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40話 処遇

 

「やあやあ、よく来てくれましたね。まずはそこに座ってください!」


 師匠に怒られた翌日、『スターロード』の一件について事情聴取があるため、俺とライカは冒険者ギルドの本部に呼ばれていた。


 案内された部屋に向かうと、そこには長椅子に腰をかけているギルドの受付嬢のミラさんが楽しそうに俺たちを招き入れてくれる。


「ミラ様、まずは挨拶からするべきかと」


 そして、その横にはギルドマスターであるギルバーツさんが立っていて、ミラさんに忠告をしている。

 ……って、ミラ様ってどういうことだ!?


 この構図でその話し方だと、まるでミラさんの方が偉い人みたいじゃないか。


「そうですね……それじゃあ改めて挨拶しましょうか。ワタシがこの冒険者ギルドのギルドマスター『ミラ』です」


「えええええ!?」


 今、このミラさんがギルドマスターって言ったか!?

 前会った時は横にいるギルバーツさんがギルドマスターって名乗ってたのに……。


「あの時は騙してすいませんでした。基本的にはワタシの側近のギルバーツにマスターを名乗ってもらっているんです」


「なんでそんな事を……」


 ギルドマスターって身分を隠して、受付の仕事をしていた意味が全く分からないんだが……。


「ギルドマスターって肩書きは窮屈なんですよね。それにワタシはデスクに座って仕事をするより、受付で冒険者の皆さんとお話ししている方が性に合ってるんですよ」


「それでギルドマスターの仕事のほとんどを私に回されているのですよね」


「適材適所というやつです。そういう仕事はギルバーツの方が向いてるでしょ?」


「……はぁ」


 ギルバーツさんが深いため息をつく。

 どうやら、ミラさんには相当振り回されているようだ。


 だけど、これで納得がいったこともある。


 初めて二人に会った時、俺はギルドマスターを名乗っているギルバーツさんよりギルドの受付嬢のミラさんの方が強いと思った。

 だけど、それもそのはずだ。


 だって、目の前にいるミラさんこそ、本物のギルドマスターなんだから、そりゃあ強いはずだよ。


「こほん。それはさておき、今回こうしてワタシとギルバーツの正体を明かしたのは理由があります……ライカさん」


「は、はいっ!」


 ライカは、突然名前を呼ばれたことにびっくりしたのか大声で返事をする。


「今回のお父様と『スターロード』との一件、ギルドの長として改めて謝罪いたします。……本当に申し訳ありませんでした」


 ミラさんが深く頭を下げると、それに続くように、横に立っていたギルバーツさんも頭を下げる。


「なっ!? 頭を上げてください! 今回悪いのはユージン達『スターロード』で、貴女が謝罪をするようなことじゃありません!」


「いえ、これはギルドの責任でもあります。……実は、今回の真相をワタシとギルバーツは把握していました」


「「えっ!?」」


 今度は俺とライカが揃って驚きの声を上げる。

 ミラさんとギルバーツさんが、今回の件を知っていただなんて……。


「……それなら、なんでもっと早く対処してくれなかったんですか!!」


 思わず声を荒げてミラさんを責めてしまう。


 だけど、ギルドのトップであるギルドマスターが真相を知っていて何も対処していなかったのだとしたら、こちらとしても到底許せる事じゃない。


 万が一、対処しなかった理由が隠蔽や偽装だとしたら、今ここで揉める事もいとわないぞ。


「……ミラ様は悪くない。全ての責任は私にあるんだ」


 ギルバーツさんがミラさんを庇う。


「どういう事ですか?」


「私とロックスは古い友人でね。それで、ロックスから今回の件は自分が死ぬまで表に出さないように釘を刺されていたんだ」


 ギルバーツさんが師匠の友人!?

 ……って事は、師匠が言っていた、ギルド幹部の旧友ってのはギルバーツさんの事だったのか。



「無論、私もロックスにはすぐにでも事実を公表するよう何度も説得をしたのだが、あれであいつも頑固だから首を縦には降らなくてね。どうせ意地になっていたんだろうがな」


「師匠はそんな人ですから」


 だけど、ギルバーツさんは批判を受けることを承知で師匠の意思を尊重してくれたのか。


「無論、『スターロード』の監視は常に行っていたし、万が一ロックスが死んだら直ぐに事実を公表して『スターロード』に然るべき罰を与える予定だったがな。……まあ、信じてもらえないかもしれないが」


「……信じますよ」


 ギルバーツさんが嘘をついていないことくらい、目を見れば分かる。

 ギルバーツさんは友人である師匠の意思を尊重したからこそ事実を黙認していたんだろう。


「ギルバーツさんは父のために黙っていてくれたんですし、これ以上謝らないで下さい。むしろ、父のために色々と手配をしてくださり、こちらこそ感謝します」


「許してくれるのか?」


「許すもなにも私は最初から怒っていませんよ」


 どうやら和解したようだ。

 少なくともライカが怒っていないなら、俺がこれ以上どうこう言うのは野暮だな。



「さて、和解が済んだようなので次の話に進みましょうか」


 ライカとギルバーツさんの様子を見て、ミラさんが話を進める。


「まず『スターロード』の四人ですが、クエスト結果の虚偽報告に加えてパーティーメンバーへの脅迫及び一般市民への暴行の罪で冒険者の資格を永久に取り消しました」


 資格の取り消しか……。

 冒険者にとってはかなり重い処遇だろう。


「この処罰に対して『スターロード』は受諾し、昨日の時点で全員田舎に帰っていきました。……どれだけ怖い目にあったんでしょうねぇ?」


 ミラさんが楽しそうにこっちを見てくる。


 ……イヤ、チガウンデスヨ?


 確かに少しやり過ぎたかなって思うし、感情のまま暴れ過ぎたとも思う。

 だけど、これでも殺さない程度には手加減はしたんです。


「そして、今回の件についてもう一つだけお二人に……と言うより、シナイさんにお伝えしなければいけないことがあります」


「俺にですか?」


「はい。実はシナイさんには、逮捕状が出ています」


 ……へ?



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