第十話 新年パーティー①
僕は疲れていた。まだパーティーは始まってないのに。すでに僕は疲れている。身体ではなく、心が。
ちなみに今はシオンさんに問い詰められ中だ。場所が場所なだけあって、声と顔は落ち着いているが、逆に声に抑揚が無さすぎて怖い。
そ、そろそろ話を変えないと。周囲の目が
「あの、先に国王様に呼ばれたと聞きましたけど、そちらの用は終わったのですか?」
僕がそう聞くと、シオンさんはこれに関してはまた後で聞きますと言った。
・・・はは。乾いた笑みしか出ない。
「コホン。はい。その件は終わりました。といっても、コウキ様とコトネ様とお会いしただけですので、また後で話す場を設けますが」
「そうなんですか」
じゃあ、俺先帰った方がいいかな?と思ってると、神崎さんが、
「ユウさんも行きますよ?」
「へっ?」
なんで?二重の意味でなんで?心を読まれた!?あと、僕も行かなきゃいけないの!?
「ユウ先輩分かりやすいですよ?今だって、動揺してるの顔を見れば丸分かりですし」
と水沢さんが言った。衝撃の事実!!悲報!僕は顔に出やすかった!!
「あ、そうです。あとで、国王陛下と話す事にもなるので心の準備をしていてください」
「ファっ!?」
やべっ。変な声出た。
「どうしてこんなに大物と会うんですかね」
「国王陛下は魔王様や神王様と比べるとそんな大物でもないですよ?」
シオンさん。なんか国王様に対して辛辣じゃない?
「お嬢様。いくら国王陛下が御父上であっても不敬ですよ」
シフォンさんがそう言う。えっ!?国王様ってシオンさんのお父さんなの!?えっじゃあ、まさかシオンさんって
「もしかして、シオンさんって王族なんですか?」
「そうですよ?」
またもや衝撃の事実!!お世話になっている人は王女様だった!!
「私達ってとんでもない人達に囲まれてるんですね」
「一番囲まれてるのユウ先輩ですけどね」
「言わないで」
そう言ってたら、増える気配しかないから。
「おや?どうやら始まるようですよ」
シフォンさんがそう言うと、会場の照明が消え、代わりにステージと言えるような所が明るくなった。
すると、いかにも国王ですよって人が出てきた。
「皆、よく集まってくれた。諸事情で少し遅れてしまったが、無事に開催できた事心良く思う。今年は異世界より勇者様と賢者様が来られた。皆拍手を」
国王様は金髪の青目でザ・キングという感じの人だ。こうして見ると、シオンさんと似ている気がする。・・・笑顔の裏に何かがありそうな感じが。
拍手とともに剣崎君と白河さんが出てきた。
おお、剣崎君は王子のような格好をしている。中々に煌びやかだ。顔がにやけているように見える。大丈夫か?
白河さんは賢者っぽく、水色のローブを着ている。遠くからでも緊張しているのが丸分かりだ。
「それでは自己紹介を」
「はい。僕は勇者の剣崎光輝です。皆様、一年間よろしくお願いします」
「えと、私は賢者の白河琴音です。よ、よろしくお願いします」
ふむ、剣崎は堂々としてるな〜。俺には無理だ。白河さんはオドオドしてる。なんか親近感湧くな〜。
「お二方、ありがとう。では皆、新年のパーティーを始めよう!」
国王様のその宣言と共にパーティーが始まった。
そして、俺は今みんなから離れてテラスにいる。
えっ?どうしてそうなったのかって?それはね。
僕がコミュ障だからなんだよ。
僕が上手に人と話せないっていうのもあるんだろうけど、入場の一件があってか、あまり話しかける人が少ない。
ルシとウルさんは言わずもがな、シオンさん達女性陣も女性の方々と話されている。あれに入る気は起きない。
だから、こうやって1人寂しくパーティーのダンスを眺めているのさ。
「やあ、君はパーティーは苦手かい?」
「いえ、そういうわけではないですよ。国王陛下」
国王陛下が来た。『予想通り』だった。とりあえず、頭を下げた。
「頭を上げてくれ。君とは個人的に話したいと思ってたんだ」
「そうですか」
「改めて、私はこのグランディア王国の国王のセシル・フォン・グランディアだ。セシルと呼んでくれ」
「ご丁寧にありがとうございます。僕は異世界人の幻桜ユウです。ユウと呼んでください。セシルさん」
「ふふっ。では、ユウ君と呼ばせてもらおう」
物腰が柔らかそうな人だ。僕が知る王族のパターンの一つだ。
「シオンから聞いているよ。こちら側の不手際で召喚してしまったことお詫び申し上げる」
「いえ、一年後には帰れるのでしょう?僕は気にしてませんよ」
言外に他の子達は知りませんけどと言ったようなものだ。
「ありがとう。君以外の子達には先にお詫びをさせてもらったよ」
なるほど、他のみんなも許したということらしい。
「そうですか。それで?用件はそれだけですか?」
「いや、もう少しある」
お詫びだけじゃないのか。
「巻き込んでしまったのに、厚かましい事だと思うが、できればシオンと仲良くしてやってほしい」
?どういう事だろうか?僕とシオンさんは仲が悪いように見えるのだろうか?
「僕はシオンさんが嫌いというわけではありませんよ?寧ろ、感謝しています。こんなに良くしていただいているので」
「そうなのかい?シオンからの手紙には君に嫌われているかもしれないと書かれていたのだが」
どういう事だ?僕がシオンさんを嫌う?それどころか、僕の方が嫌われてると思ってたんだが。迷惑かけっぱなしだし。
「・・・どうやらシオンの勘違いがありそうだね。全く、今まで箱入りだったのが仇になったか?」
「はあ。納得されたようで何よりです」
あとでシオンさんに聞いてみよう。
「その様子なら私の杞憂のようだね。はあ、親騒がせな娘だ」
「それぐらい可愛いものでしょう」
少なくとも入場の、いや、もしかしたら誘拐の時点で僕が魔王や神王に気に入られている事は周囲の事実となっているだろう。
そんな人に嫌われたとなれば、魔王や神王からの国の印象が落ちるかもしれないと思ったのだろう。まあ、単に娘を心配する気持ちもあるかもしれないが。
「では、私はこの辺で失礼するよ。あまり君を独占しすぎると、娘達に怒られてしまうからね」
セシルさんが後ろを見たので僕も見てみると、こちらを笑顔で見ているシオンさんや疲れた顔をしている神崎さんと水沢さんがいた。
「私の存在を忘れられた気がします」
気のせいですよ。シフォンさん。
リアル
祝十話!!
幻桜ユウ「長かった」
幻桜葵「まだ十話だよ」
幻桜愛理「兄さん、これからですよ」
幻桜礼花「頑張って〜」
⚠︎ここでの名前は本作と関係がありません。リアルでの会話を偽名で出してるだけです。これからはリアルの会話を出す時、後書きの左上にリアルと書いておきますので注意してください。