フラッシュ
「見てみて!ここじゃない?」
「ここだね」
かなり迷ったが、スマホ片手になんとか辿り着い
た。
白い肌が太陽の陽射しを受けてより透き通って見える。
茶色い瞳に僕が輝いている。
「はやく入ろうよ!」
そう言ってアマネは僕の手を引いた。
からん、とドアについたベルが鳴る。
パソコンで見た通り綺麗なお店だ。
いらっしゃいませーと店員さんが僕達を席に案内する。
席につくとお目当てのパンケーキを頼んだ。
「はやくこないかな」
アマネはそわそわしてパンケーキを待つ。
楽しんでくれているようで良かった。
「君は頼まないの?」
アマネが不思議そうに僕を見る。
「僕は甘いの苦手だから、いいよ」
「ふーん」
「あのさ、君って言うのやめてよ」
「え?」
「折角仲良くなれたんだし、その、名、前で
呼んでほしい。呼び捨てで良いし…」
自分でも何を言っているのか分からない。
声が少しずつ小さくなるのがわかる。
「分かった、カナタ。
じゃあ私のことはアマネって呼んでね」
アマネが微笑む。
「うん」
こんな、たかが呼び方が変わったくらいだけど、
少し彼女に近づけた気がした。
「ホイップクリームと木苺のもりもりパンケーキでーす」
店員さんがパンケーキをアマネの前に置く。
「美味しそう!早速いただきまーす!」
「ちょ、ちょっと待って!」
アマネが口に運びかけたフォークを止める。
「写真、撮ってあげる」
「しゃしん!何それ!」
「スマホの機能なんだけど、こう、風景を絵に留
めるというか…なんていうんだろ。
試しに撮ってみるね。じゃあパンケーキを」
かしゃりという音がして、光が一瞬目を眩ませた。
「ほら、こんな感じ」
スマホの画面にパンケーキが映し出される。
「すごい…!メモします!」
「持ち歩いてるんだね」
「だって、カナタは私の知らないこと、沢山教え
てくれるから。書いておかないと忘れるかもでし
ょ?」
彼女は嬉しそうに僕を見つめる。
僕の存在が彼女にとって、確実に大きくなりつつある。
それがとてつもなく嬉しい。
どうかカナタという少年が、彼女の記憶の一部に
残りますように。
そう願った。