102 ギルマスの総括とお饅頭と私
上位四名の発表。訓練所に並ぶ冒険者たちが息を呑んだ。エルビスが、壇上から私たちの顔を見下ろし、大きく息を吸い込んだ。
「四位 ザラエフ」
「はい!」
名前を呼ばれたザラエフが、短く返事をして、一歩前へ出る。そしてゆっくりと、エルビスの前に立った。
「移動手段についても、スクロールを利用したりと効率的な対応 討伐課題では、他の冒険者の補助を担い、時には鼓舞をあげ、チームリーダーとしての資質も高く評価 ご苦労だった」
「ありがとうございます!」
エルビスから、直接評価を告げられ、嬉しそうな笑みを浮かべたザラエフは、お礼を言うと腰が折れそうなほどの勢いで、頭を下げた。パチパチと訓練場から拍手が贈られる。私だって、空気は読める子。みんなと一緒に、ザラエフへ拍手を送った。
ザラエフは、くるりと振り返って、ペコペコと嬉しそうな笑顔で、私たちに頭を下げる。
「おめでとう!」
「ありがとう!」
戻ってきたザラエフが、仲間たちと握手や肩を抱き合った。その様子を壇上からエルビスも暖かく見守る。
「!」
「?」
ザラエフが、私と目が合った瞬間、頬をほんのりと赤く染め、はにかんだ笑みを浮かべた後、私の背後に視線が移った後、「ひっ」と短く悲鳴をあげ、すすすっと視線を逸らされた。
ザラエフが、何を見つけたのか気になり、後ろを振り向くもあるのは、アリオスたちが座る観客席だけだ。
「まだ、ぷりぷりしてるよ めんどくさい師匠だなあ」
あんなにぷりぷりしてたら、隣に座っているバートが、可哀想だ。アリオスが好きなお饅頭でも買って、ご機嫌を取る必要があるかもしれない。
「コホン 続いて三位 レン」
「ハ、ハイ」
エルビスが、一つ咳払いをした後、三位のレンが名前を呼ばれた。レンは、緊張しているのか、右手と右足が同時に出て、ガチガチに体が固まった状態で、エルビスの前へと歩いて行く。
エルビスは、なんだか呆れた顔をしながら、観客席を睨みつけた。うんうん、ぷりぷりしている、アリオスの表情が邪魔ですよね。
「あー、後ろのアレは、気にするな レン! お前は、指定採取物が、枯渇した中、戦士でありながら物理的にしか回収困難なニードルチップをいち早く回収してみせた 討伐演習でもモナリィとの連携技が、多くのゴブリン踏破と言う結果を導き出している 胸を張って、自信を持つように」
「ハ、ハイ!」
しおしおだったレンが、エルビスの言葉に涙ぐむ。振り返り、ぐんっと私たちに胸を張るレン。パチパチとみんなが拍手を送った。
「レンったら、青タンついたままで、おっかしいの」
「でも、堂々として、カッコよくなったよ?」
「………アルさん、それ、絶対にアリオスさまの前で言っちゃダメよ」
「?」
モナリィから、アリオスの前で言ってはいけないと言われたけど、何か変なこと言ったっけ?私は、きょとんと首を傾げた。
大きく息を吐きながら、モナリィの側に戻ってきたレンは、肩の荷が降りたのか、腕をぐるぐる回して、そのままモナリィの右手とハイタッチを交わす。何、それ、私も混ざりたい。
「レン!」
私も右手を掲げて、ハイタッチの催促だ。
「うっ!」
「う?」
レンは、ズボンの横でゴシゴシと右手を拭うと、その手で優しくパチンと手を合わせてくれた。
「ひっ!」
「ひ?」
「アル! 俺は、アリオスさんを尊敬してるんだ だから、これ以上は、勘弁してくれ」
レンが、アリオスを尊敬しているのは、最初から知ってるってば。
「師匠はね、こし餡のたっぷり詰まったお饅頭が好きなんだよ?」
「そ、そんなこと言いたいんじゃねえ 怖いから 本当に怖いんだから」
目に涙をいっぱい浮かべ出したレン。別に、アリオスと仲良くなる秘訣は、いらなかったらしい。
「アリオス!」
エルビスが、アリオスの名前を呼び、ギロリと観客席を睨んだ。ほら、ずっとぷりぷりしてるから、エルビスだってめんどくさいと思ってたんだよ。後ろを向けば、「フン」っと踏ん反り変えるアリオス。その横で、毛むくじゃらの頭に乗って私たちを観ているアーくんが、可愛い。
「続いて二位 モナリィ!」
「はい!」
私の横で、二本のツインテールを弾ませて、少し高めの声で返事をした。レンと頷き合って、エルビスに前へゆっくりと進む。
モナリィが、胸に手のひらを当て、2、3回大きく深呼吸をして、エルビスに向き合った。背筋がピンッと伸びたモナリィが、とてもカッコ良く見える。
「モナリィ スピーダーパンサーに乗って、颯爽と目的地まで到着したスピードは、今までの努力が全て積み上げられた結果だ 討伐演習でも、第二拠点、第三拠点とヒーラーという立場でありながら攻撃の要として活躍した あのアリオスさえも一目置いた鍛え上げられた体幹は、冒険者としての財産である」
エルビスの言葉に、憧れのアリオスからの言葉も混ざり、それを聞いたモナリィは、顔を真っ赤にして瞳に涙を浮かべた。
「ありがとうございます」
大きな声で、ハキハキと喜びに溢れたモナリィの声が、訓練所の隅々まで響き渡った。
アリオスは、甘いのが好き
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