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精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる  作者: かざみん
第三章 太古に眠りしドラゴン

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再会そして


 帝国兵は大盾をならべ、槍をかまえて距離をちぢめる。密集した陣形は横へひろがりドラゴンの死角(しかく)へまわりこむ。


「まって! 争いに来たんじゃありませんっ!! 」


 いそいで降りた(みなと)はバラウルの前でおおきく腕をひろげた。帝国の言葉を話せる人間が降りてきて兵たちはどよめく。


「武器をおろせ」


 後方より太々(ふてぶて)しい声が号令をかけた。兵は槍をおろし、大隊は左右へ割れ帝国の紋章(もんしょう)をかかげた隊が近づいてくる。緋色(ひいろ)のマントをはおり、黒鉄(くろがね)に金の装飾鎧(そうしょくよろい)をつけた男があらわれた。ゆったりした動作で馬にのり、ドラゴンにも(おく)することなく真正面へ立つ。


 黄金色の瞳は湊へ向けられたあとバラウルを見あげた。


「君は、ますます私を楽しませてくれるようだな」


 アレクサンドロスが片手で合図すると前面の帝国兵は大盾を地面へおろした。間隔(かんかく)をあけていた大隊は整列し、後方の兵たちは瓦礫(がれき)へ埋もれた者の救助をおこなう。


 こちらを見る者の目はさまざまだ。ドラゴンに仰天(ぎょうてん)してふるえる兵士もいたけど、司令官であるアレクの落ちつきぶりに大隊は平静さを(たも)っていた。




「軍神の血を引くものよ、これ以上は泥沼(どろぬま)と化す。()めよ追走はまかりならぬ」


 正面へ首をおろしたバラウルは地をゆらす声で話した。ドラゴンの言葉を理解した様子のアレクは不愉快(ふゆかい)そうに顔をしかめる。


「ディオクレスの言っていたダキアの守護竜(しゅごりゅう)がのこのこ出てきたか、過去の遺物(いぶつ)は遺物らしく寝ていればいいものを……」


 東門で角笛(つのぶえ)が鳴り、帝国兵とともにシャマラ(ひき)いる竜人たちが現れた。白銀の鎧をまとい青いマントをなびかせる竜人の軍は、船の援軍が間にあわなかった東の前線を打ちやぶった。


 あらたに強い勢力があらわれロマス帝国と蛮族の攻防は止まった。大型兵器を破壊されて敵の将軍もいなくなり、統制(とうせい)の取れなくなった蛮族たちは()()りに敗走していく。


 シャマラはアレクサンドロスと会話を()わし、帝国との交渉をはじめた。大型兵器の脅威(きょうい)はなくなり、両者は南へ建てられたテントへ入った。大隊は奪還(だっかん)した都市の守りを固めるため、崩壊(ほうかい)した外壁へ派遣される。後方の部隊ががれきの撤去をはじめた。


 大欠伸(おおあくび)をしたバラウルはそれをながめている。




 湊は広場を見まわしたが、ラルフは見つからない。


「ミナトッ!! 」


 ドラゴンを見張る隊とは別の方向から、(かぶと)を深くかぶった兵士が走ってきた。息をきらせ両肩へ手をおいたシヴィルは湊を抱きしめる。


「おまえ本当に帰ってきたんだなぁ! 」

「シヴィル! ラルフは!? 」


 ぎゅうぎゅう抱きしめてくるシヴィルを押しもどし、ラルフの居場所(いばしょ)をたずねた。シヴィルを追ってきた眼帯(がんたい)のツァルニが代わりに答える。ラルフは先陣(せんじん)の隊にいて、塔を脱出したグスタフ将軍を追走して北の森へむかった。ドラゴンが降りてくる前だったので帝国が停戦した状況を知らない。


 ツァルニはこれから隊を率い、ラルフを捜索(そうさく)するという。


 シヴィルもあわてて馬のところへ走っていった。捜索に加わりたい湊はここを離れていいものかと(なや)んだけどバラウルのしっぽが背中を押した。笑みをうかべたシヴィルの手をつかみ、馬へ乗ってツァルニのあとを追いかける。


 馬の力強い足どりは崩壊(ほうかい)した壁をこえ、平原の土を巻きあげ北の森へ疾走(しっそう)する。


「まさかドラゴンまで連れてきちゃうとはねぇ~」


 2人乗りでしがみついた背中からシヴィルの声が聞こえた。キキと森へはいった夜に湊はこの世界から消えた。シヴィルたちはそのまま前線へ、数日後にラルフが前線の指揮官としてもどってきたけど様子がおかしかったという。


 戦場にいる彼は以前のやさしさがなくなり、兄のアレクサンドロスのように無慈悲(むじひ)で合理的になったとシヴィルが(なげ)く。


「あれじゃ、まるで戦いの権化(ごんげ)さ」

「シヴィル! 無駄口(むだぐち)をたたくな!! 」

「ひぇ~、じごくみみ~」


 先行するツァルニに叱咤(しった)されて、シヴィルは手綱(たづな)を操作しながら肩をすくめた。森の入り口で先兵の馬を発見し、兵長の指示で馬をおりる。


「ちぃっ、ヤツらまだ残ってる!? ミナトはそこに隠れてて! 」


 ひそんでいた蛮族が飛びかかりツァルニ隊も交戦した。先に戦っていた帝国兵も入りみだれ、森は混乱を(きた)した。


 草木のしげみへ隠れ、心拍(しんぱく)は速く(みゃく)うつ。緊張しながらシヴィルたちを見守る湊の目のまえを丸い光りが通りすぎる。弱々しい光の飛ぶさきは崖の方角、湊は妖精を追いかけ茂みのなかをすすんだ。はげしい剣戟(けんげき)の音が近づくにつれ、たおれた蛮族の数は増えていく。すでに息絶(いきた)えた人が物のように地面へ転がってる。




 崖のうえで()える2人の男が剣を(まじ)えていた。まわりには帝国兵と蛮族の死体がたくさん重なり、男たちは踏みつけるのも(いと)わず剣をふるい火花がちる。

緋色(ひいろ)のマントと鎧は血で赤黒くそまり、黄金色の瞳は野の(けもの)のごとく凶暴な光を放っていた。体躯(たいく)の大きい蛮族の剣をかわしたラルフは兜で頭突きを喰らわせる。よろめいた蛮族へ剣を走らせ猛々(たけだけ)しく吼えた。


『――――おねがい、ころさないで』


 弱々しい光は戦う男たちのあいだへ飛んでいった。


 ラルフが一線を()え、戻ってこない気がした湊も地面を()った。誰のかも(わか)らない血にまみれたラルフの腰元へしがみつく、力まかせに振りまわされ飛ばされて尻もちをついた。


「ミナト!!? 」


 気づいたラルフは動揺(どうよう)の声をだした。(すき)をのがさず蛮族が足元の剣をにぎった。湊は自分が取り返しのつかない事をしたのではないかと思い、2人の男のあいだへ飛びこむ。視界の(はし)にさっきの妖精もいて、蛮族の仮面(かめん)からのぞく青い目が見開(みひら)かれた。


 ラルフがすかさず動きをとめた蛮族の顔面を蹴りとばした。バランスをくずした黒い毛皮の男はうしろへかたむき崖から落ちる。


「死ねない……俺はこんな所でまだ死ぬわけにはいかない……」


「え……? 」


 スローモーションで目に映る男の口がつぶやく、あがいて伸ばされた手は湊の腕をつかみ、体が引っぱられて共に落下した。


「ミナトォ――ッ!!? 」


 崖のうえから手を伸ばし叫ぶラルフの姿が見えた。




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