7.私は理事長ラキュース
主人公次回登場します。
今回は学園がどのような場所なのかという説明になります。
私は、クリムゾン育成学園の理事長を務めるラキュースだ。
私が勤めているこの学園はクリムゾン王国の軍事力向上のため、若手を育成しようと考えられて設立した養成機関だ。
この育成学園では魔法に関した座学や実践訓練、剣術、武術など様々なかつて軍人だったエキスパートたちが集まり、本人に合った適性を見定めると同時に能力向上の手助けをしている。もちろん入学は義務ではない。
軍に志望した者のみだ。
この学園を卒業したものたちだけが軍の入隊資格を得ることができる。クリムゾン軍に入隊するには、クリムゾン学園卒業が必須なのだ。
こんなに厳しいと、軍に志望するものなどいるのかと考えるかもしれないが実際とても人気だ。理由としては、単純で軍に所属すると報酬が破格なのだ。福利厚生もそろっており、衣食住全て完備、その家族にもさまざまな補助が出る。まさに夢のような話である。
まあ、学園や軍の話はここまでとして、本題に入ろう。
数か月前、軍の幹部から報告があり、魔王様が行方不明になったとの情報が入った。この情報は一部の者にしか知らない機密情報らしい。問題は、ここから。
魔王様は姿を消す前に異世界から魔王の後継者を召喚したらしいのだが、魔王後継者になるにはあまりにも幼くて、育成が必要らしい。
そこで我が学園で魔法や剣術、武術や実践経験を積ませようと依頼をしてきた。という依頼理由は建前で本当の理由は友達を作らせてあげたいらしい。
その者は才能に溢れ自己流で学んでいくことができるなんて言っていた。本当になめている。友達なんて他で作ればよいと思うが、同じ道で努力している友達を作った方がよいという話になったらしい。
よく自分の子供は才能があると自慢してくる親も多いが大体は現実をみて挫折する。
ましてや友達作りのためだけにこの学園に来るなどいまだかつて聞いたこともない。
まあ、そのうち思い知るだろう。
今回学園に入学予定の魔王後継者となる方の名前は、「オムニ」というらしい。なんともたくましい名前だ。いかにも自信に満ちあふれてそうだ。
かなり、お若いと聞いているから心配だが、幹部からの直属の命令だから仕方あるまい。
挫折するのも少し見てみたいしな。
それにしても荷が重すぎる。クリムゾン王国の幹部など雲の上の存在なのだから何かやらかした場合、ただでは済まないだろう。慎重にご対応しなければ!
だが不幸は重なるもの。軍から唐突に今日の午後からオムニ様が学園に来るという連絡があった。早すぎはしないか!?まあ、最初は面接をするだけだから授業に参加することはまだない。
予定していたよりも学園に来るのが早いが、幸いにも準備はなんとかできている。
私は自分に言い聞かせる。
「幹部だろうと同じ魔族だ。それは、オムニ様にも言えること。緊張することはないさ。頑張れ自分!!」
とりあえず今日の朝の朝礼では、私が生徒に新入生が来ることだけは伝えておこう。急に来ても戸惑うだろうからな。ラキュースは今日の業務はいつも以上に気合を入れて臨む。万が一ミスなどしてしまったら許されるはずもないだろうから。