表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる  作者: かざみん
閑話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/68

シヴィルのひとりごと2「ド田舎の村でそだった」


「シヴィル! お父さんの昼ごはん持っていって! 」


「へいへーい」


 母がドアから顔をだして叫んだ。僕は気だるげに返事して、父の昼食を持って畑へむかう。


 山を開拓(かいたく)して作った畑はリンゴやオリーブの木が植えられてる。秋はリンゴの収穫期(しゅうかくき)、村の人たちはハシゴを立てかけリンゴをカゴへ入れる。父へ声をかけたら降りてきて昼食を受けとった。


 両親はいい人たちだ。僕は車にぶつかられてフェードアウト、最初は混乱したけど村で生きることを受け入れた。もとの世界で読んだラノベにこんな展開あった気がする。ただSNSもゲームもマンガもない原始的(げんしてき)な生活、楽しみかたがわからない。


「今年は豊作さね。シヴィル、おめえは仕分け手伝ってこい」


 子供だけど仕事へかりだされる。児童労働(じどうろうどう)虐待(ぎゃくたい)、もといた国だったら騒がれていただろうが、ここにそんなものはない。


村の女性たちの輪へ加わってリンゴを仕分けする。形のいいもの悪いものを町へ持っていく箱につめる。虫食(むしく)いや落ちて(いた)んだものは売れないので村人が食べる。


加工すればいい売りものになるのにと、ためいきを吐いた。毎年バースデーに母がつくる焼きリンゴのハチミツがけを思いだしてヨダレがでた。




 リンゴいがいにヤギやチーズもあったけれど、食べるのは年1回くらい。育てているものは町へ出荷してしまうため村人の口には入らない。自給自足(じきゅうじそく)は成りたっていたが村は貧乏だった。きょう出荷するリンゴだって、僕たちにとってはたいしたお金にもならない。


木の箱へ〇と×を書いて運ぶ人が分かるように(しるし)をつけ、おいしそうなリンゴを見送る。この村には文字を書くどころか読める人もいなかった。教えてもらおうと思っても、両親も文字を知らない。


「シヴィルはトルニーさん自慢(じまん)の息子だべ」


 隣家の娘さんが感心したようにつぶやく。てきとうにしゃべっていたら、仕分け小屋へ農園主(のうえんしゅ)がきた。農園主は北の町に住んでる貴族、収穫の時期に視察(しさつ)へおとずれる。


「シヴィルくんは本当に頭がよいですねぇ、来年になったら、家でいろんな事をおしえてあげますよ。ぐふふふ」


 手をにぎられて(さす)られた。あぶらぎった目がこっちを見て悪寒(おかん)がはしる。両親は農園主のことばに丸めこまれて、貴族のもとへ養子にいく話がすすんでる。


(ちくしょう悪徳(あくとく)農園主め! 冗談じゃない。あんな(あぶら)ぎったおっさんの小姓(こしょう)なんてやってられっかよ! )


 僕は自由をもとめて奮起(ふんき)した。貧乏な村とおっさんの()の手から逃れる方法をさがした。




 その名も”シヴィルの下克上(げこくじょう)けいかく”


 しぶる両親を説得して、出荷の荷馬車(にばしゃ)へのって町へ来た。持ち物はちいさな袋と一枚のチュニック、僕は村人と別れて兵舎の門をたたく。ここは村の北にある北城塞都市(きたじょうさいとし)


「シヴィルか……(せい)はあるのか? 」

「無いっすよ。ただのシヴィル」


 この都市で姓がある人は(まれ)、ほとんどは階級(かいきゅう)が上の兵士か貴族。一般人は名前だけ、山奥からきた僕が姓をもつなんてありえないこと。


 けいかくは刻々(こくこく)と進行中。あれから色々しらべた結果、兵士になるのがいちばん地位を上げやすい方法だった。


「若いな」


「ぴちぴちのほうが吸収して強くなりますよ! 青田買(あおたが)いですよ、だ・ん・な! 」


「その年でむずかしい言葉を知ってるのだな。まあいい、訓練はさぼるなよ」


 背も伸びはじめて兵士の最低ラインは突破(とっぱ)した。あとはてきとうに成果をあげて地位が上がればのんびりと暮らす。それが”シヴィルの下克上けいかく”。


 北城塞都市はロマス帝国の兵士が中心となってつくられた防衛都市(ぼうえいとし)だ。兵舎を歩く兵士たちはみんな筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)でガタイがいい。百戦(ひゃくせん)れんまの大隊を2つもかかえて、雑兵(ぞうひょう)である僕の出番などなさそう。ほのぼの兵士ライフを送れそうだ。




 村より刺激的な生活、だけど面白いことばかりではない。


 朝から晩まで訓練と土木工事(どぼくこうじ)に従事してヘトヘト。寝るのにも悲鳴をあげる身体を横にする。


信じられないことにベットがかたい、村の(わら)ベッドよりもだ! おまけに雑兵たちはせまい部屋へ押し込められてちょう暑苦しい。でかいイビキで目が()える。




(ちくしょう! 誰だよでっかいイビキかいてるヤツは!! )




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ