第二話 異世界・・・平和じゃん
そうして、客室に案内された僕達はシオンさんから話を聞くことになった。
「改めまして、私はシオン・ネクタール。この国グランディア王国の公爵です。よろしくお願いします。」
まさかの公爵様だった。見るからに僕と同年代っぽいのに。
「付け加えるならば、未だ結婚できていない21の独身ですが。」
「・・・・・・なんでそんな事言うのかしら?」
怖っ!?顔は笑ってるけど、声が笑ってない。
「だって、もうこの世界ではお嬢様の相手となってくれる人なんていないでしょう?」
「シフォン?」
うわー。この人もめげないなあ。真っ向から喧嘩売ってるよ。ほら、神崎さんと水沢さんが呆然としてるよ。
「まぁ、良いでしょう。シフォンとは後でじっくりお話するとして、とりあえずは皆様がこれからどうなるのかについて説明させていただきます。」
テンプレならば、僕達も戦闘訓練受けるとかあるいは奴隷落ちになるとかあるけど、どうかな?
「まず始めに私達はあなた方に一切危害を加えません。そのため、一応、客人という形で保護します。その上であなた方に快適な生活ができるようにこちらがサポートします。なので、私達からあなた方に何かを強いることは基本的にありません。」
「基本的にという事は例外があるのですか?」
最もな質問である。神崎さんナイス。
「例外は勿論ありますが、例外といっても緊急時、避難せざるを得ない場合などはこちらの指示に従っていただきます。」
まぁ、そうだな。ってことは意外と自由になるということか。
「あの。琴音と光輝はどうなるのでしょうか?勇者だとか賢者だとかよく分からないのですけど。」
おっと、いきなり核心に迫っていったな。今度は水沢さんが質問した。
「コウキ様とコトネ様は此度の世界平和祭で勇者役と賢者役として出ていただきます。」
おっと、ここで謎ワードが出てきたぞ。世界平和祭はそのまま世界が平和になったことを祝う祭だろうけど、勇者役?賢者役?役ってどういうことだ?
「えっと、勇者とか賢者って魔王でも倒しに行くのですか?」
「違いますよ?」
「へ?」
「3000年前にある魔族がたくさんの魔族を連れて、人界に侵攻しましたが、初代勇者様と初代賢者様達が撃退しました。それによって、世界全体が友好を結んで、平和になりました。それを祝って、10年ごとにこの世界平和祭を開き、異世界から勇者役、賢者役として召喚するのです。」
どうやら魔王は悪い方ではないらしい。ただのお祭りだから、特に危険はないとそういうことか。
「では、勇者役と賢者役の子達も大丈夫なんですね。」
「はい。しっかりと1年後に無事に元の世界に帰れるようにするのでご安心ください。」
あっ、帰れるのね。1年後に。
「1年もかかるんですか!?テストと大会が・・・」
「祈里ちゃん・・・」
すごいな、水沢さん。絶対そこじゃないと思うぞ。気にするところ。
「いえ、心配しなくて大丈夫です。こちらで1年経っても、皆様の世界ではそんなに時間が経っていませんし、帰る際は身体は1年前まで戻るので。」
つまり、ここでどれだけ太ろうが筋トレしようが帰る時は戻ると。嬉しいのか悲しいのか。まぁ、不安要素は減ったな。この世界について聞いてみようかな。
「ちなみに世界全体ってどれくらいですか?」
「はい。この人界、魔界、神界ですね。」
違う!国単位だと思ったら、まさかの世界単位かよ!魔界とか神界とかあるのかこの世界!?
「ま、魔界とか神界とかあるんですね。」
「こちらの地図をご覧ください。」
そう言って、シフォンさんが水晶を出した。すると水晶が光って、立体の地図が出てきた。ARみたいだ。異世界って凄いな。
「これがこの世界『エディアルド』の全体図です。一番下が魔界です。魔族が住んでいて、3つの内、一番広い大地です。ここは七大魔王様が統治しています。真ん中が私達がいる人界です。人間だけでなく、エルフや獣人などの亜人族や魔族も住んでいます。2番目に広く、魔界があるところから少し上と横にずれています。一番上が神界です。神族が住んでいて、中でも最高神である六大神王様が主に世界を管理しています。そして、この世界の創造主である創造神様もここにおられます。神界は人界のさらに上と横にずれています。3つの世界は螺旋状に連なっています。」
うん、なんか、途中にすごい名前があった気がする。七大魔王だとか六大神王だとか創造神だとか。
「七大魔王様と六大神王様はたまに人界で見かける事ができますが、創造神様はこの世界平和祭でしか人界に来る事はありません。なんでも、創造神様は常に世界の未来を見続けているため、神界から離れる事がないのだとか。」
へ〜。じゃあ、僕達は会う事がなさそうだな。(フラグ1)
え、会わない・・・よね?
「では、次に一年について説明します。1年は12ヶ月です。1つの月に30日です。1日は24時間です。大体はそちらの世界と同じだと聞いていますが、ここまではよろしいですか?」
3人は頷いた。
「はい、次に金銭についてお話します。単位はGです。これが硬貨で1Gです。これは鉄貨で10Gです。これは銅貨でこれは銀貨でこれは金貨でこれは白金貨です。順に100G、1000G、10000G、100000Gです。この上に王金貨と神金貨があり、1000000Gと10000000Gなのですが、この2つはあまり、国単位でしか出回らないので、知らなくても大丈夫です。国民の一般月収は3000G前後です。」
1G=100円と考えていいだろう。単純に考えて、月に銀貨3枚、年に金貨3〜4枚で充分ということか。
「とりあえず、皆様お1人ずつに銀貨100枚ーーー100000Gを渡します。これから、皆様は私の屋敷に住んでいただくのですが、これは生活費諸々を抜いて、ですので皆様の趣味に全て費やしてくれて構いません。」
「は?」
「ひ?」
「ふ?」
「へ?」
「ほ?」
「皆さん、ノリが良いですね。じゃなくて、多すぎませんか!?先程の話からすると、年収って一般的に金貨3〜4枚のはずですよね!?」
「はい、そうですね。ですが、皆様は私達の都合に巻き込まれてしまった方々です。これぐらい普通です。それに私の財布からなので、国のことは考えなくてよろしいのですよ?」
だから違う!?そうじゃない!?ああもう、貴族ってみんなこうなのか!?金銭感覚が狂いまくってないか!?
「まぁ、ともかく。そろそろ夕食の時間ですので、私の屋敷に向かいましょう。」
異世界は平和だった。だけど、僕の心は平和じゃない。