17.決闘2
前回の続きです。
なんだあのフロストとかいうやつとんでもなく強いじゃないか!!
あいつの全身から冷気が出始めてその冷気が虎になって襲ってくるなんて誰が予想できようか。
しかも爆発してくるなんて、魔法障壁が遅れていたら爆風に巻き込まれて死ぬところだった!!
Eクラスって一番下のクラスという割にはやばい奴多すぎだろ。
もう戦闘は十分だ。この辺で終わらせるように頼んでみよう。
「危なかった~。もうちょっとで怪我をするところだったじゃないか!フロスト君危ないからこのへんで..。」
「なかなかやるようだな。それにしても今の攻撃どうやって防いだ?手ごたえはあったはずなのだが。」
全然聞いてないし!集中すると周りが見えなくなるタイプなのか?
「うーん。説明しずらいな..。」
「勝手に出てくるスキルを選んだだけなんだけど...。」
「まあいい、何のことを言ってるかわからないが行動で示してみろ。さっきから防いでいるだけでまったく攻撃してこないじゃないか。次は、お前からかかってこい。」
スキルを知らないのか。
てっきり魔法のような一般常識だと思ってたのに。
それにしてもまだやる気なのか..。
もう、おじさん疲れちゃったんだけど。
でもさっきとは違ってフロストが俺に時間をくれるらしい。
せっかくだし。攻撃スキル、試してみようかな。
「そういうならわかったよ。ちょっと待っててね。どれがいいんだろう。」
<最適攻撃スキルを表示します。鑑定スキル使用..。分析の結果、対象の弱点は火属性の物理攻撃及び魔法攻撃。攻撃候補を表示します。>
<1.火属性物理攻撃 2.攻撃魔法 3.カウンター攻撃(属性変換)>
あれ、俺って魔力ゼロだよな...。
でも選択肢にあるってことは使えるのだろうか。
試してみよう。
<2.攻撃魔法を選択します。今回は対象弱点の火属性を発動します。魔法発動のための魔力が足りません。>
<スキル 魔力量操作を使用。魔力量増大しました。>
フロストが異変に気付いた。
オムニの魔力量が跳ね上がっていることに。
さっきとはまるで別人だ。
「なんだ!?急に魔力量が増えていく。お前は何なんだ?何者なんだ?」
俺が誰だって?
そんなの俺にも分からない。
ただ、この勝負で俺は何か知ることができるかもしれない。
自分の実力ってやつを。
「フロスト君、今の俺の全力を受けてみてよ。」
<必要魔力量確保しました。魔法仮想現実化発動。>
<地獄の業火の発動準備完了>
あれ、この魔法案外強かったりする?
まあ、何かあったら先生が止めてくれるだろ。
エミリーやミリアだって俺を応援してくれている。
期待に応えてこそかっこいい男ってもんだよね!
エンペラーは、唐突な事態に焦りを感じる。
まずい。このままでは、フロストが無事ではすまない。
オムニの魔力はゼロと聞いていたからフロストの圧勝だと予想していたのに急にオムニの魔力が増大するとは。
それに増大した魔力量が桁違いだ。さすが魔王後継者候補、甘く見ていた。
この魔力を使って放たれる魔法など想像もできないほど強力なはず。
しかし俺には全員を守るための術がない、どうすればいいんだ。
オムニは、魔法を発動したことがないため威力の調節も分からない。
いつも慎重なオムニであったが、今回は止めてくれる者がいる。
そのような理由から試してみようと考えた。
ましてや自分を知るという好奇心にブレーキなど存在しないのだ。
「地獄の業火」
それは一瞬だった。
オムニを中心にステージ全体へ巨大な炎の柱が拡散していく。
炎の柱はあたりの草や土,障害物すべてを食い尽くすかのように次々と燃やしていく。
死んだ、誰もがそう思った。もはや、魔法ではなく天災だ。
しかし、そうはならなかった。
炎の柱を相殺するようにさらに黒い柱が現れて進行を遮る。
言い表すならブラックホール、何もかも吸い込まれそうな勢いだ。
「本当にあなたたち、オムちゃんをなめすぎよ。」
「ええ、本当にオムニ様を甘く見すぎですね。」
どうやらミリアとエミリーがさらに強大な魔力で止めたようだ。
しかも反動のない絶妙な威力で。
一瞬の出来事で辺りは騒然としている。
この状況が把握できているのはごく一部の生徒だけだろう。
まさかこんなところで借りができるとはな。
おかげで生徒は無事でよかったが、二人してなんて魔法を打ちやがる。
しかも多大な魔力を消費しているのにもかかわらず平然としている。
気になるところだが、今は救助最優先。
エンペラーは決闘の終了を公言する。
「決闘はここで終了とする。今回の決闘はお互いに意識がないため引き分けだ。二人を念のため保健室へ連れていけ。」
こうして、決闘は終了した。
のちにこの決闘は、学園内の話題に取り上げられるのだがまだ先のお話。