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いつもの朝で

『起きろ、拓!』


(んー…)

(体がだるい。動きたくない)

いつものことだが、学校なんて行きたくない。


「むり…」


『また遅くまでピアノやってたんだろ?楽譜散らばってるぞ』


こいつは京助。 猫獣人で少し口が悪いが、性格は俺よりもよっぽど男らしい。女子からもモテている。 毎日起こしに来てくれているが、こいつは一体何時に起きてるんだ?


「うるせぇなぁ…もうちょっと寝かしてくれよ…」


『ほら、起きろ!』


そう言って京助は布団を剥がしてくる。


「寒っ!」

「返せよ!」


『いいこと教えてやる』


何を企んでいるのか、京助がニヤニヤしている。


「なんだよ…」


『あと5分くらいで準備しないと遅刻するぞ?』


「は?」

「なんで早く起こしてくんなかったんだよ!」


冗談じゃない。 1年のときみたいに遅刻して課題を増やされるなんてごめんだ。


『起こしてたぞ?もう20分くらいずっと』


「起きればよかったよ…」


最悪の朝だ



――リビング


「ようやく起きたの?」


母さんが呆れたように言う。


「毎日起こしてもらわないと起きれないなんて、子供じゃないんだから…」


「昨日も遅くまでピアノやって…」


「成人するまでは子供ですぅ〜」


『喋ってないで早く準備しろ』


そう言って京助は俺の頭を軽く叩く。


「へいへい」


俺は急いで準備を済ませ、家を出た。


「母さーん、行ってきまーす!」


「二人とも気をつけてね」


ーー外


「寒っ!」


『当たり前だろ?雪降ってんだから』


「そうだけどさ…」


昨日の午後から雪が降っており、10センチくらい積もっていた。

「雪遊びでもするか?」


『馬鹿か?ただでさえ遅れそうだってのに』


「へーへー、さーせん」


俺は軽く返事をする。


『お前なぁ…明日から起こさねぇぞ?』


「そんな!ひどい!」


『いつからおかまになった?』


「今」


『はぁ…』


ダッダッダッダッ!

突然、京助が走り出した。


(そんなに俺、めんどくさかっただろうか…?)

「ちょっと待て…!」


そう言いながら追いかけた瞬間、俺は盛大に転んでしまった。


『www お前っw』


京助は爆笑している。 雪のおかげで怪我はなかったが、笑われていることは屈辱である。


「そんなに面白いか?」


『ごめんってwww』


「はぁ…」


こんな感じでやり取りをしているうちに、結局遅れてしまった。


――教室


「すんません!遅れました!」

『遅れました』


「お前なぁ…拓、HR終わったら職員室に来い…」


「なんで俺だけ⁉︎」


教室中に笑いの声が響く。

(またしても屈辱である…)


ーー昼休み 屋上にて


『お前、朝から災難だったなw』


「笑うなよ!」


まるで人生の勝ち組みたいに嘲笑ってくる。

正直、本気でうざい。


「今日もピアノ練習したかったんだけどなぁ」


『たまにはやめろってことだろ』


「そうなんかなぁ」


『あ、そだ』


「ん?」


京助がバッグから弁当を取り出す。


『ちょっと見てくれよ』


「なになに?」


そう言って俺に弁当を見せてくる。


「作ったのか?」


『そうなんだよ!』


「どーせ冷凍食品の詰め合わせだろ?」


『残念』


「まさか…!」


まさか作ったのか?

さすがモテ男。

顔も良くて料理もできるなんて、最高ではないか。

俺が女だったら“惚れていた”だろうな。


『味見してくれない?』


前言撤回。

こいつ最低だ。

幼馴染に自分で作った食べ物を毒味させようとしているんだぞ?


「お前、俺に毒味させる気か?」


『俺も一回食ってるから大丈夫だって』


「はぁ…」


仕方ない、食べてやろう。

これでまずかったら、一生恨んでやる。

パクッ。

俺は野菜炒めを口に運んだ。

……

普通に美味い。

正直、母さんのより上手いかもしれない。

こいつ、両親が去年事故で死んでしまったのに、どうやって作ったのだろうか。


「美味い…」


『マジ?』


「マジマジ」


『よっしゃ!』


京助ははしゃいでいる。

こんなにはしゃいでいるのを見るのは何年ぶりだろうか。


「お前さ、料理練習してたのか?」


『ああ、 きょうの○理とか Coo○pad とか見ながら練習してた』

隠す気ねぇだろ…


ーー帰り道


「あぁ…やりたくねぇ…」


『そんな落ち込むなよ、手伝ってやるから』


「手伝うったって、お前今日バイトだろ?」


まぁ、今日というかほぼ毎日なんだけど。 仕方ないよな、両親がいない以上、自分で稼ぐしかない。


『バイトか?休みの連絡入れといた』


「なんでだよ」


「お前の稼ぎが減るぞ?」


『手伝わねぇと、お前やらねぇだろ?』

『人が怒られてんのとか見たくねぇんだよなぁ』


たまにこうやって、俺の手伝いをしてくれる。 毒味とか、意味わかんないこともさせてくるが、こういうところは憎めない。


「コンビニ寄ってなんか買ってこうぜ」


『奢りか?』


「手伝ってくれるんだからな、奢りでいいぜ」


『よし!じゃあ…あれと…これと…』


「いっぱいは買わねぇぞ?」


『えー?』


「子供かよ…」


『成人するまでは子供ですぅ〜』


京助は朝の俺の真似をする。 正直、全然似てない。


「お前なぁ…」


俺はパンと肉まんと紅茶○伝、 京助はおにぎりとピザまんとココアを買い、さっさと家に帰った。


(俺もだけど、絶対この組み合わせは合わないな…)


ーー拓の部屋


『んで、ここがこうなって…』


「あ“ー!わかんねぇ”…」


『だから教えてやってんだろ?』


俺は京助に課題の手伝いをしてもらっていた 正直、全然わからない。


『なんて言ったらいいかなぁ』


京助はものすごく考えている 俺のために、バイトまで休んでくれたのだ しっかりわかるまで聞こう。


『そうだ、これが〜になって、〜が〜になるから』


「あ、そゆこと?」

「なんだ〜簡単じゃねぇか!」


『はぁ、ようやくわかってもらえた』


京助はため息をつく


「お前はただ教えただけだろ?」

「なんでそんなに疲れてんだよ」


『お前がバカだから教えるのに苦労したんだよ」


「バカってなんだよ…」


『まぁ、わかったからいいじゃねぇか』


「サンキューな、京助」


『おう』


気づけばもう夜遅くなっていた 。


「やべ、もうこんな時間かよ…」


『終わったんならさっさと飯食えよ』


「そうするわ…」


俺が伸びながら答えると、京助は立ち上がり、帰る準備をし始めた。


「もう帰るのか?」


『ああ』


「飯くらい食ってけば?」


『いや、帰る』


「じゃあな」


『おう、また明日』


いつもなら泊まっていくのに、今日は帰るらしい。


俺はリビングに行き、少し寂しさを感じながら食事を口に運んだ。


「父さんは?」


「出張よ。明後日まで帰ってこないわ」


「そっか…」


「それより、また京助くんに宿題を手伝ってもらったんでしょ?」


「……まぁな」


「迷惑ばっかりかけて」


「わかってるよ…」


「明日からはちゃんと早く起きるのよ?」


「わかったらさっさと食べて、準備して寝なさい」


「はいはい」


ピアノの練習もしたかったがもう遅い時間のため、パパッと準備をし、目覚ましをかけ、早々と布団に入った。


「よし、明日は早く起きよう」

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