1-2 ラスダ村への道
木漏れ日が気持ちいい森部のすぐ傍にラスダ村は存在する。
むしろ森に隣接するというよりは森の一部を切り開いたような村であり、外からラスダ村に通じる道は二つ存在する。
一つは王国首都方面への道へ出る太い道、それから帝国国境へと続く細い道だ。
ラスダ村は王国内にセーフティポイントであることを認知されて以来、王国と帝国を繋ぐ行商路の一つとして当初喜ばれそうになったが直ぐにそれは落胆へと変わる。
ラスダ村は王国でも辺境の土地にあり、帝国国境に近いと言えど帝国の帝都方面はセーフティポイントがほとんど存在しないため魔物の縄張りを進む中々に険しい道のりであるためにほとんど使われることは無い。
そのため使われるのはもっぱら王国方面の道であるので、門番である姉のカミラも王国側の道で見張りをしていた。
「今日も平和だなあ。ここで稽古でもするか?」
「いやあ、流石に村の真ん前で稽古していたら野盗が来たと勘違いされるんじゃないかな」
そんなことを喋りながらカミラと一緒に門番の仕事体験をしている。
僕は生まれてこの方野盗と遭遇したことの無い幸運な人生を歩んでいるけれど、よその村だと野盗に襲われるなんて話はいっぱい聞くし、なんだったら今も襲われている村も王国内にあると思う。
それくらいこの世界は殺伐としているし、外の世界は怖い所だと言うことは移住してきた人達からたくさん聞いているのだ。
それでも村から出る人もいる。
村では生きていくことはできるけれどお金を稼げるかと言われたらほぼ稼ぐことなんてできないような土地だからね。
たまに来る行商人の人から色々な物を買うことはあってもほとんどは狩人が狩った獣の一部や農家の人の作った農産物に森の果物や木の実などが売るものだから儲かるはずが無いからね。
特にラスダ村のセーフティポイントはそこまで広くないので獣を狩ることのできる場所ももちろん限られている。
だからメシエラ母さんのような出稼ぎに行く人やかつて孤児院にいた姉と兄達は王都で暮らしているのだ。
王都からも歩いて4、5日はかかる上に特産品も無いようなところにある村だから来る人なんて商人くらいしかいないんだけど門番も居ないような村だと野盗の目に留まりやすいのでこうして門番をしている訳なんだけれど。
「だれか来たな」
「え?どこ?全然見えないんだけど」
カミラが何時になく真剣な顔で王都へと続く道を見ていると思ったらいきなりそんなことを呟きだしたんだけど僕には目を細めてみても全く見えない。
だけどしばらくすると本当に道の端からゆっくりと歩いてくる人が見えた。
「うわ、本当に来た。えっと……こういうときはどうしようか」
「うるさいぞガイ。ちょっと黙って立って門番らしくしてろ」
カミラの身体能力が抜群に高いことは知っていたけれどまさか目までいいとは思わなかった。
僕はカミラに言われた通りできる限り背筋を伸ばして徐々に近づいてくる小さな影を待つことにした。