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精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる  作者: かざみん
閑話

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シヴィルのひとりごと5「目のうえのたんこぶ」


 なにが起こったのかよく分からないけれど 今度は失敗しない。バースデーの焼きリンゴのハチミツがけを堪能(たんのう)し、悪徳(あくとく)農園主(のうえんしゅ)()の手がせまる前に村をでる。出荷のときに都市へ同行して、こっそり()めた銅貨をにぎりしめ南へいく馬車に乗った。


 山道をこえれば、蛮族(ばんぞく)のヤツらもアレを運んで来れまい。けわしい山に囲まれた街道は、輸送や連絡につかうため整備されてる。


 崖のあいだへ巨大な門が()関所(せきしょ)になっていた。奴隷(どれい)ではなかったけど身分証も持ってなくて、かんたんな質問と荷物検査をされてから町へ入った。


ここは北城塞都市(きたじょうさいとし)と南の都市をつなぐ中継地(ちゅうけいち)ヴァトレーネ、ちいさな町なのに東方からきた商人もいっぱい出入りして開放的。海側には商業都市(しょうぎょうとし)があるけど帝国兵士が沢山(たくさん)うろついているのでパス、この町でほのぼの兵士ライフを再スタートだ。




 僕は門番に教えてもらった場所へ直行した。


「シヴィルというのか……若いな」

「ピッチピチの有望株(ゆうぼうかぶ)ですよ~」


 到着した兵舎でさっそく面談した。農民という選択肢もあったけど、やはり兵士のほうが給料もいいし前職を()かせる。


 聞いたことのある質問にうんざりしながら笑顔でアピールした。僕の生きた年を合計したら、目の前のヤツはこえてる。ツァルニと名乗った男は兵長、属州にいた部族の出で生粋(きっすい)の帝国兵士じゃない。


 東方人にも()た顔立ちの男は、こちらが愛想(あいそ)よくしても1ミリたりとも笑わない。


 ヴァトレーネは入団試験があった。北城塞都市の兵士みたいに分業ではなく、幅ひろく活動してる。ウィリアムの世界で言う大企業と小さな会社のようなものだ。実戦にも(そく)投入されるのであるていどの実力は必要、満たさなければ兵士みならいになって賃金はもっと低い。


 この時のため村で基礎体力(きそたいりょく)づくりは欠かさなかった。僕が勝ちほこったように兵長へ()びかかるとコテンパンに()された。それも手加減(てかげん)いっさいなし。


小さな町の兵長と(あなど)っていた。前世でも実戦経験のない僕は、一太刀(ひとたち)あびせることも(かな)わない。伸されて地面とキスして、弓の腕前(うでまえ)をアピールしたら試験にはなんとか合格できた。


「弓の腕はいいが、剣はからっきしだな」


 ほめてるのか(けな)してるのかどっちだ。僕の笑顔がきえてムスッとしてると、兵長は木の板を渡してくる。読めないので突きかえしたら、彼は太陽や剣のマークをかいて説明した。どうやら訓練の時間割(じかんわ)り表だ。


 本のマークもあって、文字のよみかきもある。


 北城塞都市にいたころは、読み書きできなくても生活はできた。だから学習の時間なんてなかった。覚えたのは自分の名前と酒場のメニューにある単語だけ。


一介(いっかい)の兵士によみかき教えるんすか? 」


「皆ができる方がスムースにことが運ぶ。それに兵士をやめた時も役にたつだろう? 」


「ふーん」


 若い兵長なのに色々と考えてる様子だ。兵士はあんまり好きじゃないけど、ちょっぴり見直した。あくまでファーストインプレション最悪なムッツリ不愛想(ぶあいそう)な顔は(のぞ)く。




 ツァルニ兵長はマジメな男だ。僕がわずかにでもサボるそぶりを見せたなら速攻でバレる。愛嬌(あいきょう)もないしジゴクミミで目ざとくて、そのうえ執念(しゅうねん)ぶかい。ちょっとサボっ――休んで抜けだしたり、貯蔵庫の葡萄酒(ぶどうしゅ)をかすめとって飲んでいると見つかって訓練場へ連れてかれる。


 食堂でぼやいたら、昼食の仕込みをしていた親父が出てきた。


 朝の残りのスープとパンを持ってきてテーブルへおく。成長ざかりの僕は、かたくなったパンをスープへひたし口へ押しこむ。親父の料理は茶色くて塩濃(しおこ)いめだけど、たくさん汗をながした後はうまい。なんならウィリアムの世界で近所にあった(あぶら)ギトギトの塩加減をまちがえてる店よりいい。


「ツァルニがきびしい? わははっ! そりゃオマエが戦場で死なない為にだろうさ」


 元兵士の親父は笑った。


 蛮族はいないけど山賊(さんぞく)違法(いほう)奴隷の検挙(けんきょ)、兵士として出向くときは戦闘に直結する。北の都市で壁を巡回(じゅんかい)する安全な仕事とはちがった。反面(はんめん)、ふだんはのんびりして大規模な工事へかりだされることも少ない。


お気に入りは馬へ乗れること、北城塞都市は歩兵のほうが多かった。山岳(さんがく)馬は僕をのせて険しい道をゆうゆう疾走(しっそう)する。おなじ帝国の属州なのに壁のあった都市とちがって自由の風を感じた。




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