日本のバトル漫画などにおいて何故「筋肉男」は噛ませ役にしかならないのか。
今回はただの小話。
海外のアメコミとかだとヒーロー像として筋肉ムキムキな男が当然のように強者として描かれるわけだが日本はまずそんなキャラを描こうものなら噛ませ役にしかならない。
勿論。そんなキャラが主役を張ってる作品は普通にあるのだけどそうした作品は総じて敵が主人公以上に更に筋肉質であったり、大柄であったり相対的にひ弱に見える場合が多い。
あるいは銃だとかロボットだとか人間の身体では本来太刀打ち出来ないような強さの相手である場合なども多い。
ストーリー上、最初から強い奴が無双しても話が続かないし主人公は弱者スタートの方がそういう意味では当然都合が良いわけだが、だとしても筋肉ムキムキ男が弱く扱われる理由は何なのか。
一つは拘りだ。
筋肉キャラは総じてパワー特化、というのがお約束だ。
故にパワーだけで勝負する、という拘りの末に罠などにハメられて負ける。正確には自滅する。だから弱く見える。
それでもなお魅力的なキャラというのは潔く負けを認めながらもパワーの信念は曲げないからだ。
ハメられた奇策に対して苛立ちを覚えるよりもパワーで奇策ごとねじ伏せられなかった、という自身への怒りが更なるパワー特化への伸びしろとなってキャラが魅力的になる。
最近は「逃げるが勝ち」や「強い奴が勝つんじゃない、勝った奴が強い」といった過程は何でもあり、結果第一な強さが正解、といった感じの傾向はあるがそれに逆行する形で「勝ちはしたがアイツとは二度とやりたくない」と思わせるのが突き抜けた拘りを持つのが魅力的なキャラであり、筋肉キャラを強キャラにするもの。
2つめは性格だ。
筋肉キャラで余程主人公と因縁の相手、だとかの重要なポジションにいない限りは性格が乱暴なのは総じて雑魚キャラ。
動じないクールなのが強キャラ。
基本的にバトル物における筋肉キャラは近接戦闘を得意とするタイプだ。
しかし、バトルをもっと限定的なジャンル、格闘技に絞った場合、大柄で筋肉質な「体格がいい」と言う特性は何を意味するか。
よく、心技体と言う言葉が使われるがこの心技体と言う並びがそのまま体格に当てはまる。
心が最初、前に来ている。
前でなければならないのは体格の劣る者だ。
前に出なければ当たらない。そして前に出れば向こうの攻撃を被弾する可能性、強打を受ける可能性も上がる。
だが手足が短く、小柄な体格故に逆に小さなスペースでも力を発揮できる事にもなる。体格に劣る者は前に出るしかなく、同時に前に出る事が一番有利に働く。
技は真ん中だ。平均的な体格の者がここに立つ。
ここでいう技とは格闘技の技術と言うよりも駆け引きだ。
技、とは「てへん」に「支える」と書く。
てへんは身体の手の意味合いと共に仕事、労力といった意味合いもある。
支点、力点、作用点でどの位置に支点があれば最小の力で最大の効果を発揮できるか。
体格が劣る前に出るしかない相手と密着した状態でやり合う場合、その体格の大きさが十分にパワーを発揮できない弱みとなり、大きな体格は的にもなる。だから逆に体格の劣る相手には距離を取って制空圏を保持して有利に戦う必要がある。
しかしその一方で体格に秀でた相手に対して逆に潜り込む必要がある。
相手のあわせて前出る、後ろに下がると言う駆け引きが必要になりそれが技が重視される事に繋がる。
そして最後の体。後ろに下がるのが大柄な体格。
相手を寄せ付けないリーチ、体格が大きいと言う事はそれだけテコの原理で攻撃に重量が乗る。
それが強みであると同時に潜り込まれたら手足が長く、的がデカいだけに相手からすれば振れば当たる。
体格が大きければ大きいほど有利に立ち回るには相手と距離を取る必要がある。
小柄な体格は取り回しのしやすく連射もしやすい小口径のハンドガン。
大柄な体格は大口径ライフル、そんなイメージ。
故に大柄な者は小柄な者と比べて心技体の中で心が弱い。
だからこそ格闘技と言うジャンルからバトル物と枠を広げた場合に近接タイプにならざるを得ない筋肉キャラは格闘技の範疇で心技体で大柄な体格には優先順位が低かった心と技、それぞれが必要になる。
大口径ライフルをハンドガンのように扱う心と技が必要となる。
だからその心技体が揃わない筋肉キャラは手にした大口径ライフルをもて余すだけになって噛ませになる。
後は戦いのスタイルがシンプルにならざるを得ない上にそれを良し、としてしまうと話の都合上、どうしても具合が悪いなぁ、と。
どこぞのクソゲーみたいに複雑なシステムに対して最適解が「レベルを上げて物理で殴る」ってクソ詰まらんからな。
シンプル故に他の設定が多様であればあるほどキャラとして使いづらい。
個人的には異能バトルも好きだけどそれをシンプルなパワーで押し潰すキャラも好き。
結局はバランスよね。異能物にしたって「特殊能力」だったのにやり過ぎれば万能扱いされはじめるし、パワー系も万能扱いされ始める。