第6話 人助けは金次第
グレイと出会ってから1年が経過が経過した頃、カルは立派な成獣となり、体長はグレイの身長と同じくらいまでの大きさになっていた。
そしてある日、森を抜けた先に人為的に作られた道を見つける。
「うおおおおおーーーー!!やっと見つけたぜえええ!道!!」
「キュン?」
「この道の先にはきっと町がある。俺も人に会うのは久しぶりだからな~。4年ぶりくらいか?色々調べねぇとな。亜人の町じゃないことを祈るよ」
道に沿って歩きながら、カルは人間の町についての注意事項を受ける。
「人間の町には法律ってもんがあって、好き勝手に殺しちゃ駄目だ。後々もめることになるから、喧嘩売られても買うなよ。
どうしてもやりたい時はバレないようにーー」
注意事項を受けている最中、前方からなにやら金属のぶつかる音が聞こえる。
近づくにつれて血の匂いも強くなってきた。
カルは前方が気になって仕方が無いが、道が曲がっていて見ることができない。
グレイは気に留めることも無く、町での注意事項の説明を続けている。
曲道を超えた先に見えたのは、馬車の周りで戦闘をしている6人の人間とモンスター2匹。
キングスパイダーと呼ばれるモンスターだ。
キングスパイダーの中では小ぶりな2匹だったが、それでも馬車の1.5倍はある。
見たところ、人間側は防戦一方といったところだ。
カルは初めて見たグレイ以外の人間に興味津々で、未だに続くグレイの注意事項の説明はもう耳に入らない。
グレイとカルはそのまま道から少しそれて、そのまま進んでいく。
カルは興味津々で人間の戦闘に顔を向けたまま、しかし歩くのは止めない。
グレイは少しの興味を示さないまま、カルに法律の説明をしながら歩く。
2人が通りすぎるのを横目で見ていた剣士の1人が突然大声で叫ぶ。
「そこの魔獣を連れたお方!!どうか!!助太刀を!!」
グレイは立ち止まり、剣士に振り向いて告げる。
「嫌だけど」
「ッッッ!!??」
剣士は拒否されると思ってもみなかったのか、びっくりした顔をした後苦々しい顔をしたが、そのまま歩き出したグレイに向けてもう一度叫ぶ。
「お礼はお支払いします!!どうか!!」
グレイは再度立ち止まり、片手を顎に当ててしばらく考え、その剣士に向かって交渉を始めた。
「じゃあ、お礼は金と、あと情報な。それと飯と~・・その馬車で町まで乗せてくれ」
「分か、り、ましたッッ!!」
「交渉成立な。よしカル、行けっ」
行けっと言われたカルは、きょとんとした顔でグレイを見る。
「ほら、早く行って殺してあげないと、あいつら死んじゃうよ?」
「キューン?」
僕が行くの?というカルの顔を無視して、グレイは片手を腰に当て、キングスパイダーに指をさし叫んだ。
「行け!!俺の魔獣よ!!蜘蛛を殺すのだ!!」
カルは呆れた顔をし、軽い足取りで走り出した。
まず手前にいるキングスパイダーの首を爪と牙で跳ね飛ばす。
カルが着地したと同時に、もう1匹のキングスパイダーの腹の下から直径1mほどの氷柱が地面から突き出し、体を突き抜ける。
そしていとも簡単にキングスパイダーは息絶えた。
ものの10秒で終わった。
それを見ていた剣士達は小さく「ひっ」という言葉を漏らした。
カルの戦いを見守っていたグレイは、カルに近寄って行きぐしゃぐしゃっと頭を撫でた。
「よーしよし、お前強くなったなー。さすが俺の弟だ」
カルはぶすっと不満そうな顔をしながらも、少し尻尾を振っているあたりまんざらでもないようだ。
「助太刀感謝いたします。私はこのチームでリーダーをやっている冒険者のドミトリーと申します」
「俺グレイ、こっちはカル」
「本当に助かりました。あのままでは危なかったところです」
「まぁ気にすんなよ。立ち話もなんだし、馬車で移動しながら話そうぜ。あと金も」
丁寧に対応するドミトリーに対し、グレイのえらそうな態度が際立っている。
剣士達はグレイの提案を受け入れ、怪我人を馬車に乗せ町に向かって走り出す。