105 お仕置きとランキングと私
他の冒険者たちが、観客席へ移動して行く中、第一試合で戦う予定の私とレンの元に、バートが木製の武器をたくさん抱えて近づいてきた。
「来たな 裏切り者ランキング第三位」
「アル? 何訳のわからんこと言ってんだ? ほら、レン、アル 武器を選べ武器を」
レンが、バートの持ってきた武器の中から、自分の手に合う剣を選び始める。対照的に、私は、裏切り者ランキング第三位のバートへのお仕置きをどうしてやろうかと頭をフル回転させて行く。
「なんだ? アルまだ拗ねてんのか? 終わったらマカロンでも奢ってやろうか?」
私の中で、バートの裏切り者ランキングのポイントが2点引き算された。
「お!? アル、お前その枝で模擬戦するつもりか?」
「うん モナリィが、杖持った方がいいよっておすすめしてくれたから これでいく」
「そっか、大事にしてんだな それ ……… よしっ 終わったら、グリップをカスタマイズしてやろうか?」
私の中で、バートの裏切り者ランキングのポイントが5点引き算された。
バートへのお仕置きは、目の前で最後の一個となったアイスを、大きな口を開けてこれ見よがしに食べてやるってのはどうだろうか? 大好きなアイスが食べられなかった悲しみと私の口の中で溶けていくアイスが、バートへの更なる絶望へと昇華して行く様子を想像して、思わずニヤリと笑みが溢れる。
「よし!」
レンが、木製の武器の山から二本の剣を選んで頷いた。武器を掲げて勇ましくポーズをとるも、目の周りの青タンが、なんだか痛々しい。
「おい、二人とも準備は整ったか?」
アリオスが、私たちに声をかけた後、ジッとレンの顔を見つめ、目がぎっと細められる。アリオスに睨みつけられ、レンが、思わず肩をすくめ身を縮こませた。
「嬢ちゃん その坊主 滅殺しろ 俺が許可してやる」
「はあ、師匠 なにバカ言ってんの?」
裏切り者ランキング第一位のアリオスにさらに5ポイント加算された。
「ああん! 嬢ちゃん そいつは、嬢ちゃんのはだ………」
急にモゴモゴと尻つぼみになったアリオスに対して、なぜかレンが何かを思い出したように、頬を赤らめた。
「レン 師匠は、私がぎゃふんって言わせるからね!」
レンの両手をぎゅっと握り締めると、「はうっ」っと変な声をあげて、顔を真っ赤にしてレンが俯いた。
もう、激辛ペーストのお饅頭だけでは、許されないレベルにまで裏切り者ランキング第一位は、上昇していく。完全なる殿堂入りと言っても間違いないだろう。
アリオスが家具屋で、クッション性や肌触りまで拘りを吟味しながら購入した、超お気に入りで愛用中の高級感溢れるベッドを消して、床に大量の藁をもう一度敷いてやろうか?
アリオスが入浴中に、アーくんと乱入して、お尻を向けて恥ずかしがるアリオスに指を差して、高笑いしてやろうか?
いや、お饅頭のお仕置きも合わせてフルセットでぶちかましてやるのが一番効果的なお仕置きになるんじゃないのか?
私の頭の中で、アリオスへのお仕置き計画が、カチカチと計算されていく。
「くそっ 反抗的な目だな!」
アリオスが、ぐいっと私のほっぺを指先で捻った!
「い、いひゃい!!」
「ア、アリオスさん?」
ツカツカと私に近づいてくるなり、私のほっぺに大ダメージを与え始めたアリオスの暴挙に、裏切り者ランキングの加点が止まらない。
『ホッホー』
毛むくじゃらの頭の上で私たちを見ていたアーくんが、バサリと翼を広げ、私を救出するために、アリオスに飛びかかる。
「フン」
『ホッホー』
アーくんの鋭い蹴りを、手の甲で軽くいなして交わすアリオス。さすが、私のアーくん。私のほっぺが、アリオスから守られたよ。
バサリと、アーくんが私の肩に乗って、アリオスを睨みつけた。
私が、ふーふーと鼻息荒く、憤っていると、バートが呆れながら、私の肩に乗っているアーくんをむずっと抱き上げた。
「はいはい、アルもアリオスさんも痴話喧嘩は、そこまでにしてくださいね さっさと第一試合始めるっすよ ちなみにアーくんは、使用禁止だから、没収!」
「あぁ、アーくん!」
無慈悲にも私のアーくんが、取り上げられてしまった。
バートの裏切り者ランキングに、2点加算された瞬間だった。
世界一器のちっちゃい頂上決戦!




