第5話 魔法を教える 後編
グレイは夜食を取りながら、魔法の属性について説明する。
「魔法には属性っつーもんがあるんだよ。
炎、氷、風、水、雷、土、闇、光の8種類だ」
「んで、それぞれ得意な属性がある。生まれつきのものや、種族によるものだったりな。
カーバンクルは確か光属性が得意なはずだ。俺みたいな人間は生まれつきによって属性が左右される。だが、そんなのは関係ねぇ。
一種類の属性だけしか使えねぇなんてのは甘えだ。何回も言ったが慣れろ。どんな属性だろうと、慣れるまで使え」
「キュン!」
「あと・・・・、その属性そのものの種族っつーもんがいる。ガーディアンと言われる種族だ。
それらは氷の人とか炎の人って呼ばれたり、召喚獣とか呼ばれたりする」
そこまで言い終わると、グレイは少し悲しそうな顔をして夜空を見上げた。
カルはその様子を不思議そうに見つめる。
しばらくした後、グレイは話し出した。
「そのガーディアンとは契約ができる。契約したら、主が命令すればどんなことだってする。
ただ、ガーディアンとのタイマン勝負に勝たねーといけねーがな。まぁ、この世界にガーディアンに勝てる奴なんてそうそういねーし、そもそも出会えることすら稀だ」
そして悲しそうな笑いをしながらグレイは続けた。
「そのガーディアンが、俺の家族だったんだ」
カルは考えた。
グレイは人間ではないのか。
いやしかし、先ほども自分のことを人間と言っていたし、最初に教えてもらった時も人間という種族なんだと言っていた。
ということは、カーバンクルである自分のことも家族だと言うあたり、血のつながりではなくグレイが家族と思うかどうかなのだろう。
そして家族だった、という過去形。
そのガーディアンはもう死んでしまったということなのだろうか。
グレイはそんな考え事をしているカルの頭を少し乱暴に撫でながら話し出した。
「俺は氷のガーディアンに育てられたんだよ。生まれた時、恐らく捨てられたんだろうな。
森で俺を拾ったそのガーディアンが俺を育ててくれたんだ。その人の名はイブ。俺の母であり、姉であり、友人だ。俺のこの名前も、髪の色を見てイブがつけてくれたんだ。
イブとは契約もしていたんだが、訳あって今は契約が切れている。他にも契約していたガーディアン達がいたが、皆契約が切れているんだ。
俺は、その元契約者のガーディアン達・・・家族を探すために旅をしてるっつーわけだ」
「キュキュン?」
「ん?ああ、訳っつーのは・・・まぁ話すの面倒くせーからまた今度な。
とりあえず、ガーディアンってのは強いってことだけ覚えておけ。まぁ見かけたらコレかってすぐ分かるよ。
お前じゃまだ勝てねぇから絶対喧嘩を売るんじゃねーぞ」
「キュン。・・・キュ?」
「あ~、契約したのは7人だ。
氷のイブ、炎のヴァルガス、水のアレクセイ、風のセルフィ、雷のカヴィッチ、土のタウノ、闇のルーシー。
一番強いのは水のアレクセイだな。力で言えばルーシーやイブも強いが、アレクは別格だな」
家族のことを話し始めたら、もう止まらなかった。
イブは細かく口うるさい性格だとか、カヴィッチは馬鹿だとか、セルフィは食いしん坊だとか。
ヴァルガスは短気で喧嘩好き、アレクセイは普段クールなのに酔っぱらうと泣き上戸になる、タウノは穏やかで小動物好き、ルーシーは好戦的でとにかく戦闘狂。
一度ヴァルガスとカヴィッチが本気で喧嘩になり、それに喜々としてルーシーが参戦。
アレクセイとタウノとグレイが止めに入ったが、そのせいであたり5kmほど山は吹っ飛び焼け野原になってしまったとか。
話は尽きず、カルもまたカーディアン達の話を聞くのが面白おかしくて、深夜になったところで2人はようやく眠りについた。
翌日から、足場の魔法を皮切りにカルは色々な魔法を教わった。
中でも一番大変だったのは『回復』と呼んでいる魔法だ。
何が大変かというと、グレイは双剣でカルを切りつけにかかるのだ。
しかも重症と言えるほどまでに切りつける。
そしてニヤついた顔で言うのだ。
回復しねーと死ぬぞ、と。
そのおかげもあってか、それとも種族的な物なのか、回復はカルの一番の得意魔法となった。