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37話 謝罪

 

 合体魔法ね。

 これがユージン達『スターロード』の奥の手か。


 思ったより威力はありそうだし、新技の実験体としては充分だな!


「おしっ、やるか!」


 山を降りる時、俺は剣の極地に届いたから、これ以上成長することはないと思っていたけど、山に降りてからの実戦や本物の魔法を見る事で新しい剣技のインスピレーションが湧いてきた。


 それと同時に年甲斐もなくワクワクもした。


 俺はもっと強くなれるって!


 この新しい剣技も、魔法に触れる事で編み出すことができた技のひとつだ。


 その名も……


「剣技、『砲矛乱(ほうむらん)』!」


『砲矛乱』……この技は剣で何かを斬るための技ではない。

 この技は、魔法を打ち返すための技だ!


 剣を思いっきり横に振りながら、刃を立てた剣の腹の部分に魔法を当てる。

 途中、魔法の威力に少し押し込まれそうになるけど、腕の力と腰のひねり、そして体重移動を駆使して剣を大きく振り切る。


「いっけぇ!」


「へっ? はっ? ……えぇぇぇ!?」


 打ち返された合体魔法は、俺の狙い通りに、ミカゲを目掛けて真っ直ぐと急襲する。

 まさか打ち返されると思っていなかったミカゲは、防御や回避をする余裕もなく、驚きながらその場で固まってしまう。

 そして……


「うっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」



 自分たちが放った合体魔法を同じ速度、同じ威力で受けたミカゲは絶叫しながら吹き飛ばされていく。

 凄く痛そうだけど……まあ、死んではないでしょ!

 多分!!


 なにはともあれ、新技は成功した。

 魔法に対するカウンターの剣技が完成したのは大きい。


 それに、あの程度の威力の魔法なら、打ち返す方向を狙い打ちできることも分かった。


 やっぱり、技は実戦で試すのが一番だな!


 そして、あとは二人……だけど、なんか揉めてる?


「どうするのよ、ユージン!? ミカゲまでやられちゃったわよ!!」

「そんなのは分かってる! お前も少しは自分で考えろよ!!」


 どうやら、仲間があっさりと二人もやられて動揺してるようだな。


 気持ちは分からないでもないけど……

「まだ戦闘中だぞ?」


「ひぃっ!?」


 あまりにも隙だらけだったから、一気に距離を詰めて、リンネの目の前に立ち塞がる。

 さて、次はリンネを倒すか。


「ちょっと待って! ワタシ、女よ?」

「……? 見ればわかるよ」


「ぴぎぃっ!?」


 隙だらけのリンネの顔面をぶん殴ると、リンネは情けない声を漏らしながら気絶した。


 いきなり自分が女だって自己主張してきて、何がしたかったんだろう?


「なっ!? リンネは女だぞ。それなのに手を出すなんて……なんて酷いことを!!」

「……いや、お前達、俺のこと殺そうとしてたよな?」


 そりゃあ、俺も普段から女や子どもが相手だったら手を上げるようなことはしないさ。

 でも自分の命を狙ってくる相手が女だったらから許せってのは、いくらなんでも虫が良すぎる話じゃないかい?


 ……まあ、これでもリンネに対してはかなり手を抜いたけどな。

 俺が本気で殴ってたら、顔面陥没どころか潰しかねないしね。


 殴った際、歯がニ、三本くらい飛んだけど、それくらいは我慢しろと言いたい。


 さて、とにかく残りはユージンひとりだ。


 こいつは師匠の腕を奪った張本人だし、きっちり責任は取ってもらわないとな!


「くそっ、くそっ、くそっ、くっそぉぉぉぉ!!」


 ユージンは仲間が全員やられて、ヤケクソになったのか、風魔法を連発してくる。

 もう、格の差は十分見せつけたし、わざわざ痛いのを我慢して受ける必要もないな。


 俺は飛んでくる魔法を一振りで全て斬り落とす。


「ば、化け物がっ……!!」

「その化け物の家族に手を出したんだ。覚悟はできてるんだろうなぁっ!!」


「ひぃっ!?」


 俺が脅すと、ユージンはビビったのかその場で腰を抜かして尻餅をつく。

 この程度の脅しでビビるくらいなら、最初からケンカ売るなよな。


 ……まあ、許しはしないけど。


 決着をつけるため、一歩、また一歩と距離を詰めていくと、ユージンが驚きの行動をとる。


「すいませんでしたぁっ!!!!」

「……は?」


 なんと、ユージンは土下座をしながら泣いて謝ってきた。


「つい、名声に目が眩んでロックスさんに酷いことをしてしまいましたぁっ! この事は後日、改めてギルドに真実を報告します。だから許してくださいぃぃぃ」


「……お前さぁ……」


「勿論、冒険者も辞めます! そうだ田舎の村に隠居でもして野菜をつくって生活しよう!! 金輪際、あなた達に関わらないことを誓います。だから見逃してくださいぃぃぃ」


「おいっ!!」


「ひいっ!?」


 ……やばい、あまりにもユージンが勝手なことを言うものだから思わずキレてしまった。


 こいつを許す?

 ユージンを許したところで師匠の失った利き腕は戻ってこない。


 反省も謝罪もいらないし、更生の余地すらない。

 俺は今すぐこいつをぶっ飛ばしたいだけだ。


「そうだ、ライカっ! ライカは僕のことを許してくれないか!? そうすれば、この人も止まってくれるかもしれないだろ!?」


 俺が許しそうにもないから、今度は矛先をライカに変えやがった。


「……ユージン……」


 ライカは情けなく命乞いをするユージンを哀れに思ったのか、物憂げ表情でユージンの名を呼ぶ。


 ……まさか許したりしないよな?


「分かってくれたのか!? ありがとう、ライカ!!」

「ユージン……一回死ね!」


 ライカは中指を立てながらそう言い放つ。


 ぶはっ、最高だよ。

 流石、師匠の娘で俺の弟子だ。


「そ、そんなぁ……」


 ライカからの死刑宣告にユージンは絶望の表情を浮かべる。


 さて、それじゃあ、ライカからのゴーサインも出たことだし、最後のお仕置きを始めるか!

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