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きみとなら
僕は僕を非難する声を聞きたくなくて、
我武者羅に走った。
廊下の突き当たりまで来てしまったようだ。
丸いテラスのような場所に、本や椅子が置いてあ
る。
誰もいないと思った瞬間、視線の隅に少女がい
た。
僕をちらりとも見ずに椅子に腰掛け本を読んでい
る。
何故かこの少女が強く気になった。
この子となら、仲良くなれるかも。
友達にも…!
そう思うよりも早く、体が、口が動いた。
「あ、あの!」
少女は僕の声に気づくと、静かに僕を見た。
「何?」
しまった。声を掛けたは良いが、何を言えばいい
のか分からない。
「えっと、」
「用がないなら話しかけないで。気持ち悪い。」
僕が口を開いたと同時に、彼女は怪訝な顔をして
言った。そして、去っていった。
僕はぽかんと彼女の背中を見つめるほかなかっ
た。
でも、根拠はないけれど、何故かとてもあの子が
気になった。
雪のように白い肌も、僕を睨んだ茶色の瞳も
透き通るような声も動作もその全てが、
僕の興味を掻き立て、掻き混ぜた。