神様受難
登場人物
アデル : 魔王で12歳の少年に化けている 前世はサラリーマン
アイラ : 勇者 見た武器を再現できる 前世は中学生
エギル : 神様 社畜 前世?
ウカリア: 大天使 魔王を倒す仕事を押しつけられる 前世は主婦
「アルファであり,オメガである」
いつもの通りに呪文のように、つぶやく。
そうでもしないと、自分が神様なのを忘れてしまう。
机に座ると、複雑なシーケンス図を調べながら
自分の世界線との絡み具合を見るのが日課だ。
この世界は多元宇宙で構成されているらしく
階層構造を持つ事は理解しているが、自分の属する
パーソナル空間と他のオブジェクト空間との関係で
隠蔽されている情報があるらしく、より上位の
権限を持つ管理者でないと把握できない。
簡単に言うと「ブラックボックスだから判らん」
自分が転生した時に、神様として扱われたのは
驚いたが、作業を延々とやらせれるとは思わなかった。
「神様って社畜だ」
しみじみと感じる。
「俺は前世で、こんな仕事をさせられるほど罪があるのか」
この不公平感は、今でも感じている
なにしろ、任期がない。
神様なので、寝ないでも食べなくても問題はない。
ただエネルギー摂取のためには、食べるし
飽きると、寝たくなる。
これは人間の頃の習慣が、抜けないからだと思う。
光る細長い球体が連絡をする、俺は天使と呼んでる
「エギル様、この世界の結晶構造の歪みが増大しているようです。」
「また上から苦情が来てるのか」
階層構造を持つらしい世界は、隣接している世界で連携して
影響を与えている。それはメッセージとして他の世界に
「この世界は正常に動作をしています」と連絡をとりながら
バランスを保つ。
例えば、A世界で衰退が始まると隣接するB世界や上位や下位の世界の
バランスを崩してしまう、上手に維持しないと、多元宇宙の崩壊の
可能性すらある。
バランスが崩れていれば「この世界で異常が発生しています」と
返さなくてはいけない。他の世界に居る神様達は、それを受けると
どうするかを考える。
「魔王がまだ不在です」
そういえばこの世界に、いきなり超パラーメータの転生者が来てたな
王の命令で倒す予定だったが、逃げている。
シナリオとしては、魔王が混乱を招く→勇者が倒す→魔王復活
の順番で、常に平和と戦争を繰り返して、波動を完成させるのが
セオリーだ。波がなくなれば何も生み出す事がない世界になる。
結晶化した世界は、他の世界に悪影響もでる。
「魔王はどこだっけ」
魔王の居場所を調べると、勇者達と暮らしていた。
「こんな平和なシナリオでは、世界が死んでしまうな」
「使えない魔王は始末しよう」
大天使ウカリアを呼び出す事にした。