第十七話 創造神はなんでもあり
ザッザッザッ
「ハァッ! ハッ! ハッ! そこだ!」
「甘いよ」
「ぐっ」
「少し休憩にしよっか」
「はぁ、はぁ、あぁ」
ふぅ。その場に座って息を整える。き、きつい。でも、お願いした身だから、弱音を吐くわけにはいかない。
「だいぶ『黒桜』と『白幻』を使えるようになってきたね。それに魔力も良く扱えているよ」
「そうか?」
「うん! 当初の予定ならもうクリアと言っても良いと思うよ」
今、ルシから戦闘訓練を受けていて、神域に来ている。
このような状況になったのは数時間前にーー
「戦闘訓練?」
今、自室にルシが来ている。・・・・・・立派な不法侵入であるが、一応、シオンさんに話は通してあるため、大丈夫らしい。
それでも、急にここに転移されると驚くのだが。
それで、ルシに戦い方を学ぼうとしているのである。
「良いけど、どうして?」
「ああ、1週間後に収穫祭に参加するためにフローリアに行くんだけど、魔物が出るから、一応、自分の身を守れるようにしておきたいんだ」
「なるほど〜。良いよ〜。でも、戦闘訓練の前に自分の魔力の特性を知らなきゃいけないけどね〜」
「ぐっ」
そうなのだ。そこが問題なのだ。俺は常人よりも魔力が少ない。その上、その特性がシオンさんやルシ達にも分からないのだそうだ。おかげで、魔力を使いたくても、使えない状況なのである。
ちなみに後輩二人組はすでに魔力が使えている。神崎さんは水で、水沢さんは風なのだそうだ。神崎さんは「水を作り出せるなら、相手の口と鼻を塞いで、溺死されることができるのでしょうか」などなど、中々に恐ろしいことを言っていた。水沢さんは陸上部だからか、風を使って、ビュンビュン走る。後輩二人は中々に逞しい成長をしている。
「ん〜。中々に分からないよね。火や水に変換するわけでもなく、そのまま使ってるわけで・・・・・・も・・・・・・」
急にルシの声が小さくなったけど、何かわかったのか?
「いや、そういえば、黒桜はユウくんと『繋がって』変化しているんだっけ? そして、黒桜からは私やウルの加護の気配がした。『祝福』ではなく、『加護』? 加護は祝福の下位互換。祝福はユウくんからはしているから、祝福が完了しているのは間違いない。でも、黒桜から感じるのは加護? どういうこと? それに加護とは言ったものの『気配が似ている』だけであって『全く同じ』ではない。そして私とユウくんを繋いでいるこの『妙なパス』は一体? 間違いなく『この世界』のものじゃない。『この世界』のものなら私でも『確実に』分かる。まさかーー」
「お〜い。ルシ?」
あれ? 反応しない? 完全に自分の世界に入ってる?
「ユウくん!」
「うぇっ!? 何?」
急に呼ばれたから、変な声出ちゃった。
「脱いで!」
「はい?」
うん? 脱いで? なんで?
「上半身だけで良いから、ちょっと中身見せて!」
「あ、ああ」
一体どうしたのだろうか?
ルシの鬼気迫った表情に気圧され、すぐに上半身だけ服を脱いだ。
「あと、黒桜も出して!」
「へ? ああ」
言われた通り、黒桜も出した。
「やっぱり! ユウくんの体と、私の体に黒桜を通じて、パスができてる!」
「??」
「そっか! つまりはこれがユウくんの魔力か!特性は『心を繋ぐ』かな? 黒桜はユウくんの魔力を最大限に引き出すための媒介! でもいつの間に? このタイプは基本両者の合意の下に成立するはず。でも、言葉に出したことはないし、に、肉体的な交わいもし、してないはずだし。 祝福によるもの? いや、アスモとも繋がってるから、祝福じゃない? う〜、分からない〜」
どうやら、行き詰まったようだ。
すると、ルシから『ナニカ』が伝わってきた。
その途端、俺はルシの頭を撫でた。
「ふぇ!? ど、どうしたのユウくん? 急に頭を撫でるなんて。いや、嬉しいし、して欲しかったけど・・・・・・」
「え? ご、ごめん。何かルシが撫でて欲しいような気がしたから」
なんだろう? ルシから『好意』と『戸惑い』を感じる。これはなんだ?
「な、なんか。ユウくんから『戸惑い』の気持ちが伝わってくるんだけど?」
「俺もルシから伝わってくるんだけど」
どうやら、ルシにも俺の気持ちが伝わっているらしい。
「多分、これユウくんの魔力だ」
「え?」
これが俺の魔力? もしかして、さっきルシが言ってた心を繋ぐ魔法ってこと?
「うん。そうだよ。ユウくんは何かしらの方法を通して、誰かと魔力を繋げるみたい。そのパスを通して、心の中で言葉を伝えたり、読んだりできるみたい。任意でしないこともできそうだけど、どう?」
「う、う〜ん?」
今、初めて、自分の魔力を自覚したからな〜。上手く操作ができない。
「やっぱりか〜。今回は私が力を貸すよ」
そう言って、ルシは俺の体に触れた。
すると、何かが俺の内側に入っていく感じがする。
「うん、それが君の魔力だよ。しばらくはそれで行こう」
「ふ〜。何かドッと疲れた」
「うんうん。初めはそんなもんだよ」
「さて、今日はここまでにーーえっ?」
ルシがそう締め括ろうとした時、周りの景色が急に変わった。
っていうかここはまさか。
「なんで、このタイミングで神域に転移させたの? メリア?」
「いえ、なんだか、面白い話をしていたので、私も混ぜてもらおうかなと」
「メリア・・・・・・」
いや、何してんの?
「さて、ユウさん。この前言った通り、これーー『白幻』を差し上げます」
俺の心の声は無視ですか。そうですか。
とりあえず、白幻をもらったが、違和感がある。っていうか。
「メリア。この前言ってた時、白幻って刀って言ってなかった? これどう見ても、剣にしか見えないんだけど」
そうなのだ。見た目は完全に白い剣なのだ。まぁ、細かいところを気にしたら、嫌われると聞いたことがあるが。
「細かいところを気にしたら、嫌われますよ?」
うん。俺の心の声をそのままリピートするのはやめようか。
「まぁ、それはそれとして。剣にした理由ですが、元々、刀にする意味はなかったので、戦闘をイメージするなら、剣の方が良いかなと」
「適当過ぎない?」
まぁ、俺の理想ではあるんだが。
「では、戦闘訓練をするのでしょう? 私は少し離れたところで見ていますから、頑張ってください」
「いや、もう疲れたんですけど?」
すると、メリアは優しい指を少し動かした。
たちまち、俺の体力と魔力は全回復した。
え、え〜。流石、創造神。なんでもありだな。
???「ユウさんの魔力特性が判明しましたね」
???「『心を繋ぐ』魔法ですね」
傲慢「問題はこれ、ユウくんにとって異常な性能を持つんだよね」
???「どういう事ですか?」
傲慢「簡単に整理するとね。
・魔力による威圧感を受けない
・心を繋ぐ
・黒桜を媒介に心を繋いだ相手と魔力の共有
・黒桜を媒介に共有相手の魔法、権能を使用可能
・白幻を媒介に魔力による自身の身体強化
・白幻を媒介に共有相手に強化魔法
少なくともこれぐらいかな」
???「なんですか。この主人公特権。エグすぎるものばかりじゃないですか」
???「そうね。でも、魔力の共有をして、その相手の魔法や権能を使いたくても劣化版になるでしょうね」
???「あとは相手に強化魔法をかけるのは良いとしても、自分に対しては身体強化であり、魔法ではないから、人間では自分の体の限界にすぐに達するし」
???「そもそも、心を繋ぐのが前提ですからね」
???「そう考えると、意外と欠点はある・・・・・・のか?」