100 大円団と破廉恥と私
バサリ、バサリと翼を羽ばたかせる音が聞こえる。
『ホッホー』
「アーくん!」
視覚共有していたからだろう、戦闘が終わったことを察知して、直ぐに私の元までやってきてくれた。
「うん! 間に合った」
『ホッホー』
「そうだね アーくん 師匠たちに伝えてくれる?」
『ホッホー』
アーくんは、コクンと頷くと大きく翼を広げ、洞窟の外で待っているだろうアリオスの元へと飛び立った。
「ふうっ」
私は、本当の意味で戦いが終わったと肌で感じ、大きく息を吐いた。
私の腕の中で眠る少女。年齢的に10歳くらいだろうか?顔に張り付いた前髪を優しく払う。
「このままの姿は、可哀想だよね」
いまだ右手の中にある枝っぽい杖をくるりと頭上で回す。
「術式展開 ヒール 状態異常回復 精神異常回復」
急激な癒しへとならないように、最小限の魔力で少女を包み込んでいく。僅かに淡く緑の光を帯びて、外から内へと染み込ませるように、馴染ませていった。
「ごめんね 洋服までは、治せないや」
アイテムボックスに忍ばせていた毛布を取り出し、少女を優しく包み込んだ。
「よいしょっと」
少女を抱き抱えたまま立ち上がる。外から差し込むオレンジ色の夕日が、蹴散らされていったゴブリンたちをキラキラと光らせていた。
腕の中で、くうくうと眠る少女を起こさないように、ゆっくりと歩く。洞窟の外で、不安そうな顔をしたモナリィが、私を見つけて駆け寄ってきた。
「もう、アルさん 私、心配したんだからね!」
「えへへ ありがと ほら、無事だったよ」
サイドのツインテールを相変わらず、ぴこぴこと跳ねさせて、モナリィが私を怒る。私は、安らかな表情で眠りにつく少女の顔を見せて笑った。
「アルちゃん 彼女が救護対象ね」
「はい 彼女をお願いします」
ジェシカは、駆けつけたギルドの救護班を呼びつけて、医療班の元へ早く連れて行くように指示を出した。
少女が、ジェシカたちによって、仮設テントへと連れて行かれる様子をぼうっとしながら見送った。ふと、私の後ろから、大きな影が私の影と重なった。
「嬢ちゃん 良くやった」
「し、ししょお」
ふと、背後から大きな影が私の影と重なり、アリオスの大きな手のひらが、私の頭の上にぽんっと乗せられた。
「アル!」
バートも私の側に、駆け寄ってくる。いつものチーム【白雪】に包まれて、私の緊張が完全に抜けた。
「ごめん 師匠 私、私、もう我慢ができない」
枝っぽい杖を振り翳し、私は術式を展開する。
「術式展開 ウォーターボール」
「ま、待て 嬢ちゃん!」
だから、ごめんって謝ったじゃん。私は、ローブと着ていた服を脱ぎ捨てると、ざぶんとウォーターボールの中に飛び込んだ。
「ルーカスさん 絶対こっちを向くな」
慌ててバートがルーカスを引っ張って後ろを向かせ、大きな声でアリオスに訴えた。ルーカスも必死なバートを見て、絶対に振り向いてはならないと背筋を伸ばす。
「アリオスさん! 俺は、俺たちは、何も見ていない 見ていないですから!」
ゆらゆらと全身をウォーターボールの中で、洗浄して行く。外では、レンや他の冒険者たちが、私の潜るウォーターボールを呆然とした表情で見ていた。
「あらあら、アリオス 悪い虫がいっぱい出たわよ」
ジェシカが、揶揄うようにアリオスに言った。鬼のような形相で、アリオスが大きな怒声をあげながら、冒険者たちの意識を刈り取って行く。
バタバタと地面に倒されて行く冒険者たち。
アリオスから、以前、破廉恥だとゲンコツ落とされたけど、どうしても我慢はできませんでした。
こうして、合同演習二日目は、平和に幕を閉じたのでした?
100話記念として、本日は2話更新です。いつもありがとうございます♪
実はこの作品、ずっとiPhone 7でポチポチと打ってきました。ついに100話ですが、アルの暴走(お一人様満喫計画)はまだまだ止まりません。
もしよろしければ、100話のお祝いや、iPhone 7への労い(笑)に、ブックマークや評価をいただけると、次の101話への元気になります!




