藤枝中央女学園
私立藤枝中央女学園。
ここは名家や財閥がスポンサーとして設立した学校。
そのため、裕福な家庭が入学することが多々ある。
敷地面積が広く、各運動部は設備が充実しており、そのためどの部も好成績収めている。
野球グランドを二つ所持し、各運動部共有のトレーニング施設が3つある。
生徒が通いやすいように、学校近くには6棟も学生寮が存在する。
そのためか、各運動部は県内に限らず地方の経験者達が挙ってスポーツ推薦で入学する。
その中の一つである女子野球部は総勢70名超えており、人数が多いため1軍、2軍とそれ他で分けられていた。
一軍のチームは毎年、東海地区大会では好成績を収めて、夏の全国では何回も出場経験のある。
現在、中部地区予選のもう一つの会場、焼津球場にて草薙南高等学校との試合を圧倒的勝利で終わらせていた。
試合が終わり、バスで山道を走行中に車内に響く声が聞こえた。
「五月蠅いですわ、はしたない」
「も、申し訳ありません、薔薇ヶ咲様! ですが、先ほど次の対戦校が決まりましたので」
「だからと言って、叫ばない。 学園に帰ってからミーティングがありますの、そこで聞きましょう」
「……はい」
「千歳。そのくらいいいじゃないか」
「ですが、白滝先輩。 女学園に通ってる者、上品にしなければ……」
「千歳は頑固で古いよ」
「うぅっ……」
「それで稲葉、次はどの高になった?」
「はい、星彩女子高等学校です」
「星彩か、浅野投手が完投して勝ったとか?」
「そ、そうです」
「次は私達が相手なのにエースを消耗するなんてな、勝ちを捨てに来たのか? まぁ、浅野が出るかもしれないし、録画映像はミーティング時に確認するか」
「はい!」
この二人は、私立藤枝中央女学園を代表する投手だ。
白滝 舞。
銀髪にサイドアップに結ぶポニーテール。
彼女は、1軍の投手で3年生エース。
その隣には、もう一人の少女が座っていた。
薔薇ヶ咲 千歳。
髪型が金髪に縦ロールで如何にも古風の令嬢と思わせる。
同じく1軍投手で2番手を張っている。
先程、試合で完投したことで疲れて眠そうに扇子で欠伸を隠す。
他にも、注目する選手はいる。
九条 唯。
プラチナブロンドのウェーブが掛かったロングが特徴。
試合以外基本的に穏やかで、バットで球を打つことが趣味。
去年の本塁打数6本を記録している、2年生長打者。
柳原 陽
赤髪のショートで小麦色の褐色肌。
元気で細かいことは気にしないタイプだ。
スポーツ推薦でこの学園に入り、2年生秋から4番打者に抜擢された。
ミート力、長打と足がある、バランスのいい選手。
稲葉 友恵。
茶髪のボブ。
強豪校ということで、スポーツ推薦でこの学園に入った。
入学前の春休みから練習に参加させてもらい、実力を見せつけ一年生で一軍に入りが決定して、経験のためスタメンに出ている。
ミート力あるものの長打になるほどの筋力がなく、外野前まで飛ばす一年生2番打者。
さすがは強豪校、一年生から実力者が集まっている。
◇
学園に着き、一旦解散となり皆、寮に戻っていく。
しばらく休憩した後に寮にある食堂でミーティングが始まる。
天井から、巨大なスクリーンとプロジェクタ―が下りてきて、本日の試合の映像を流し、反省会が始まる。
「相変わらず恐ろしいな、千歳のピッチングは」
「そうですねぇ~、私も千歳ちゃんとの勝負は苦手で嫌です~」
「えっ?唯!? 昨日は勝負したいと言っていたのではありませんか!」
「苦手だからこそ、打ちたいのであって~、でも実際敵チームとなるとぉ、戦いたくないです~」
「そう思われると、投手として有難いですわ」
「これが支配者と言われる所以ですね!映像で見ると分かりやすいです」
試合の映像は薔薇ヶ咲の投球を打者が打っても、打球が内野に転がるか、内野、外野に打ち上げることしかならず、最小限でアウトのカウント取っていく。
その映像を見て稲葉は思ってたことを言ってしまう。
「全く失礼な異名ですわ」
「仕方ないだろ、去年の秋季大会でほとんどの打者が捉えることが出来ずに塁を出さないことから付いたんだから」
「す、凄いですね、薔薇ヶ咲様! 私もその試合を見たかったです」
「たしか映像はあるから~、千歳ちゃんの試合動画を渡すねぇ~」
「ありがとうございます!」
「後で部屋に届けるねぇ~」
「はい!」
次に流れる映像は草薙球場で行った試合、星彩女子高等学校対、清雅大学付属高等学校だ。
映像を全て流すと長いので、星彩女子高等学校のピックアップした編集映像を見ていた。
「やはり浅野投手は格が違いますわね」
「投手としては全国で通用するからな」
「白滝様や薔薇ヶ咲様クラスの投手なんですね、なぜそんな実力があるのに強豪校へ行かなかったのでしょうか…」
「そういう詮索はよくありませんわ」
「そ、そうですね!失礼しました!」
「そんなことよりもぉ~、ちゃんと球種について吟味してください~」
「そうだな。 浅野の武器はこのスライダーだ」
「ストレートとあまり変わらない球速で変化しますのね……」
「ただ普通のスライダーよりは変化しないが、カットボールよりは変化する。実に厄介だ」
「スライダーも混ぜられたら、厳しいですねぇ~」
「私では、あそこまで速くスライダーを投げれないから後で、ピッチングマシンで再現してみるか」
「賛成です~」
変化球である、スライダーとカットボールは共に利き手とは違う方向に変化する球だ。
カットボールはストレートとほぼ変わらない軌道で僅かに変化する。
スライダーの大きく曲がる球とカットボールの合間のような球種を持つ浅野の投球を見て、対策を打とうとしている。
「次の投手はきっと2回戦の先発投手になりそうだが、対策としてはあまりないように見える」
「たしか~、制球力がいい投手ですよねぇ~」
「ああ。ただ、それ以外――球速と、カーブ、スライダーは大したことはない。 私たちの打撃ならばね」
制球力があるとかなり厄介だが、捕手の力量によっては仇となる。
しかも、このチームは打撃力があるので丁寧に投げてくる投手を狩りやすい。
「薔薇ヶ咲様、何か気になることありますか?」
「ええ、ちょっと。 この打順4,5番の子たちが案外長打を持っていそうでしたから」
「この試合は、その二人の打撃によって成立している感じですね」
「特に4番、あの打ちづらそうなカーブを外野の後ろまで飛ばすもの。 打撃なら柳原先輩と同等な打者だと思いますわ」
「明日は私が投げるであろうからな。 注意しとくよ」
「ただ、6,7回で登板した投手で苦戦している様なら、白滝先輩の相手ではないと思えてきましたわ……」
「油断はよくないよ」
「そうですね、軽率でしたわ。明日は白滝先輩のあの魔球を投げるのですの?」
「もしかしたら投げるかもね」
試合映像を見終え、ミーティングが終わり解散。
九条や柳原といった上位打者は、ピッチングマシンを使うため室内練習場に向かった。
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