1-1 ラスダのメシエラ孤児院
この世界は生きるのに厳しいと僕……ガイは思う。
大陸の半分以上は凶悪なモンスターが居て人が住める土地では無いし、人が住める土地で人同士が住む場所を求めて争っているからだ。
人と言っても様々な種族が居て、四種類の人類が大陸の覇権をかけて争っているしたまに海から別の大陸の国が攻めて来たりするし、なんだったら同じ種族の国同士でも争っている危険な大陸だ。
そんな世界だからこそ平和な村というのは貴重で、なおかつそこが未発見のセーフティポイントであれば人類の財産と言って相違無い。
セーフティポイントの条件とはモンスターが支配していない土地であり、水などの資源が豊かな場所を指す人が住むにはもってこいの所なのだ。
そんな未発見のセーフティーポイントを見つけたのは僕の育ての親であるメシエラ母さんだ。肌の色は浅黒く、耳が長くて髪の色は銀色でイマイチ種族というものが分からないんだけれど一度聞いても。
「そういえばメシエラ母さんって何の種族なの?」
「ふふふ、女性の正体を聞くのは破廉恥ですよ?秘密です」
と笑いながらはぐらかされてしまった。
そんなメシエラ母さんはセーフティポイントを見つけるとそこに孤児院を作り、僕みたいな戦争孤児を集めては育ててくれている、世にも珍しい道徳者なのだ。
だって世界はこんなにも荒んでいて自分が生きるだけでも精一杯なのに、人を育てて救うなんて人がいるだけで奇跡だし、そんな人に助けてもらえて幸運だと僕は思う。
しかもセーフティポイントは人類にとってとても貴重な土地であるので孤児院の周りにはいつしか人が集まり、小さな村ができていた。
名前はラスダ村といい衣食住の揃う村で、そこに地主でもあるメシエラ母さんの経営するメシエラ孤児院が存在する。
僕はもうすぐ15歳になるんだけど荒んだ世界にほぼ存在しないと言っていい長閑な村で過ごせてとっても幸せだ。
そんな僕に困ったことが一つだけある。
「ガイ、森に狩りに行く。今日は鳥肉が食べたい気分?」
普段は森の獣を狩り、食材にする狩人という仕事に付く姉のマリエ。女性である。
「なんだガイ。もうばてたのか?今日はその細い体鍛えてやるからな!」
剣士であり、村の門番でもある姉のカミラ。女性である。
「ねえガイちゃん。今日は初級魔法を覚えよ?全属性ね」
魔法使いであり、同い年のミーナ。女性である。
「「「「お兄ちゃん!遊ぼ遊ぼ!」」」」
メシエラ母さんがいずこから拾ってきた孤児院に住む年下の妹達。女性である。
なぜだろうか、普段村の外に出稼ぎに行っているメシエラ母さんが拾ってくる戦争孤児達は女の子が非常に多いのだ。
もちろん男の子もいたそうなんだけど既に独り立ちしてしまっていて王都で働いているとかで、現在孤児院では男は僕一人なのである。
そんな少しだけ肩身が狭い僕だけれど、15歳の誕生日が過ぎた翌月から村の外から来る人達によって僕の人生がどんどん慌ただしくなるなんてこの時の僕は思ってもいなかったんだ。