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蒼。

僕の名前は緑。

緑と書いて、ロクと読む。

バスケが大好き。とゆうより、父親がたまにバスケチームのコーチを手伝っていたこともあり、僕はいつだってボールを持って過ごしていた。

小三の頃からユニティとゆうバスケチームに入った。

名前がロクだから背番号も6。

副キャプテンだったのに6がいいと我儘を言って、ずーっと6の背番号。

そんな僕が6年生の時にクラブチームに入ってきたのが、蒼。

蒼はまだ1年生だった。まだまだ幼稚園児の雰囲気が残った、ちっちゃな男の子。

そんな蒼と僕、そして蒼のお母さんでもある栞さんとのお話。


まーあ長いけど、最後まで聞いてほしい。

蒸し暑い6月の体育館。

気持ち悪い重たい空気が身体中にまとわりつくような不快な空間。髪の毛はお風呂上がりみたいにずっと濡れてる。飲んでも飲んでもスッキリしない喉。

バテてる奴らが体育館の隅っこで、だるそうにうちわであおいで遊んでる。

『しんどいなら帰れば?』

と、キャプテンの央大が言った。

僕も央大と同じことを思っていたが、それを面と向かってそいつらに言う勇気なんて、僕にはない。

舌打ちするそいつらに、こっそり

『あんな言い方ないよな〜』

と言うし、央大には

『やる気ないんなら、練習来んなよな〜』

なんて言っちゃう最低な奴が、僕だ。

そんな雰囲気もコンディションもあんまりな時に、一際ちっちゃな男の子とその子の母親と思われる小柄な女の人が、体育館に入ってきた。

人見知りな川口コーチが急にちょっと愛想良く挨拶しだすから、あまりにもそれが滑稽で央大とクスクス笑った。

『央大、ロク。ちょっと。』

とコーチが手招きした。

こんにちわ。と挨拶しながら、央大と僕は走って駆け寄った。

『この子は今日体験に来てくれた蒼だ。まだ小1だから、全部のメニューを一緒に練習するのは厳しいと思うけど、お前ら二人で面倒見てやってくれよ。』

とコーチが言った。

『まだまだ幼稚園児みたいな子ですが、これからどうぞ宜しくお願いします。』

と蒼のお母さんが挨拶した。

蒼はお母さんの後ろにピッタリ張り付いて、

『宜しくお願いします』

と、蚊の鳴くような声で挨拶した蒼が、あまりにも弱々しくて、かわいくて、構いたくて構いたくてたまらなくなった。


 キャプテンの央大は、僕より一年早い小学二年生の頃にユニティに入部した。誰よりも背が低くて、チーム名のユニティとプリントされたチームシャツが、誰よりもダボダボだった。だけど、誰よりも小さい分、誰よりも努力家だった。そして、誰よりも人見知りでおとなしい奴だった。

だから、コーチから二人で。と面倒を頼まれたのに

『ごめん、ロク。俺、どう接していいかわかんないから、蒼のこと見てやって』

と言って、全体練習に混ざった央大。

央大がどんな奴かわかっていた僕は、しょうがないな。と思ったし、イレギュラーな場面に少しだけワクワクした。

小さな華奢な母親の足元にまとわりついてる蒼のところに行き、しゃがみこんで

『お前、名前なんてゆうん?』

と言うともごもごしながら

『蒼』

と答えた。

『蒼?じゃあ俺と似てるやん。俺は緑って書いて、ロクって読むねん』

『変なの〜』

と蒼が母親を見上げて笑った。

『何が変なん?むっちゃ素敵やん』

と蒼の母親がこっちを見て、笑いかけた。

少し汗をかいて髪が湿っぽくなって、蒸し暑い空気のせいだろうか。

僕は何度も蒼の母親のことを見てしまった。

その日からなんとなく蒼の教育係は、僕になった。

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