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6話 救助

 

「おい、どうしたんだ!? 大丈夫か!?」


 外に出ると守衛が大声を上げていた。

 ……何かあったのか?


 俺は守衛の方に駆けつけると、そこには全身に傷を負ってボロボロの四人組が倒れていた。

 見た目は十代後半の若者たちが、なんでこんな致命傷を受けているんだろう?


「ぐっ、うっ……た、助けて、くれ」

「つっ、ぐっ、い、痛いぃぃぃ」


「待ってろ、すぐに街の医者を呼ぶから」


「まっ……て、わたし達の仲間がまだ……」


 守衛が医者を呼ぶためその場を去ろうとしたら、怪我をしている内の一人が守衛の足を掴んで止める。


「そういえば、あんた達ひとり足りないな。あとひとりはどこにいるんだ?」


「わたし達が……転移結晶で逃げるための時間を稼ぐために、あの子は一人でダンジョンに残ってくれたの……。お願い、あの子を助けて」


「っ……。悪いが、この街にあんた達以上の冒険者は常駐していない。今からギルドに救援要請を出しても、到底間に合うとは……」


「そん……な」


「諦めろ、リナ」


「リーダー!? だって……」


「彼女は俺たちのために残ってくれたんだ。……守衛さん、ギルドに連絡をするなら、『バグ』が出たって、伝えてください」


「バ、バグだって!?」


 守衛の声音が変わる。

 ……『バグ』?

 知らない名前だな。


 話を聞いてると、どうやら彼らは冒険者のようで、おそらくその『バグ』と呼ばれるモンスターに返り討ちにあったんだろう。


 そして彼らを逃すために、ひとりがダンジョンに残って時間を稼いでくれたってところか。



「と、とにかく、今はできることをやろう! まず、君たちを治療して、ギルドに連絡して専用の討伐隊を編成してもらって……それで、それで……」


「……はぁ。落ち、着け!」


()ったぁ!?」


 見るからにテンパっていた守衛の背中を引っ叩く。


「な、なにするんだ、おっさん!?」


「いいから落ち着け。そんな状態で冷静な判断はできないぞ」


「っ……!? あっ、ああ、おっさんの言う通りだな。すまない、動揺していた」


「落ち着いたなら良し。それで、彼らが行ってたダンジョンってのはどの辺にあるんだ?」


「えっ? ……それは、ここから南に真っ直ぐ三キロほど進んだ森の中にあるけど」


「うん、了解」


 俺はダンジョンの場所を聞くと、リナと呼ばれていた女性冒険者の元に向かう。


 仲間を助けられない絶望感か、または仲間を見捨ててしまった罪悪感か……それとも、その両方か

 リナは顔面蒼白の様子で涙を流し続けている。


「リナっていったね? 君の仲間は俺が絶対に助ける。だから心配するな」


 リナの肩に手を置き、ハッキリとそう伝える。


「本……当? 仲間を……ライカを、助けてくれるの?」


「ああ。……俺に任せろ」


「よかっ……た」


 俺の言葉にリナは安心したのか、眠るように気を失う。

 心身ともに限界だったところで気が抜けたんだろう。


 息は安定しているし、命に別状は無さそうだ。


「ちょ、ちょっと待てよおっさん! 助けに行くって正気か!?」


「勿論。それに彼らの仲間を放ってはおけないだろ?」


「いくらなんでもそれは無茶だ。彼らはシルバーランクの冒険者なんだぞ!? そんな彼らが簡単に全滅するような相手に、おっさんがひとりで助けに向かっても、わざわざ死にに行くようなもんだ」


『シルバーランク』が何かは知らないけど、彼らもそれなりに腕の立つ冒険者なんだろう。

 そんなパーティーが全滅せざるをえないほどのモンスターがダンジョンにいるなら、守衛が俺のことを心配して止めるのも理解できる。


 だけど、そんな強敵を前に、仲間を守るためにひとりで残った人がいるなら、それは絶対に助けてあげないといけない。


 それにもう、リナと約束しちゃったからね。



「大丈夫。俺に任せろ」


「っ……!?」


 リナに伝えた、同じ言葉を今度は守衛に伝える。


 さて、こうしてる時間も惜しい。

 今は一分一秒を争う事態だ。


 俺は屈伸し、軽い準備運動を始める。


 ダンジョンはここから南に真っ直ぐに三キロくらいって言ってたな。

 ……なら、数分で着くな。


「ここは任せたよ」


 守衛の肩をポンと叩くと、ダンジョンに向けて走り出す。



「待っ……」


 守衛が何か言いかけていたようだけど、その言葉を最後まで聞き取ることができず、俺はその場を去る。


 さて……絶対に助けてあげないとな!


 ◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆



「待っ……って、もうあんなところにいんのかよ!?」


 俺が制止の言葉を言い切るよりも早くおっさんは行ってしまう。

 ほんの数秒で既にその姿が小さくなるほど離れてしまった。


 身体強化の魔法で脚力を強化しているのか、それとも風魔法で加速しているのだろうか?

 少なくとも、魔法も使わずにあれだけ速く走れるってことはないだろう。

 もし、そんな奴がいたら化け物だしな。



 それにしても、おっさんがあまりにも自信満々に『任せろ』っていうから、つい言葉が詰まってしまったけど、実はおっさんってかなりの実力者だったりするのか?


 今思い返してみれば、おっさんに服をあげた時に、おっさんの体をみたけど、恐ろしいほど引き締まっていた。

 しかも、ただ筋肉をつけたっていう訳じゃなく、ある目的のために無駄を全て削ぎ落としているような体つきだ。


 盗賊に身ぐるみ剥がされた可哀想なおっさんかと思ってたけど、もしかしたら違ったのだろうか……。


 だけど、今回の相手はあの『バグ』だ。

 おっさんが隠れた実力者だったとしても、一人で討伐するのは不可能だ。


 うまいこと隙を見て、取り残された冒険者を救ってくれればいいけど……。

 まあ、おっさんも『バグ』の危険性は知ってるはずだろうし、無茶はしないだろう。


「……死ぬなよ、おっさん」


 既におっさんは見失ってしまったけど、ダンジョンの方に向かって呟き、俺は守衛として託された仕事を始める。


 まずは怪我をしている彼らの手当てをしないとな!

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