103 威厳と抱腹絶倒と私
みんなが、盛大な拍手を贈る中、モナリィは嬉しそうにぴょこぴょこツインテールを弾ませながら、満面の笑みを浮かべて、私たちのもとに戻ってきた。
レンとハイタッチを交わし、続いて私とも両手でバチンとハイタッチ!レンより、ハイタッチがグレードアップしている。ふふん、私は、モナリィの幼馴染であるレンに勝った。
「おめでとう モナリィ!」
「んもうっ アルさーん 私、もっと、アルさんみたいに強くて優しい冒険者になる! なってみせるから!」
「ん? 私、別に優しくないよ?」
「ったく 無自覚かよ」
レンが、呆れた顔をしてぼそっとつぶやくが、私は、別に優しくなんかない。モナリィの方が、よっぽど優しい。だって、私に魔術師として、杖を持つべきだとアドバイスしてくれたり、もっと可愛らしくって編み込みをしてくれたり、ただの冒険者としてではなく、女の子同士として、接してくれるのは、モナリィだけだ。レンは、全くわかってない。
「アルさん ずっと、アルさんは、アルさんのままでいてね」
「うん? 私は、ずっと私のままだよ?」
「そっか、そうだよね!」
うん、うんと頷くから、サイドテールが、ぴょこぴょこ動く。
「それでは、最後に一位の発表をする」
エルビスが、私たち冒険者をしっかりと見据える。モナリィより、上をいく冒険者がいたんだ。私が、アリオスとゆっくりしていた間に、活躍してたのかな?まったく、気付かなかったよ。
「一位 アル」
エルビスの大きな声が、訓練所に響き渡った。
へえ、私と同じ名前の冒険者がいるんだ。女の子? それとも、男の子? 周りを見回すも、誰も動く様子はない。むしろ、なぜか有り得ないものを見るように、みんなが私を見つめてる。意味がわからず、壇上のエルビスを見て、首を傾げた。
「アルさん アルさん 呼ばれてるよ」
居た堪れないといった表情で、隣に立っているモナリィが私を肘で突く。
「呼ばれる? 誰に?」
意味がわからず、モナリィに質問をすると大きく目を開いて驚いた顔をした。
「アルさん、たった今、ギルマスに呼ばれたじゃないの!」
「まっさかぁ! 別の誰かだって ギルマス、いつも私のこと 『アルちゃん』って呼ぶもん」
静寂が、ざわりと空気を変えていく。ヒソヒソ、コソコソ、訓練所の冒険者たちが、私の発言を聞いて騒ぎ出した。
「おい、きいたか?」
「おう、ギルマス いつもアルちゃんって呼んでるらしいぞ」
前を向くと少し頬を赤らめたエルビスが、真っ直ぐに私を見ていた。
「ブハッ ギャハハハハハ エルビス ざまぁ! ギャハハハハハ!」
「うるせえぞ アリオス!」
品のないアリオスの大爆笑が、訓練所を制圧する。後ろを振り向くと、椅子から転げ落ちそうになりながら、足をバタバタさせ、エルビスを指差して笑っている。隣に座るバートは、なぜか俯いたままじっとしている。そんなアリオスをエルビスが、大きな怒声をあげ叱り飛ばす。
「くそっ あーもういい アルちゃん お前が一位だ」
「?」
エルビスが、私を呼んだ。思わず自分で自分を指差して、首を傾げる。
「そうだ アルちゃん お前だ 前に出て来い」
「え? やだよ」
「!」
「ギャハハハハハハハ エルビス 今度は嬢ちゃんにフラれたぞ ギャハハハハハ バート 見ろ 見ろってば!」
アリオス、うるさい。今はそれどころじゃないでしょ。私、一位って言われたんだよ。めんどくさいじゃん。
「もう! アルさん 良い子だから ギルマスのところまで行ってよ!」
アリオスの笑い声が、こだまする中、いきなりバンッと強く背中を叩かれ、ヨタヨタと前へ出てしまった。目の前に、超不機嫌モードのエルビス。モナリィ……ヒドイ。
「ようやく出て来たな アルちゃん」
「出て来たくなかった」
背後で、私が喋るたび、ヒーヒー笑うアリオスの声がうるさい。お饅頭は、もう、一人で食べてやる!
エルビスが、大きく、大きく、とてつもなく大きく息を吸って、これほどかってくらいなため息を吐いた。
「アルちゃん 二日間楽しかったか?」
「楽しい?」
エルビスに聞かれて、改めて二日間を振り返る。
ジュレルの丘まで、ビュンッと移動した。
ルーカスがお昼寝してたから、ウォーターボールで叩き起こした。
色んなものをいっぱい採取した。
ルーカスやジャビルが、必死に鑑定していた。
ジュレルの丘で、アーくんお手製のお弁当食べた。
ゴブリンは臭かったけど、アリオスと笑いながら行く道のりは、絶えず笑いでいっぱいだった。
モナリィが、私を可愛らしく髪を結ってくれた。
杖も持った方が良いよって教えてくれた。
女の子も、怖かったと思うけど無事救出できた。
この二日間は、思い出に溢れ、とても楽しかった。
「うん、とっても楽しかった」
「そうか アルちゃん 後ろを向いて見ろ」
エルビスに言われて、ゆっくりと振り返る。
さっきまで爆笑していたアリオスが、柔らかく目を細め満足げな笑顔になってる。さっきまで、ずっと下を向いていたバートとも目が合った。グッと親指を立てて私に白い歯を見せた。アーくんも、毛むくじゃらの頭の上で、嬉しそうに左右に揺れる。
「アルさん おめでとう!」
モナリィが、力いっぱい拍手をしだした。レンも、ザラエフも、他の冒険者たちも、「おめでとう」と言って私に拍手を贈る。
「アルちゃん 見えるか? みんなが、アルちゃんを一位だと認めたんだ」
私は、もう、めんどくさいとは言うことが出来なかった。
誰よりも、モナリィが一番強かった?




