表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

楳ノ谷汀、溺れる

〈天邪鬼自分で書けば燈下親し 涙次〉



【ⅰ】


「おやおや、わざわざのお越しかい」-「『ゲーマー』さんよ、一つヒントをくれ」-「俺が重傷を負つて迄、勝負に拘つてるのに、白ける事を云ふなよ」-「それを云ふなら、貴様にヒントを乞ふ事が、こちとらにとつてどんな屈辱であるか、分かるか」-「分かつた、分かつた。ヒントは『みづがめ坐』だよ」-「因みに何ポイントだ?」-「15だ」-「よつしや。累計65だな」



【ⅱ】


こんなふうにして、カンテラ、事の糸口を摑んで來た。實際、「ゲーマー」に頭を下げるのは大した屈辱だつたけれども、楳ノ谷女史の命を救ふにはこれしかない。楳ノ谷が駄目になつたら、一味は馴染みのお得意さんを失ふ事になるのだ。その恐れが、カンテラをせつ突いた。

「杵、楳ノ谷さんはみづがめ坐の生まれなのかい?」-「誕生日1月30日ですから、さうですね、みづがめ坐つて事になります」-楳ノ谷は昏々と眠つてゐる。寢汗でぐつしょりだ。寢汗? それにしちや、びしよびしよ過ぎる! これも【魔】の影響か。



【ⅲ】


「さうか!」突然閃いた。「みづがめ坐」の【魔】と云ふのは、文字通り水を滿々と湛へた水瓶の【魔】なのだ。水、では効かぬ。幾らヴァチカン秘傅の「聖水」でも。水は水に依り中和されてしまふのだ!

カンテラ、少し考へた後、「開發センター」から牧野を呼んだ。牧野、あれこれの用は放つて置いて、バイク・ホンダ LY125fiで參上した。「僕に急な用つて云つたら、やつぱり『龍』ですか」-「さうだ」-じろさんが牧野を裸絞めして、牧野は「落ちた」。そして中野區野方の空に、怒濤の勢ひで「龍」が立ち昇つた。



※※※※


〈冷凍庫で水を冷やすと云ふ技を覺え小便近き上近し 平手みき〉



【ⅳ】


*「龍」は牧野の云ふ事しか聞かない。牧野の意識の恢復を待つて、カンテラは云つた。「楳ノ谷女史を、溺れさせて慾しい」-「え゙!? 溺れさせるんですか」-「だうやら今回の【魔】の退治法はそれしかなさゝうなんだ」



* 当該シリーズ第93話參照。



【ⅴ】


區営プール。こゝ迄じろさんのトヨタコロナ改で楳ノ谷を運ぶ。プールは殘暑と云ふのに、水を拔かれてゐる。その干上がつたプールの底に、意識朦朧とした楳ノ谷を坐らせた。「龍」が着いて來てゐる。牧野の司令で、「龍」が口から放水を始めた(因みに「龍」は、水の勢ひを具象化した魔物)。あつと云ふ間にプールは滿水になり、完全に溺死寸前の楳ノ谷の躰が浮かぶのみ。急ぎ彼女を掬ひ上げ、杵塚が水を吐かせ人工呼吸。彼女、一命は取り留めた。で、肝腎の「水瓶【魔】」は-「龍」の水流に押され、【魔】の湛へてゐた水は、何処かに流出してしまつてゐた。



【ⅵ】


これで、お祓ひ完了。楳ノ谷はがたがた震へてゐたが、聡明な彼女らしく、「わたし、助かつたのね!」と、カンテラ一味に感謝頻り。


「ちえつ、またポイント持つてかれた」と「ゲーマー」。


※※※※


〈百舌小鳥を標的にして嫌はれる 涙次〉



現金収入は、「プロジェクト」からの750萬圓+楳ノ谷からの250萬圓。〆めて1000萬。それより、君繪を救ふポイント滿額まで、あと35ポイントと近付いた。次にぶつかる【魔】は、如何なる者だらう? 次回をお樂しみに。ぢやまた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ