第十八話 俺の大物遭遇率はどうなってんだ?
さて、どっかの誰かさんが俺を回復したせいで、当初の予定通り、戦闘訓練することになった。
といっても、刀剣の使い方なんて知らないだよな〜。
・・・あれ? 何か急に戦闘に関する記憶が出てきたんだが?
「なあメリア、何したの?」
俺は少し離れた所で、お茶を飲んでいるメリアに聞いた。こんな事ができるのはメリアだけだろう。
「戦闘の記憶を貸しました」
「ああ、うん。ありがとう」
「ついにユウくんがツッコミを放棄しちゃったよ・・・」
メリアは淡々とやばい事を告げる。俺は思考を放棄して、素直に感謝した。その様子を見て、ルシは呆れている。
いやだって、メリアがやる事全部常識外なんだもの。
「とりあえず、その記憶に通りに動いてみて、私が相手するから」
ルシはそう言うと、右手に白銀の細めの剣を出した。メリアもメリアだけど、ルシもルシだよなぁ。
「ルシって剣使うんだな」
「いや、普段は使わないよ。今はユウくんが刀剣を使うから、私も合わせてみたの」
「なるほど」
いや〜ありがたい。いくらルシが強いのを分かっていても、素手相手に戦う気は出てこない。
「行くよ、ルシ」
「いつでもどうぞ」
そして、俺は右足に力を入れて、地面を蹴ると、
「はっ?」
え? たった一足でルシまでの距離を半分までにしたんだが? あれ? 俺、地球じゃ運動能力平凡以下だったはずだよな? 何だこれ?
まぁいい。そのまま斬り込む!!
「ハァッ!!」
瞬間、甲高い音が発生した。黒桜とルシの剣が打ち合った音だ。
俺は今、相当な力を入れているのだが、ルシの剣は全然動かない。
「ははっ」
乾いた笑みしか出てこない。自分の強さに対してか、ルシの強さに対してかは分からない。あるいは両方かもしれない。
同時にメリアからの『メッセージ』に気づいた。
ああ、そういうことか。なら、安心して、これを行使しよう。
数時間後ーー
俺は地面に四つん這いの状態になっていた
「フゥ、フゥ」
きっ、きっつい!! 普段、運動しないからなのか身体中めっちゃ痛い!!
「だ、大丈夫?」
「これ・・・が・・・ハァ、ハァ・・・大丈夫に・・・見えるハァ、ハァ・・・のか?」
「全然見えない」
いくらなんでも数時間動きっぱなしはきつい!
「まぁ、回復させましょうか」
「あ、ありがとうございます」
メリアが回復してくれるため、嬉しくて、つい敬語になってしまった。
メリアは軽く指を振ると、俺の体力は回復した。
「ふぅ〜。よし。ってあわわっ」
急にメリアが俺の頭を掴んで、自分の膝の上に乗せた。
いつぞやの膝枕ですか。
「今日はこの辺にしましょう。初日から動きすぎるのはダメです」
「そうだね。特にソレに関しては私たちはどうしようもないからね。やり過ぎは注意しないと」
ルシは俺の右側に座って、微笑みを浮かべながら,右手を俺の胸辺りに置いている。
「まだ、数日あるし、ゆっくりやっても、その辺の魔物じゃ相手にならないよ」
「そうなのか?」
「そうですね。ユウさんのソレは元々、中級魔族と同等の力はありますからね」
「そうなんだ」
ちなみに、魔族には上から魔王級、準魔王級、上級、中級、下級という位がある。そして、上級以下にはそれぞれ級の中で一位、二位、三位というふうに分かれている。非戦闘者などの魔族は下級に位置する。言わずもがな、ルシは魔王級である。
まぁ、とは言っても、貴族の爵位とは違って、単なる強さの指標程度でしかないらしい。
「ふああ。やばい。眠くなってきた」
久々に動いたからか、体ではなく、精神が疲れた。
「いいですよ。そのまま寝てください。ちゃんと部屋のベッドに寝かせておきます」
「おやすみ、ユウくん」
その言葉を最後に俺は寝た。
翌日ーー
「この前言った物はできた?」
「はい。できてますよ。できるだけ,希望に沿った形でしましたが、大丈夫そうですか?」
「ーーああ。大丈夫そうだ。ありがとうベル。はい。銀貨3枚」
「オッケーです。にしてもそれ誰に送るんですか?」
「ん〜。内緒」
送る人は決まって『いない』から今は内緒。
「え〜。教えてくれないんですか?」
「だから、内緒だって」
しつこく聞いてくるベル。まぁ、こんな言い方すれば、気になるのは仕方がないが、そもそもいないのだから、どれだけ聞いても無駄である。
「まぁ仕方ないです。諦めましょう」
「そうしてくれ」
「そうだ。ユウさん、今日も貴方にお客様が来てますよ」
「え?」
・・・嫌な予感がする。全力で逃げなければならないような気がする!
すると、後ろから声が聞こえてきた。
「初めまして、幻桜ユウ。私は『純潔』の神王メタトロン。以後、お見知り置きを」
振り返るとそこには白銀に紫を足したような人ーーいや、神がいた。
「えと、初めまして、ご存知のようですが、俺の名前は幻桜ユウです。こちらこそよろしくお願いします」
俺はこの日、愛が重いらしいメタトロン様に会った。
俺の大物遭遇率はどうなってんだ?
???「ついに純潔との邂逅ですね」
???「それではここで、色欲さんに純潔さんのイメージをインタビューしたいと思います」
色欲「え〜。メティはものすごい綺麗好きです。基本は神界から出ることはありません。言っちゃえば、引きこもりなんですが、彼女は心が白い生物を好みます。そのため、ユウちゃんにほぼ速攻でーーいや、もう落とされていると思います」
???「はい。ありがとうございます。つまり、次回は純潔さんが暴走する可能性があるということですね」
色欲「本当にありそうなんだよなぁ」