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精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる  作者: かざみん
閑話

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シヴィルのひとりごと14「軍神のもうし子」


 僕がグスタフと(やいば)をまじえていると、顔面血まみれのツァルニは体勢をグラつかせ落馬しそうになった。


「ツァルニッ!! 」

「……っ」


 声がとどき、上半身をおこした彼はグスタフの脇腹めがけて剣をふった。僕の刃とかみ合ってヤツの剣は動かない、だがしかし拳を(にぎ)りしめたグスタフは小手(こて)で攻撃をふせいだ。


腕にまいた毛皮へ刃が食いこみ、ツァルニが剣を引くと小手が切れる。グスタフはすばやく腕をもどし、損傷(そんしょう)を最小限におさえた。


「……シヴィル!? 」


 正気(しょうき)をとり戻した兵長の左目が僕を見つけ、動揺(どうよう)した声をだした。平和なときだったらうれしいけど、いまは心も(おど)らない。油断(ゆだん)見逃(みのが)さないグスタフは、かみ合っていた刃をはずした。


「ヤツの攻撃がくるっ」


 ツァルニが口をひらくと同時にグスタフの剣が(おそ)いかかる。僕は前へとび出しツァルニの盾になった。狂暴(きょうぼう)な攻撃だがむやみやたらではなく精確(せいかく)太刀(たち)すじ、ヤツの剣はおそろしく速くアックスのように重い。


これまで経験したことがないほど剣をふった。訓練の成果(せいか)か、グスタフの動きにはついていける。狂暴な刃を剣で(はじ)きかえし、()みしめた奥歯へ圧力がかかって欠けそうだ。


 僕の剣に限界(げんかい)がきた。蛮族の分厚(ぶあつ)い剣は()こぼれした僕の刃をたたき折る。血のついた銀色の破片(はへん)は空中を()い、折れた刃とともに落下した。護身用のみじかい剣を(さや)から抜いたけど、これではヤツの攻撃は受け止められない。


「シヴィルッ、向こうへまわれ!! 」


 止まないグスタフの攻撃を返した兵長は突きをはなった。紙一重(かみひとえ)でかわされ、こんどは殺気がツァルニへ向けられる。反対側へ馬を走らせたら、グスタフの()いた手に槍が握られていた。


 片手でツァルニの剣をいなし、もう一方で槍を振りまわす。両手に武器をかかげて使いこなすグスタフは、まるで神話のレリーフに描かれる軍神そのものだ。


(××ック! こんなバケモンに勝てるのかよ!? )


 力の差が歴然(れきぜん)としていても引くわけにはいかない。ヤツの槍を()けたとき、柄が反対側にいたツァルニの頭を直撃した。彼の右目が見えないことを失念していた。


「しまった!? ツァルニィッ!! 」


 頭部を槍で殴打されたツァルニは気を失った。とどめを刺そうとするグスタフを踏みこえ、向こう側にいた馬へとびのった。片手でツァルニを(ささ)え、彼の剣で攻撃をうけ流す。柄を()(ぷた)つに切り槍は短くなったものの、ヤツの猛攻を片手でふせぐのは(きわ)めてハードだ。


どこからか飛んできた矢が足へ刺さった。敵の弓兵が矢を撃ってきて、隙を与えずグスタフの刃がかすめる。敵の増援がこちらへ向かっていた。ヤツとの戦いは不利にすすみ絶体絶命(ぜったいぜつめい)




 僕へ(ねら)いをさだめていた弓兵が倒され、崖の上方にいた隊が降りてきて乱戦へ加わった。僕とグスタフのあいだへ駆けつけた兵士はあっけなく狂刃にかかり、隊長も飛びこんで加勢(かせい)する。


「シヴィル! 無事か!? 」


「ツァルニ兵長がっ、敵の増援が来ます! 隊長、退()きましょう!! 」


 気を失ったツァルニの重みが腕にかかって、ここへ来た理由を思いだした。僕の目的は、なんとしても彼を生きたまま連れかえること。


 隊長が攻撃をおさえたと思った瞬間(しゅんかん)、剣をはなしたグスタフの(ひじ)が僕のメットを直撃した。鉄の兜がひしゃげるくらいの衝撃、意識は飛ばなかったけれど落馬した。


ツァルニを(かば)って背中を打った。グスタフが追いうちをかけて馬の足で踏みつける。かわして転がり崖から落ちてしまい、身体中の骨が折れるとおもってたら地面が崩落して川へ沈んだ。




 茶色くにごった水の中で必死にもがき、肺の空気がごぽりと僕の口から逃げてゆく。抱えた男を離しはしまいと根性で浮上した。


「ゴフゥッ! ゲホゲホン! 」


 川原へ引き上げたツァルニは口を閉じたまま、呼吸をしているのかわからない彼に僕は青くなった。口の中にあった泥水を吐きだして、彼の心臓をおし人工呼吸(じんこうこきゅう)をおこなう。つめたい唇はすぐにひらいて飲んでいた川の水を吐いた。


体は冷えていたけど心臓は動いてたみたい、僕の早合点(はやがてん)で安心して一気に体の力が抜けた。矢は刺さってなかったが右目は出血が続いてる。


 森のしげみがゆれた。


 警戒していたらアーバーの相棒があとを追いかけてきた。馬のほうが持ち主よりも賢いようだ。ツァルニを乗せ、落ちないように()いたチュニックで(くく)りつける。敵は崖の下までは追いかけてこない、足に刺さっていた矢を抜いた僕は手綱(たづな)を引いて川原をくだる。ボロボロの体は悲鳴をあげた。


 なんとしてもツァルニを連れて帰るんだ! 




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