼りになる!これからも、ずっと私をアリオスから守ってね。
気がつけば、訓練所の中央にジューク以外の【白雪】のメンバーが勢揃い。アリオス、バート、私、毛むくじゃら、アーくん……… Cランクの合同演習なのに、なんだか不思議な光景だ。
「あれが、【白雪】ってか?」
「改めて見ると 凄い顔ぶれだな」
観客席のあちらこちらから、ヒソヒソと私たちについて、冒険者たちが呟いているのが聞こえてくる。
「おい アリオス 気が済んだか?」
「んあ?」
エルビスが、観客席からアリオスに声をかけた。いい加減、気が済んでくれなければ、こっちが迷惑だ。エルビスの言い分では、私たちも同罪だと言わんばかりで、心外だ。
「はい、みなさん お疲れ様 これで、決勝は、アルちゃんとモナリィの対戦が決まりました 一旦30分のインターバルを取ります」
ジェシカが、パンと手を叩いて、澄んだ声でこの後のタイムスケジュールを伝えた。
その説明を聞いた後、モナリィは、くるりと背を向けて訓練所の端っこへと歩き始めた。
「モナリィ?」
私の声に、一度足を止めるも振り向きはしなかった。
「アルさん 私、集中したいから」
そう、一言だけ私に伝えると、再びゆっくりと歩き始めた。
「へえ、凄え集中力だな 嬢ちゃん 足元救われるなよ」
アリオスが、感心したようにポツリと言った。
モナリィは、ガチです




