第二十一話 シオンさんは凄かった
数日後ーー
今日はいよいよフローリアへの旅行の日である。
服装良し!
荷物良し!
体調良し!
さあ、行こう!
「でも、まだ出発まで1時間半ぐらいあるよ?」
「こういうのはノリが大事なんだよ」
ルシが呆れながら言った。
「分かってる? 『確実』にこのタイミングで来るんだよ?」
「分かってるさ。そのためにしっかり訓練をしたし、気分を下げるのも良くないしな」
ルシの心配に俺は大丈夫だと告げる。
「む〜。私にはどうしようもできないけどさ〜」
「いやいや、こうして『繋がり』があるだけ心強いさ」
「ッ!? む〜! 分かってない! 分かってない! ユウ君全然分かってない!」
突然、ルシが顔を赤くしながら、叫ぶ。
・・・どうした? あと、何が分かってないんだ?
「とりあえず、落ち着いて。ほら、よしよし」
「にゅう」
頭を撫でると、ルシは落ち着いてくれたようだ。顔は真っ赤なままだが。
「・・・最近、ユウ君の私に対する扱いが対等よりも若干妹になっている気がする」
「気のせいじゃないか?」
はて、なんのことだろうか?
まぁ、俺が『この様でいられること』はもうないだろうからな。今のうちにやっとかないと。
「・・・まぁ、いいけど。とりあえず、注意すべきなのはーー」
数時間後ーー
『皆様。外をご覧ください。あちらに見えますのがフローリアでございます』
飛竜便の御者さんが拡声の魔法具を使ってアナウンスした。
「へ〜。あれがフローリアか〜。ここからでも綺麗な街だというのがすぐ分かるな〜」
「・・・先輩はよくここから見えますね。私は大まかにしか分からないんですけど」
「・・・ユウさんだから」
「・・・先輩だからですか。妙に説得力がありますね」
「・・・ちょっと君たちには後でお話しがある」
「「え?」」
この2人は俺のことをなんだと思ってるのだろうか? ちょっと問い詰めなければ。
「まぁまぁ、ユウさん。葵ちゃんも祈里ちゃんも悪気は無いんですから」
「白河さん」
そう。今ここには、白河さんだけでなく剣崎君も来ている。どうやら、シオンさんが王城に話に行った際、この2人も一緒にということらしい。まぁ、もちろんのこと勇者役と賢者役っていう大事な子達だから、護衛も来ている。問題なのは、その護衛にグランディア王国の第二王女様がいるんだよな〜。
いや、その方は王国の騎士団長さんだっていうから、強いのは確かなんだろうけど・・・
「どうかしたのですか?ユウさん」
「ああ、えっとね。なんで第二王女様が護衛として来てるのかなって思ったんだよ」
「そうですね。最初は国王陛下が反対していらっしゃったんですけど、最終的に国王陛下と決闘で決めることになって・・・」
白河さんは苦笑いを浮かべて、説明を始めた。
いや、王族の方々は何してんの? なぜそこで武力で解決させるの? 脳筋なの?
「そしたら、リーリエ様が勝たれたので、無事?に提案が通りました」
今更ながらだが、第二王女様の名前はリーリエ・フォン・グランディアだ。シオンさんの妹で歳は17だそうだ。
ここだけの話、剣崎君はリーリエ様にプロポーズしたらしい。すごいな。俺にはできないわ〜。まぁ、振られてしまったらしいが。しかし、こうして、護衛に来るくらいだから、心配しているのかな?
「なんか、すごいね」
「はい。私には戦っている2人の姿は全然見えませんでした」
うーん。俺がすごいと言ったのはそっちじゃないんだよなー。
そんなこんなで、フローリアに着いた。
「では、ユウさん。またお会いしましょう」
白河さんは丁寧に頭を下げて、俺たちと別れた。
「さて、では私たちも向かいましょうか」
「「「はい」」」
そして、フローリアの門を潜ると、そこには自然と街が一体化した様な風景が広がっていた。
おお〜。エルフがいっぱいいる! すごい!
「ほら、ユウさん。人が多いのではぐれやすいですよ」
「す、すみませーーん?」
レナさんが俺の手を握った。
ンーーーーーーーーーー? ドウイウコトカナ?
「はぐれないように私が見張っておきます」
「はい?」
いや、これはもはや、見張るとかそんなじゃなく、ただの拘束では?
いや、拘束というのは失礼か。
「どうかしましたか?」
「イエナンデモ」
21歳の男性が手を繋いで見張られるってどうなんだ? いや、まぁ、俺って身長165cmだから、弟に見られなくもないのか?
すると、先頭を歩いていたシオンさんが止まった。
「おかしいですね。ここで待ち合わせのはずですが」
「そういえば、シオン? 今回は誰に案内を頼んだのですか?」
「えと、エルフィアに・・・」
「ああ、そういうことですか」
レナさんはシオンさんから聞いたエルフィアという人の名前を聞いて、納得した。
「やあ、君がシオンのお気に入りかい?」
突如、背後から声がした。と同時にお尻を触られた。
「ひゃあ! な、なんですか!?」
「え、君、男の子だよね? 何その可愛い反応。お姉さんの方がびっくりだよ」
急いで振り向くと、そこには緑髪の長髪を後ろに一本に束ね、アメジストの瞳をした俺と同じくらいの身長の女性がいた。
「エルフィア!」
「やあ、シオン。1週間ぶりだねって、ちょっと待って!? 悪かった! 驚かせてようと思って、ついやっちゃっただけなんだ! 許してくれ! だから、そんな物騒な魔力を拳に纏わないで!?」
どうやら、目の前の方はさっき話に出ていた案内役のエルフィアさんなのだそうだ。何やらシオンさんが怒っているようだが、普段は笑うだけなのに、今回は手が出そうってどんだけ怒っているのだろうか?
「貴方がそんなことをしなければ、別にしなかったのですけどね」
そう言って、シオンさんは拳に纏っていた魔力を霧散させた。
「悪かったよ。おっと、自己紹介をしないとだね。私はエルフィア・フローレンス。見ての通りエルフだよ。フローレンス王国の元王女であり、人界で4番目に強いと言われる『翠緑の戦乙女』とも言われてるよ」
おっと〜? 何やらやばい情報が満載だぞ〜?えっと、元王女で人界で4番目に強い? すごくない? 下手したら、リーリエ様よりもすごいぞ。
「元王女様なんですか?」
神崎さんが聞く。
「そそ、王国の騎士団に入るときにね〜。『私は自由の身だ!』って言って、王位継承権を放棄したの。って言っても、エルフって長寿だからさ。私って結構下の方なんだよね〜」
な、なるほど、長寿だから、世代交代がゆっくりなのか。
「人界で4番目の強さなんですか?」
今度は水沢さんが聞く。
「そうだよ〜。ちなみにそこのシオンは人界で2番目だね」
「「「え?」」」
「ちょっとエルフィア!? 何言って!?」
今度は俺が聞く。
「人界で2番目なんですか?」
「い、いえ、あのですね、ユウさん。たしかに私は鍛えてますし、グランディア王国の騎士団にも入っていましたが、そんな野蛮なものじゃ・・・」
必死に弁明?をするシオンさん。否定してない時点で分かるんだよな〜。
エルフィアさんは凄いが、それ以上にシオンさんも凄かった。
???「フローリア編ですね〜。ここが一番最初の山場ですね〜」
???「読者の方もなんとなく気づいているんじゃないかな?」
傲慢「そう。このエルフィアちゃんは次回でユウくんにオトされちゃうことに!」
???「今、真剣な話が来ると思った人、手をあげなさい」
???「でも、たしかにこのフローリア編ではシリアス成分高めですよね〜」
傲慢「フローリア編が終わったら、もう一生ないと思うけどね」
???「少しネタバレするなら、この編では主人公はヒーローっぽくなるんだけど、これが終わると、ヒロインになっちゃうんだよね〜」
???「それにこの編で主人公にオトされる人が続出するんだよね〜」
???「何人オチるの?」
傲慢「少なくとも5人」
???「多すぎない?」