101 報告書とガチ切れ師匠と私
最終日スタートです
カチカチと、深夜のギルドにペンを走らせる音だけが響く。
Cランク限定 合同演習 実績査定報告書
作成者:査定員ルーカス
【演習概要】
参加者: 24名(本年度Cランク昇格者)
目的: 自動ランクアップ対象者の実力乖離の確認、および実績調査
第1日目:迅速度・採取能力調査
課題1:指定地(ジュレルの丘)への移動
(通常半日を要する行程に三時間半の制限を設定。自力移動能力を調査)
結果: 不合格者5名
上位成績者:
±0:アル(移動手段:転移魔法。査定開始と同時に現地でピクニックを開始していたため、計測不能)
+1.0:モナリィ(移動手段:従魔。Cランクとしては極めて優秀)
+1.0:レン(移動手段:上記モナリィの従魔に同乗。本人の脚力は不明)
+1.5:ザラエフ(移動手段:スクロールによる魔力補助)
課題2:指定植物の採取(品質・量・知識の調査)
結果: 不合格者9名(能力、知識不足、及び乱獲による被害)
特筆すべき成績:
アル:
スズラ草:245束 / 満月草:168束 / 毒消し草:97束(ジュレルの丘で根こそぎ採取 その為後に続く冒険者たちの採取に甚大な被害が出た)
マンドゴラ:76個(全個体特Sランク)
マジックマッシュ:84個
ニードルチップ:56個
モナリィ・ザラエフ: アル氏による乱獲により「グロウ(成長促進)」により再生による採取でしかできなかった。魔力付与が困難な戦士系は、物理採取となるニードルチップのみの採取となった。
第2日目:討伐・連携能力調査
課題:指定3箇所のゴブリン拠点踏破
(1・2箇所目は参加者のみで対応。3箇所目はSSSランク冒険者アリオス氏を含むチーム【白雪】によるデモンストレーションを予定)
実施状況:第1・第2拠点において、アル氏より「常時発動型・多重超絶強化バフ」が査定員に付与される。さらに、重力魔法による拠点消滅および、草原化を確認。
異常事態: 第3拠点にて、アル氏が単独で先行・突入。キングゴブリンを含む全個体を氷結粉砕。
予定:第三拠点は引率者(SSSランク)による討伐デモンストレーションにて、Cランク冒険者への教育的指導を行う予定であった。
実態: 教育的指導の機会は、アル氏の先行突入により消滅。アリオス氏は終始後方で爆笑しており、指導実績は「ゼロ」と判断せざるを得ない。
ルーカスは、ここまで書き上げて激しく筆を置いた。
震える手で顔を覆い、椅子の背もたれに身体を大きく仰け反らせて天を仰ぐ。
「……無理だ 異常だ 異常すぎる ……誰が信じるんだ、この報告書を」
合同演習二日目から中二日明けて、ギルドの訓練所に来ている。今日は、合同演習の最終日だ。
「みな 二日間ご苦労だった この二日間は、とても過酷だったとジェシカやルーカスから報告を受けている」
壇上に立つギルドマスターのエルビスが、訓練所中に響き渡る大きな声で、私たちを労った。訓練所には、最終日残った十名のCランク冒険者たちが集められている。
途中脱落した冒険者やギルド職員、引率者として同行したアリオスとバートは、隣接された観客席から私たちを観ている。
ただでさえ、めんどくさいのに、さっさと終わらせて欲しかったと言ったら、バートが呆れた顔をして私に物申してきたことを思い出す。
「アホか! ただでさえアリオスさんに男連中は意識を刈り取られまくったっていうのに、その上まだ演習を続けさせる気か!」
私の顔面に唾を吐きかけるような勢いで捲し立てられた。悪いのは、私じゃなくって、アリオスじゃん。
訓練所の観客席で、バートの隣に座るアリオスは、ふんぞり返って、未だに不機嫌な顔をしたままだ。
あの日、あまりにも自分が臭すぎて我慢できずに、ウォーターボールでの水浴びを決行したことを、未だにグチグチ、ネチネチと言ってくる。ちゃんと一言謝ってから、水浴びしたのに!
ジャバジャバと水浴びを終え、ざぶんとウォーターボールから飛び出すと、今までで一番見たこともないぐらいの数の青筋を立てたアリオスが、フーフーと鼻息を荒くして立っていた。
前を向けば、「胸を晒すな!」
後ろを向けば、「尻を突き出すな!」
何をしても轟々と怒声をあげ、アイテムボックスから毛布を取り出すと、それを私から奪い取り、ぐるぐるに巻き付けられた。ゆっくり着替えもさせてもらえず、本当に迷惑な話だった。
周りを見ると、レンをはじめ男性陣は、みな顔が腫れていたり、目の周りに青タンが出来ていたりしている。怪我とかは、二日目に症状が現れるというから、中二日では、完治出来なかったらしい。
「続いて、上位四名を発表する」
壇上のエルビスが、二日間の演習報告を終え、結果発表をするところらしい。早く終わってほしいなと思うけど、私一人だけ帰るわけにはいかない。残念ながら、引き続きエルビスの言葉に耳を傾ける。




