6.幹部と対面
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読んでください。
俺が魔界に転生してきて数か月がたった。
相変わらずこれといった環境の変化はない。変わったことと言えば歩けるようになったことぐらいか。今まではハイハイで移動していたからな。とても不便だったのだ。
ここ数か月この体で過ごして感じたこと。
それは何もしてないのにとても疲れるということ。
そのため起きて寝る生活を繰り返していた。
では、この数か月何もしていなかったの?ただ寝ていただけ?と思うだろう。
だが、おれはこの数か月間、自分なりに情報収集を頑張っていた。
なぜかわからないが転生してから耳がよく聞こえる。そう、ありえないぐらい。
俺の今いる部屋の近くには会議室が近くにあるのだがそこでよく何人かが話し合いをしているのが聞こえてくる。彼らの話している内容はとてもよい情報源となるのだ。
そいつらは、この国の幹部とかいう役職についているらしく、これからの方針や現状についてよく話し合っていた。
幹部たちの話によると、どうやら俺が転生した場所は、魔界でもクリムゾン王国という国らしい。この国の魔王はチートすぎる力を持ち周辺魔国の最強人物の一人として目をつけられているらしい。ちなみにそいつの名をバリスタというらしい。
バリスタがいれば、今後のクリムゾン王国も安泰と考えられていたのだが、バリスタは現状維持では満足できず、さらなるクリムゾン王国の繁栄を目指してさらなる強さを持った魔王後継者を決めようとしていたらしい。
だが、バリスタよりも強い者などそうそういるはずもなく、それならほかの世界の強い奴をということで、異世界召喚という考えに至ったらしい。
それで俺がこの国に召喚されることになったというわけだ。本当に迷惑な奴だ。
しかも、さらに問題なのが肝心の俺を召喚したバリスタとやらは召喚の儀式を行った後、行方不明になったらしい。
なんてぶっ飛んだやつなんだろう。
このままではこの国は弱体化の一途をたどり、周辺魔国に襲撃を受けるのは間違いないらしい。それに加えてこの世界にも人間が存在するらしくゲートという仕切りはあるにしろ人間たちが物資や領地を求めて襲撃をしているらしい。なんて物騒な話なんだろう。
そんなわけもあって幹部たちはどうするかと悩んでいたが、最終的にバリスタが言っていたことを実行するらしい。
まったく、どんだけバリスタは信頼されているんだこの幹部たちに。
幸いなことに、バリスタはなかなか国民の前には姿をあらわすことはないため、幹部たちはこの話を国民に隠せると判断した。魔王が行方不明となれば国民がパニックになってるのは予想がつく。
この情報は、幹部の中だけの秘密事項として処理をして、信頼されている配下には個別に共有するという形で落ち着いたらしい。
そんなこともあって俺はクリムゾン王国の魔王後継者として選ばれてしまったわけだ。
そして、名前がないのは困るということで「オムニ」という名を与えられた。
由来としてはOmnipotent/全能の、絶大な力を有する
というものからとってきているらしい。
俺にとっては荷が重すぎる...。
それに自分がどのくらい強いなんてわからないのに魔王の後継者候補なんて大丈夫なのだろうか?
とても不安だ!不安すぎる!!
そんなことを長々と考えていたら誰かが部屋に近づいてくる音がする。
一人ではない。二人でこちらに向かって来ている。
(誰だろう?こんな時間に。メイドではないはずだ。)
オムニは数か月間あの悪魔に発見されて以降、この国のベビールームと呼ばれる、一室に逃げ出さないように保護されている。
しかし、部屋に引きこもるというのはストレスがたまる。元の世界でもゲームをしてよく部屋に引きこもっていたが、この部屋には何もない。せめてゲームがあれば話は別なのだが。
だがちょっとした楽しみはあるにはある。
オムニのことを考えてくれているのか、決まった時間になるとお世話係であるメイドたちが様子を見に来てくれるのだ。
それに、そのメイドたちはみんなとてもかわいいのだ!!
元の世界で会ったとしたら、完全に一目惚れしているだろう。
まあ、魔界だけあって角や尻尾、獣の耳が生えたメイドがほとんどなのだが。
今聞こえる足音はそのメイドの者ではない。
メイドが来る時間は決まっているのだが今はその時ではない。
オムニは、この数か月間最初の悪魔を目にした以来、メイドとしか接点がなかった。
この国ではほかにどんな奴がいるのだろうか?
そんな好奇心がわいてくると同時に、想像もできないことが起こるんではないかという不安もあった。
足音はなりやむことなく扉の前まで近づいてくる。
やはり、この部屋に用があることは間違いないようだ。
扉が開いた。
カギはかかっているはずなんだが。合鍵でも持っているのだろうか?
入ってきたのは美少女2人組だった。一人は、紅い髪をした少女だった。
どこか品があって妖艶の美をまとい、尻尾が生えている。なんとなく不気味な雰囲気を放っている。一言でいえばかわいい!前世なら間違いなく一目惚れしているだろう。
今はベイビーだからか性欲というものが欠如している。
それに対してもう一人の少女は、金髪の紅い目をしてとがっている八重歯が生えているのが特徴的だ。
もう一人の落ち着いた雰囲気をした少女とは反してこっちの金髪少女はパワーあふれる、いかにもおてんば娘って感じだ。
こちらも容姿はストライクゾーンだがなんとなく振り回されそうな感じがする。
結婚とかしたら鬼嫁とかになって夫をこき使うタイプだろう。
でもそれは夫だけで、子供には結構甘やかしちゃうんだろうな。
そんなこんなで俺が自分なりに少女を評価していると、二人は俺に近づいては話し始めた。
「聞いていたけど実際にみてみるとやっぱり子供ってかわいいのよね。食べちゃいたいくらいだわ。このぷにぷにとした頬、つるんとして透き通った肌、ピンク色の潤った唇どれも魅力的だわ。しかも外見は、バリスタ様のように人と変わらない外見をしているわね...。バリスタ様よりもかわいいんじゃないかしら..。こんな子が魔王後継者候補だなんてね。ほんとにこれから先この国はどうなっちゃうのかしら。」
そんなことを言いながら、妖艶な少女が俺の頬をつついてくる。それを見ていた金髪少女はさせまいとその手をどかして止めに入る。
「やめなさいエミリー!私とバリスタの子供なのよ。怖かったわねごめんねオムちゃん。ママがついてるからね。こんなおばさんはほっといてママとあそびましょうね~。」
間違いない。この二人は以前に会議室で揉めあってた二人だ。ということは、二人は幹部のエミリーとミリアか。実際会ってみると予想していたよりはるかに見た目が幼いな。幹部とかいったからかなり年を取っていると思っていたけど。
それにしても、この二人はいつもこんな感じで言い争っているのだろうか...。
エミリーは、ミリアの発言に対して問いかける。
「一つ聞いてよいかしらミリア?いつからこの子の親になったのかしら?私たち初めてこの子にあったわよね。それにオムちゃんって何でしょう?これからの魔王になる予定ならせめてオムちゃんではなく、オムニ様というべきではありませんか?しかも私をおばさん呼ばわりするとは、あなたも人間年齢で表したらおばさんどころか、化け物じゃないかしら?」
やはり、定番の流れらしい。この一言で事態は悪化する...。
「何よ!バリスタと私は愛し合っているの!プロポーズの返事が返ってきていないのはたぶん彼がシャイだからよきっと!それより私を化け物呼ばわりしたわね、許さないんだから。あの世に行く覚悟はできているかしら?」
「望むところよミリア。そのセリフそのまま返すわ。」
なぜこうなった...。女の子が俺をめぐって取り合いになり喧嘩する。これは憧れを持ったことがあるが、いざ経験してみると地獄すぎる。ここで喧嘩でもしてみろ。
幹部という実力をもつ二人が喧嘩したら俺はそれに巻き込まれて即死どころか灰すら残らずにゲームオーバーだろう。さすがにそんな結末はいやだ。
オムニは二人の喧嘩をとめようと行動する。だが、この国の言語はまだ話すことは慣れていない。聞く分には理解できるのだが読み書きや話すことは厳しい。これから教育はされると思うが、まだ一応、一歳児だ。
俺なりの言葉で止めるしかないのか...。
「ママたち、喧嘩しちゃいや...。どっちもだいすきだよ。」
オムニは、何とか言葉選びに注意を払い上目遣いで二人に話しかける。注意するポイントとしては2人の手を握って目をしっかり見て話す。ここで話しかけるときに二人の目を交互に見てることだ。仮に片方に視線を固定してみろ。視線を向けなかったほうは嫉妬して喧嘩はむしろヒートアップするだろう。女の子は嫉妬深い生き物だ。
恋愛経験ゼロの俺が語るのもおかしいことだが。
ここでは、どっちも俺のお母さんだよっていう建前で行動するのが大切なんだ。
「なんてかわいいのかしら!!わかったわ。ごめんなさいねオムニ様。ママが悪かったわ。」
「かわいい...。ごめんね!オムちゃんを怖がらせるつもりはなかったの。ママが悪かったわ気を付ける!」
「それにしても、エミリーあなたも母親だと思われているなんて...。二人母親がいるなんておかしいのだろうけどオムちゃんが言うなら認めるしかないわね。」
何とか喧嘩を止めることができた。これで一件落着だろう。二人は一応ライバル同士ではあるものの同じ国の仲間だ。敵ではない。仲直りした二人にさきほどのピリついた雰囲気はなかった。
まったく、危うく死ぬところだったぜ。それに、生まれて間もないベイビーに気を遣わせるなんてなんて奴らだ。しかし、この二人。一体何をしに来たのだろうか?
「そういえば、オムちゃん明日からクリムゾン育成学園のお世話になるんだよ。楽しみだね~。お友達たくさんできるといいね!。あと、この部屋は明日から移動で、バリスタの部屋を使ってもらうよ!」
「そうでしたわ。私ということが、それを報告するのを頼まれてきたというのに忘れていましたわ。ミリアもたまには仕事するじゃない。でも、お会いした限り、オムニ様はまだ話すこともままならない。私たちの話していることを理解できるとは思えてないのだけど...。それに、あまりにも幼すぎるわ。」
「エミリーは考えすぎ!!オムちゃんを甘く見すぎよ。バリスタの魔力と性質が同じなんだからなるようになるでしょ!それに魔王になる男なんだから!」
いやー、二人とも話は理解してますよ...。まあ、言葉をまだうまく話せないことは事実だけども。ミリアは俺にデレデレしていると思ったが厳しいところもあるようだ。
それにしても、クリムゾン育成学園か...。聞いた限りによると、保育園や幼稚園的なものなのだろうか。
明日は、それなりの覚悟をもって挑まなければ。危険すぎる場所にはいくことはないとは思うが、ここは魔界。常識が通じるとは限らない。
二人は話を終えると満足したかのように切り上げる。部屋にいた時間はそこまで長くはないと思うが、幹部は仕事が山積みで忙しいのだろう。
「じゃあ、戻ろうか!エミリー。また明日迎えに来るね、オムちゃん!」
「そうね。オムニ様。また明日お会いしましょう。」
帰ったか。しばらく、この部屋に引きこもり状態だったからな。
明日からこの部屋ではなくバリスタの部屋に移動すると言っていたが、おそらく転生直後にいた部屋の事だろう。少し不安もあるがここよりは、快適なんだろう。
このとき、オムニは考えもしなかった。クリムゾン育成学園という場所に行く意味やバリスタの部屋がどのような場所なのかということを。