栞さん。
蒼がバスケチームに入ってから、僕はさらに土日の練習が楽しくなった。強いパスが取れない蒼のために、いつも蒼の後ろについて練習していた。蒼はまだ一年生だから体力的な面も考慮して、練習は毎回二時間で終わりだった。二時間で終わってサッサと帰ればいいのに、蒼はいつも僕たちの練習を最後まで見学していた。練習の最後にいつも練習試合をするのだが、僕がシュートをきめるたびに蒼は手をたたいて喜んだ。その姿が可愛くて僕はいつもかっこつけてパスせずに一人で攻めまくって央大を困らせた。
蒼のお母さんと仲良くなるのに、時間はかからなかった。蒼が僕に懐いてくれて
「いつもごめんね。ありがとう」
とゆう何気ない会話から、どんどん会話の回数が増え、どんどん仲良くなった。
どのタイミングでそうなったのかはハッキリ覚えていないが、僕は蒼のお母さんのことを『栞さん』と呼ぶようになった。同じくらいのタイミングで栞さんも僕のことを
『ロクちゃん』と呼ぶようになった。
周りのチームのメンバーや大人たちは僕のことを『ロク』と呼ぶ。
『ロクちゃん』と呼ぶのは栞さんだけだった。
最初はとっても照れくさかったのに、何故かちょっとだけ嬉しくて、その呼び方を結構僕は気に入っていた。