からとかな
私は加羅で今目の前にいるのが一個離れた姉の加菜。
家の庭で座ってたら加菜に連れられて夏になって綺麗に咲いたセンニチコウの花畑にいる。
私達は変わった姉妹だと言われる。
私にはそれがよく分からないが。
私は感情の起伏が無かった。お母さんが言うには生まれた時以来泣いていないらしい。これといった趣味もないし、こんなことがしたいとかいう欲望もない。それを一番象徴していたのが生まれて初めての空襲の時だ。このご時世、戦争や空襲があることを知ってはいたが怖いだとか憎いだとか思ったことは無かった。そんなとき、初めての空襲があった。家はなんともなかったけど、逃げなきゃとか怖いなとかそんな気持ちは少しもなくて空を眺めてぼーっとしてた所をお父さんに抱えられて防空壕に入った。とにかくそれくらい感情の起伏がないのだ。
そんな私に対して加菜は感情の起伏が激しい方だった。いつでもやりたいことがあって、けど、すぐ飽きて、また違うことをやり始める。空襲の時なんかわぁわぁ泣いていた。けどただ感情の起伏が激しいわけじゃなくて、子供っぽいとかはなくて、1歳しか違わないのに加菜の方がずっとずっと年上なのだ。よく分からないけど、加菜といる時だけちょっとだけ気持ちがいい気がする。
そんな加菜は私を心配していた。
こんなに何も感じないと一人になったとき危ないって。
私は一人になる気なんてなかったし、大人になったってできるだけ加菜といれるものだと思ってた。
加菜は私の面倒をよく見てくれる。
それで今、センニチコウの花畑に連れてこられた。
私はコンクリートの上に腰をかけて、ニコニコしながらセンニチコウで花かんむりを作っている加菜を眺めていた。
どうして私を連れて来たんだろう
私がそんな面倒なことをするわけないのをわかっているはずなのに。
「加羅!できたよ!上手く作れたでしょ!」
「うん。」
「これ、加羅につけてあげるね!はい!」
「加菜が作ったのになんでくれるの?私、つけたかったら自分で作るよ」
「いいの!私が加羅にあげたかったの!」
「そうなんだ。ありがとう。」
「ふふっ、私も加羅とお揃いにしたいからもう一個作ってくるね!」
加菜が一回で飽きなかった。珍しい。
ん?なんか空が光った。飛行機かな?空襲が始まるのかもしれない。加菜に言わないと。
「加菜、空襲が…"""""""""ピシャーーーー!!!"""""""""
「加羅!」
加菜が私に覆い被さってきた。どうしたの?さっきの音はなんだろ?そう思った途端にとてつもない爆発音がした。
驚いて目をつぶってしまった。
何が起こったんだろう?なんかねっとりした感触がある。
目を開けると、どろどろのものが私に張り付いていた。
なんで、加菜が覆い被さってきたはずなのに。
前が見えない。このどろどろしたのをどかさないと……
視界が開けると、どろどろの正体がわかった
加菜の皮膚が爛れてどろどろになったのだ
え、なんで、さっきの光と関係あるの?
でもなんで私はなんともないの?
まさか加菜が私に覆い被さって守ろうとしたの?
「え……?」
目から熱い液体が流れてきた
胸の奥からじわじわした物が出てくる
こんな感触しらない、しらないよ
それより……加菜が……
「加菜……」
「加羅……大…丈…夫……?」
加菜が笑ってる
いつもの楽しそうのじゃなくて、嬉しそうで悲しそうな笑顔
なんか胸がいたくなってくる
加菜の皮膚が爛れてる
このままじゃいけない気がする
加菜が死んじゃう
加菜に死んで欲しくない
そうだ……私が光に気づいたときに加菜を連れて逃げなかったのが悪いんだ
私が何も感じなかったから、加菜が私を守ろうとしちゃったんだ
私のせいで加菜はこんなになってるんだ
でも、今の私は何か感じてる……
胸の奥がぐちゃぐちゃになって凄い複雑な感じがする
何か分からない
けど、少なくとも加菜を守りたいと思ってる
早くお医者さんに見せなきゃいけない
「加菜、歩ける?それ、痛い?お医者さんに見せなきゃいけない気がするから、連れていくよ」
加菜がこくっと頷いた気がする
加菜の手を引いて大通りに出る
いつもは人通りが多いはずなのに人は誰一人いなかった
建物もたくさん崩れて、私が腰を掛けていたところの建物が無事だったのは運がよかった
加菜が喋らないと変な感じがする
その時、一気に手にかかる重量が増えた
加菜が寄りかかり始めたのかも知れない
急がなきゃ
加菜が死んじゃう
そんなのやだ
今まで加菜がいないとだめだった時がたくさんあった
私が6歳くらいの頃、みんなで旅行に出かけた時、お父さんとお母さんが旅館の売店に飲み物を買いに行って部屋にいなくなってしまった。そんな時に私が柱に頭をぶつけて額から血を流してしまった。痛かったけど、治そうとも思わなかったから放っておこうとしたら、驚いた加菜がお父さんとお母さんを呼んできてくれた。お医者さんに行って分かったけど、運の悪いことに頭蓋骨にヒビが入っちゃってたみたいで、どうとかこうとかで放っておいちゃいのちに関わるものだった、らしい。多分、加菜がお父さんとお母さんを呼んできてくれなかったらそのまんま血が止まってお父さんとお母さんには気づかれないで、危ないことになっていたんだろう。
それ以外にも加菜に助けて貰ったり、守ってもらったりしたことはあったけど全部、加菜には危害がなかったから私はなんとも感じることはなかったんだろう。
けど、そんな加菜が、私を何度も助けてくれた加菜が、今、私のせいで、いなくなっちゃう。
そんなことしたくない。
どうかどうか神様、加菜を助けてください
加菜は何も悪いことをしてないです
私より人の役にたっていて、みんなにも好かれているんです
加菜が助かるなら私はなんでもするから、死んだっていいから、
どうか加菜を助けてください_____
はぁ……
神様は不平等だなぁ……
ついさっき、
加菜の手をとっていた方の手が軽くなった。
加菜が自分で歩けるくらいになったのかもなんて希望を抱いて加菜の方をみたら
私が掴んでいた加菜の手の先に
加菜はいなかった
歩いてきた方に手が片方ない加菜が倒れていた
加菜の体にはウジが湧き始めていた
痛いっていわなくなった
死んじゃったのかなぁ
私ももう限界だよ
私の足にもウジが湧き始めて足が前に進まないよ
加菜を家に帰らせてあげたいけど無理だよ
家がどこかさえも分からないよ
私は加菜みたいになってないけど、
もう感覚が鈍くなってきて
加菜の名前も呼べなくて
私、死んじゃうのかなぁ
加菜のいない生活なんて地獄でしかないよね
もう死んじゃってもいいや
あぁ、なんで加菜が普通に生きている時に感情が出てこなかったのかなぁ
加菜ともっと話したかったなぁ
加菜と花かんむり作りたかったよ
涙が止まんないよ
何年もためといたみたいだよね
この時のためにさ
前、加菜が読んでくれたお話に
離れ離れになって死んじゃった、王子様と女の子が
生まれ変わってまた出会って、結婚して幸せになるっていうお話があったよね
もし
生まれ変わって来世っていうものがあったら
私、また、
加菜の妹になりたいな
でも、今度は、色んなことを感じられて、強くて、優しくて、加菜を助けられたり守ってあげたりできる加羅になりたいな
それで加菜とおばあさんになるまで一緒に仲良く暮らすんだぁ
もう感覚がほぼないや
頭もクラクラしてくるし
私は加菜の妹ですごく幸せだったなぁ
加菜、ありがとう、大好きだったよ
────加羅と加菜────




