勇者弛緩
「アデル君、お茶を入れて」
勇者アイラは俺をコキ使うが、悪い気はしない。
お茶を持っていくと
「ありがとうアデル君」
ちゃんとお礼を言う、召使いに感謝の心を忘れない。
「アデル、このマクロを教えてよ」
ハージウラはまだ不老に、こだわっているようだ。
ただマクロの組み合わせが難しいらしく、不老は失敗を続けている。
「ここにウェイトを入れたらどうでしょう、
次の魔法発動に若干余裕ができますよ」
聞くだけ聞くとクリスタルをいじり始めた。
「アデル、魔法破壊の練習したいんだが」
「アデルちゃん、ちょっと抱っこさせて」
格闘家のダリアと魔法使いのサリアも俺に次々と要求をする。
疲れた、この世界には日曜が無いのか、延々と働いている感じだ。
魔王時代は、はっきり言って退屈だった
欲望もすぐに手に入るものは、飽きてしまう。
同じ事の繰り返しは、眠くなるだけだ。
今は違う、要求が多すぎて目が回る。
「アイラ様、ちょっと休みたいです」
勇者の前で、子供の体でくねらせてみる。
おねだりポーズを、アイラは嫌な顔をしながら
「歳を考えてよ、キモイ」
ショックだ、それは言わない約束だろうが。
「疲れたんだよ、1日休ませてくれ」
俺がぶーたれると、アイラはさすがに気の毒そうに
「なにするの」と聞いてきた
俺は言葉につまる、確かに何をすればいいのだ。
昼寝でもするのか、睡眠は十分にとれてるし、考え込んだ。
「んーっと、散歩?」
適当に答えると、アイラは「じゃあ郊外を散策しましょう」
と提案してきた。
「ピクニック?面白そうね、私も行きたい」
サリアが手を上げると、全員がアイラを見た。
「べ、別にいいわよ、みんなで行けば楽しいわ」
首都の郊外は、比較的に安全だ。
魔物は討伐されて、女子供でも気軽に歩ける
「晴れて、気持ちいいわね」
アイラが嬉しそうにしている
まぁずっと館にいたら腐るだろうな。
丘の上までくるとそいつは現れた。
明るい金髪で、白いギリシア風の服を着ている。
聖書に出てくるような典型的な天使だが、翼は無い。
無言の天使は、手から槍を生み出す。
それが金色に光を帯びると、電気のように放電をした。
「ライジングサンダー」
安直なネーミングを叫ぶと
俺に向かって、2mはありそうな槍をぶん投げた。