渦巻く負の感情
結局反論することも出来ず、参加することになっ
てしまった。
「カナタくん、こんにちは。元気してた?
たまには外に出なきゃダメだよ。
でも、今日は来てくれてありがと。
お姉さん嬉しいわ。」
そう言って微笑むのは母の同僚さん。
"お姉さん"って程の歳でもないが。
さあ、お話しましょう。
そう言って背中を押され、中年くらいの人達が
座る長テーブルに案内された。
母が声を掛ける。
「私の息子のカナタです。
沢山お話してあげて下さいね。」
すると笑い声を上げながら話していた人達が
一斉に僕の方を見る。緊張して震える。
「よ、よろしくお願いします。」
そう言うと、よろしく!と笑顔で返してくれた。
この人達となら、お話できそうだ。
安心して席に着く。
母も安心したように
「大丈夫そうね。それじゃあ私は仕事に戻るから
礼儀正しくね。」
そう言って去っていった。
すると
「坊ちゃん!カナタくんだったっけか?
おじちゃんとお話しようや。俺はヒロカズ。」
ヒロカズと名乗る男性が声を掛けてきた。
「…はい。」
「こんなとこにいないで、彼女とデートでも行っ
てきたらどうだい?高校生のクリスマスは特別な
んだから。」
「…彼女はいません。」
僕だって、好きでここにいる訳じゃない。
小学生の頃はそれなりに楽しかった。
友達も割といて。
でも、だんだんズレちゃって、
みんな僕から離れていって。
まるで今まで楽しかったことも全部嘘だったみた
いに、崩れていった。
歯車が噛み合わなくなって、狂ったみたいに
幸せが逃げてった。
もう戻れないんだ。今更やり直すことなんて
出来ないもう遅い。
「お母さんから聞いたよ、
学校行ってないんだって?
ダメだよいつまでも甘えてちゃ。自立しなきゃ
もう、17歳なんだから。」
そんなの分かってるよ。
いつまでも甘えていられないことぐらい。
でも、仕方ないじゃないか。
皆僕が嫌いだから。
なんでアンタに、なんで…!
「…分かってる」
「え?」
「そんなの分かってるよ…!
アンタに言われなくたって!
他人のお前に何が分かる!」
カッとなって、やってしまった。
頭に血が上って破裂しそうだ。
僕が大きな声を出したから、みんな僕を見ている
「なんだっ!せっかく親切に言ってやってんの
に!」
ヒロカズの怒号が聞こえる。
周りがざわざわする。ヒソヒソ声が聞こえる。
我に返る。やってしまった…!くそ!
いたたまれなくなって、僕は逃げ出した。