38話 けじめ
「さて、それじゃあ最後のお仕置きを始めるぞ」
「がっ、ぎっ、ぐぅぅぅぅ……くっ、そっ……がぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ユージンは吹っ切れたのか、俺に向かって真っ直ぐ突っ込んでくる。
逃走でも諦めでもなく、特攻を仕掛けるとは……、ただのヤケクソかもしれないけど、諦めない心掛けにほんの少しだけ見直した。
まあ、どっちみち許す気はないけどな!!
「死っねぇぇぇぇぇ!!!!」
ユージンが風を纏った拳を繰り出してくる。
避けるのは簡単だけど、ここは……
「よっと」
「っ!?」
手のひらで楽々と受け止めてみせる。
拳を止めた際、強風が周囲を舞うが、俺の服を僅かに傷つけただけで、俺自身へのダメージはゼロに等しかった。
本来はこの風で殴った相手を吹き飛ばすって魔法だったんだろうけど、このくらいの風で吹き飛ばさせるほど柔な鍛え方はしてないんでね。
「まるでそよ風だな」
「ぐっ……」
俺の煽りにユージンが怒りと悔しさで顔を赤らめる。
本来、こんな嫌味をわざわざ言う必要なんてない。
だけど、こいつだけは別だ。
心も体も、全てを圧倒してねじ伏せないと気が済まない。
以前、ライカに言われたことを思い出す。
『シナイさんが怒るのってどんな時ですか?』
そう聞かれた時に俺は、『目の前で非道な行為を見せつけられたり、身内を侮辱されたりしたら怒る』と答えた。
そして、こいつはその二つの禁忌を犯した。
自分の利己のためにライカとオリビアを手にかけようとした上、師匠の腕を身勝手な理由で奪った。
つまり、何が言いたいっていうと……まだブチギレてるってことだ!!
ユージン以外の『スターロード』のメンバーは全員ぶちのめしたけだ、まだまだ心の中の煮えたぎるほどの怒りは収まらない。
少なくとも、諸悪の根源であるユージンを倒さないと俺の心は晴れないだろう。
……本当、どの口でライカに『常に冷静に』って言ってるんだか。
師匠として情けない。
「ぐっ、ぎっ、痛っ……は、離せ!」
「おっと! 悪い悪い」
色々と考え過ぎて、いつの間にかユージンの手を握ってしまっていた。
野郎と男を手を繋ぐ趣味はないし、すぐ手を放すとユージンはその場で手を抑えながら膝をつく。
「つっ、ぐっ、ぐぅぅぅぅ」
どうやら、無自覚に強く握りしめてたせいでユージンの手を潰してしまったようだ。
ユージンは痛みで苦しそうに顔を歪めている。
……もう、終わらせてやるか。
「決着をつけるぞ、ユージン!」
師匠の話をオリビアから聞いた時に、決めたことがひとつある。
もし俺がユージンと戦うことになったら、必ずこの技を使って倒すって!
「歯をくいしばれ!!」
ロックス流剣技……『八花繚乱』!
この技は、両手両足、そして両肩と額と腹部の八箇所を同時に打ち抜く連続剣技。
そして、師匠が最も得意としていた剣技だ!
「ばっ……ピギィィィィィイイイ!!」
ユージンは俺の剣を全て受け、絶叫に近い悲鳴をあげながら吹き飛ばされる。
ライカがゴラン戦でこの技を使った時は、八回の連撃を撃ち終わるまで約1秒かかっていた。
そして、俺の記憶では、確か全盛期の師匠がこの技を0.5秒で出し終えていた。
だけど、俺の剣はもっと速い。
全ての剣を撃ち終えるまで、約0.05秒……技を受けたユージンにとっては同時に八箇所斬られたようなものだろう。
多少の手加減はしたけど、全ての斬撃を無防備で受けたユージンは大ダメージを受けて気絶した。
そして、ユージンが倒れたことで『スターロード』の四人が戦闘不能になり、戦闘が終了する。
師匠の仇をうてて、少しはスッキリしたかな。
「シナイさん、今の技は……」
「ああ、『八華繚乱』だよ。師匠の得意だった技でケジメをつけたかったんだ」
「『八華繚乱』って……私には八箇所同時に剣を打ち込んでいるように見えたのですが」
「あぁ、結構本気で剣を振ったからね。ライカも修行を続ければこれくらい難なくできるようになるさ」
「無理ですよ!? 私にまで物理法則を無視することを要求しないでください!!」
「えぇぇぇ……」
全力で突っ込まれてしまった……。
「それで、ユージンは生きてるんですか?」
「死なない程度には手加減したから生きてると思うよ。まあ、完全にヒットしたから当分は病院生活だろうけどな」
ユージン、ザックス、リンネ、ミカゲの四人は俺にのされて、完全に気絶しているが、たまに痛みで苦しそうにしているから死んではいないだろう。
『スターロード』の四人には、これから罪を告白して正式な罰を受けてもらわないといけないから死んでもらっては困るけどな。
「なあ、ライカ……本当に俺がやってよかったのか?」
あれだけ好き勝手暴れた後に聞くのは今更だけど、ライカに確認をとる。
本当なら、自分の父に汚名を被せた上、片腕を奪った『スターロード』に対して一番怒るべきは、その娘であるライカであるべきだ。
きっと、ライカ自身も自分で『けじめ』はつけたかったはず。
それなのに、俺が出しゃばるのは少し過ぎた事だったかもな……。
「いいんです。私ひとりじゃ、多分返り討ちにあっていたでしょうし、シナイさんが『スターロード』を潰してくれたおかげで溜飲も下りました」
そう言うと、ライカは俺の方に振り向き頭を下げる。
「ありがとうございました、シナイさん。これで父の汚名もそそげます」
「そっか……よし、それならこの話はここでおしまいだ! これから色々やることもあるし、頑張るぞ!」
「はい!!」
とにかく、これで『スターロード』と師匠の因縁には終止符が打てた訳だ。
……師匠、仇はとりましたからね!




