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39話 面子

 

『スターロード』を倒した後は色々と大変だった。

 まず、逃げられないよう『スターロード』の四人を縛り上げ、村に連行しようとするけど、四人とも気絶していたから俺が全員背負って村まで運ぶ。


 大した重さじゃないけど、歩きにくくてしかたなかったわ!


 しかも、村に着くなり、『スターロード』を信仰している村人達からユージン達のボロボロな姿を見て、何があったのかと詰め寄られた。


 事の真相を伝えるが、ほとんどの村人が信じず、『スターロード』を壊滅させた俺やライカに怒りが向けられそうになるが、同じ村人のオリビアが庇ってくれたおかげでなんとかその場は収まった。

 まあ、ほとんどの村人は納得していないんだろうけどな。


 とりあえず、ユージン達は王都のギルドに引き渡すために、俺たちはすぐ村を後にすることにする。

 このまま村に在住したところで、村の英雄を討った大罪人として村人から襲われかねないしな。


「本当に……本当にありがとうござきました!!」


 村を去る際に、オリビアが改めて俺たちにお礼を言う。


「頭を上げてくれ、オリビア。」

「そうそう。それにオリビアがいたから『スターロード』の真相が分かったんだから」


「ですが……」


「それより、オリビアこそあんな風に俺たちを庇って大丈夫か?」


 村人達が俺たちに詰め寄ってきた時に、オリビアは前に立って『この人達は私の恩人です! 危害を加えないでください!!』と啖呵をきってくれたおかげで興奮した村人達は少し落ち着きを取り戻してくれた。

 ……オリビアさん、まじかっけぇー。


「はい! まだ信じていない村の人たちも必ず説得してみせます!!」


「ははっ、頼もしいな」


 思わず笑みがこぼれる。

 ユージン達から口封じのために命を狙われたせいでメンタル面を心配したけど、この様子なら大丈夫そうだな。


「色々とケリが着いたらまた村に来るから。元気で」

「ライカさん……お父さんのロックスさんにもありがとうと……私はあなたのおかげで元気ですと伝えてください」


「ああ、必ず伝えるよ」


 ライカとオリビアが仲睦まじい様子で握手を交わす。

 今回の一件を超えて、二人の仲も深まったようでおじさんは嬉しいよ。


 特にオリビアは師匠の一件のせいで、娘であるライカに負い目を感じていたようだしな。


 まあ、ライカの性格上、オリビアを恨むようなことはしないと思っていたから、そこはあまり心配していなかったかな。


「そろそろ行こうか」

「ええ。それじゃあ、オリビア……元気で」


「はい!!」


 オリビアと別れの挨拶を済まし、俺とライカは馬車に乗って王都へ戻る。

 オリビアは俺たちを見送るために、見えなくなるまで笑顔で手を振り続けてくれた。


 師匠が、文字通り命がけでこの子を守ったからこの笑顔があると思ったら、弟子として誇らしく思える。


 それに、俺は師匠不幸の弟子だけど、今回の一件で師匠の汚名を注げたと思う。

 はやく師匠の家に帰って報告してあげないとな!


 きっと喜ぶぞ!!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「こっの……バカ弟子とバカ娘がっ!!」


「っづ!?」

「うっ!?」



『スターロード』を冒険者ギルドに引き渡した後、師匠の家に帰るなり、師匠から特大の拳骨と怒声を受ける。


「な、なにするんですか、師匠」

「うぅぅぅ……痛い……」


 突然の攻撃(げんこつ)による痛みと驚きのせいで、俺とライカは頭を押さえながらその場にしゃがみこむ。



「なにもくそもあるか!! さっき、ギルドの職員がウチに来てお前らがやった事の説明を受けたぞ!!」


「あぁ、その事……って尚更師匠が怒る意味が分かんないですよ! 俺たちは師匠のことを思って……!」


「だから、それが余計なお世話だって言ってるんだ、この大馬鹿弟子が!!」


「いっだぁっ!?」


 本日二度目の拳骨を喰らってしまう。

 だけど、師匠がなんで怒っているのかが本当にわからない。


 俺たちは師匠のために『スターロード』と戦った。

 それに、ユージン達をギルドに引き渡して当時の説明をすることで、師匠の汚名の返上までした。


 感謝されこそすれ、怒られる筋合いはない。


「アレは俺の実力不足が招いたことだ。俺がもっと強ければ楽に魔物の大群を退けることもできたし、お嬢ちゃんを危険な目にあわせることもなかった!」


「でもっ!」


「でももくそもない! 俺が納得してるって言ってるんだ。それなのに、自分の弟子と娘に尻拭いまでされた俺の気持ちを考えてみろ!!」


「「……っ」」


 俺たちがした事は余計な事だったのだろうか?

 確かに、師匠が問題にしていないのに、俺たちが騒ぎ立てることで師匠の面子を潰してしまったのかもしれない……。


「だけど、父さんが亡くなったらオリビアな危険が及んでいたかもしれないんだ! 私たちは無駄な事をしたとは思っていない!!」


 ライカが師匠に向かって思わず言い返す。

 ライカの言う通り、オリビアは実際に『スターロード』に襲われかけていたんだ。


 あの場合は手段を選んでいられる状況じゃなかったし、戦闘をしたのも仕方ないよな。


「それはお前達が村で七年前の事を聞き回っていたから、結果的にユージン達を刺激したんじゃないのか?」


「「……うっ」」


「それに俺が、自分が死んだ後ことを何も考えていなかったと思うか? ちゃんとギルドの上層部には、俺の死後、お嬢ちゃんを守るよう手回しは済ませてたさ」


 つまり、結果的には俺たちのせいでオリビアを危険な目にあわせていたって訳か……。


「って、ちょっと待ってください。ギルドの上層部に手回しをしていたってことは、ギルドは七年前の事件の真相を知っていたんですか!?」


「……ギルド幹部の旧友にだけは真相を伝えていた。そいつには頼み込んで俺が死ぬまでは当時のことを表沙汰にしないようしてもらっていたがな」


「そうだったんですか……」


 師匠の旧友って人は、当時の事を揉み消す訳ではなく、師匠の願いを尊重して黙ってくれていた訳か。


「……お前達は明日、ギルドに呼ばれて事情聴取をされるんだろ? 丁度いいから、今日は王都の宿にでも泊まって、自分達がどれだけ余計な事をしたのか、よく考えて反省しろ。いいな!!」


 そう言うと、師匠は怒りながら部屋を出て行ってしまう。


「……シナイさん、私たちがしたことは間違っていたのでしょうか?」


 ライカは師匠に怒られたのが堪えたのか、不安げに俺に聞いてくる。


「確かに、師匠の気持ちを考えずに勝手なことはしたのかもしれないな」


「っ……」


「だけど、間違ったことはしていない。それは断言できるよ」


 そうだ。

 俺たちは間違ったことはしていない。


 少なくとも、自分の父を信じたライカの気持ちが間違っているなんてこと、あっていいはずがない。


 俺の言葉に救われたのか、ライカは少しだけど元気を取り戻す。



 もっと師匠と話し合いをしたいけど、今の状態だと喧嘩が悪化する気しかしない。


 ギルドにも明日、呼び出しを受けているし、師匠の言う通り、今日はライカと王都の宿で休むことにしよう。


「それじゃあ行こうか」

「はい!」


 そして、俺たちは改めて王都へ向かうことにする。


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