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パンドラ-collapse-  作者: 兼明叶多
WITCH HUNT
38/86

INCENDIARY FIRE#1 /2

「おいおい、舐めプかよ?」

 一瞬の隙に必殺技を放たれ、ヤオが操作していたキャラクターがKOされる。

 コントローラーを振り回して小躍りするリカルドの横でヤオは小さく舌打ちをした。

「このキャラを使い慣れてないだけだ」

「そーかよ? いいんだぜ、対戦中にコマンド確認しても」

「いや、いい。次の奴は大体分かる」

 そう言ったものの、ヤオは二試合目でも負け、三試合目もだいぶ押されていた。

 ライダースーツの男とサスペンダーの男の熾烈な戦いは制限時間ギリギリまで続き、最終的にリカルドが操作するサスペンダーの男に軍配が上がった。

「あっぶねぇ……こいつ使って負けたらもう泣くしかなかったぜ」

 リカルドはコントローラーをテーブルに置き、グラスにジンを注いで口をつけた。

「さすがに手ェ疲れたな。映画でも観るか」

「また何か見つけたのか」

 ヤオもコントローラーをテーブルに置き、焼きそばの残りを食べ始める。

「おうよ、マジの掘り出しもんだぜ。ちょっと待ってな」

 ゲーム機の電源を落とし、リカルドは部屋の隅にあるラックを漁り始めた。並んでいるのは全てB級映画のメディアケースだ。リカルドがヤオのためにせっせと集めたものである。

 ふいにテレビの画面が切り替わり、ニュース番組が流れ始めた。画面下には「カリンスク港でのテロ、アルケーの目的は」とテロップが表示されている。

<軍とNPCIは共同で捜査に当たり、容疑者の身柄確保を――>

「これ、とんでもねぇよな」

 リカルドが身をのけぞらせるようにテレビを見る。

「魔法使い連中はなに考えてんだか。集団自決でもするつもりなのかよ?」

 ヤオは焼きそばを口いっぱいに含んでいたため返答はしなかったが、おおむね同じ感想を抱いていた。

 昨晩、ロトス島カリンスク港でテロが発生した。

 実行犯は《アルケーの火》とされているが、詳しいことは分かっていない。カリンスク港はロシアンマフィア〝ストラースチ〟の重要拠点であり、ロシアの息もかかっているため、NPCIは思うように捜査を進められずにいるのだろう。

 今回の一件にストラースチは激怒しているらしく、近くパシフィカの犯罪組織全てを集めた緊急会合を開くのではと噂されている。

 ギャング連中がB&Bに魔法使いの暗殺を依頼することはさすがにないだろうが、テロに関係して面倒な依頼が舞い込んでくる可能性はゼロではなかった。

「そろそろパシフィカでも魔女狩り部隊が結成されるかもしれねぇな。嫌な世の中だぜ」

「銃が売れるんだからいいだろ」

「確かに儲かるかもしれねぇけどよ、パシフィカが欧州みたいになるのはごめんだぜ。お前さんは知らねぇだろ、あのクソみてぇな空気」

「生憎、欧州には行ったことがないからな」

「行くな行くな。ロクな場所じゃねえ」

 リカルドの表情に珍しく影が落ちる。

 彼の出身地であるイタリアは、欧州の中では比較的穏健派の国とされている。それでも魔法使いに対する差別が酷いということは、イギリス、ドイツ、フランスなどの西欧は目も当てられない状態なのだろう。

「いいか、金払い良いからって変な依頼受けんじゃねえぞ。魔法使いなんざ関わらないに越したことねぇ」

 ディスクが見つかったのか、リカルドはブラウン管テレビの上にあるプレーヤーの電源を入れた。

 ヤオも焼きそばを食べ終え、口の中の油を酒で押し流す。

「俺は別に魔法使いをどうとも思ってない。金払いがよければ受ける」

「やめとけって。死んじまうぞ」

「死んだらその時だ」

「ざけんな。お前がいなくなったら誰とクソ映画観りゃいいんだ」

「一人で観ればいいだろ」

「こんなもん一人で観てたら死にたくなるだろ」

「俺は家にいるとき一人で観てるが?」

「辛くなるからやめてくれ。一人で観るにしてもせめて普通のにしろよ」

 大きくため息をつき、リカルドはプレーヤーにディスクを挿入した。

「悪い、入力切り替えてくれ」

 ヤオはリモコンに手を伸ばし、〝入力〟のボタンを押す。

 暗転の後、画面には軍服を着た白人男性と、サイボーグ化したサメがでかでかと表示された。

「レッド・シャーク、恐怖の改造鮫。……どうだ、かなりキてるだろ?」

「まあ、期待はできそうだ」

「お前さんが期待できるって言うんなら間違いなくクソなんだろうよ。楽しみで仕方ねぇ。寝たら起こしてくれ」

 ヤオの隣に再び腰掛け、リカルドはリモコンを操作して本編再生ボタンを押した。

 会社クレジットが表示された後、いかにも合成な戦争シーンに合わせてナレーションが始まる。

『一九九一年、ソビエト連邦は崩壊した。それに伴い、いくつかの軍事研究も凍結されたが、地下の秘密施設に逃げ延びた研究者達は秘密裏に兵器の開発を進めていた。その名もレッド・シャーク計画。鮫を兵器に改造して敵国の海に放つという、正しく悪夢のような――』

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