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第4話 魔法を教える 前編

ある日、大きな湖の前でグレイが突然魔法を教えると言い出した。


「いいか、魔法っつーのはイメージと慣れだ。無意識に呼吸しているのと同じ様に、今から魔法を使うとか考えずに使えるまで慣れろ。

まず最初はこの足場を作る魔法だ。名前は・・・・『足場』だ。

なんだよその顔。忘れたわけじゃねーよ。多分そんな名前だろ。

この足場は戦う時すげー楽になる。でかいモンスターや、飛んでる奴なんかとも戦えるからな」


「キュン」


「んじゃまずこの場で出してみろ」


カルは戸惑う。


「ほら、こう、出すんだよ。ほら」


グレイは目の前で、『足場』正しくはエアストッパーと呼ばれる魔法を実践してみせる。


足元には直径1mほどの魔法陣ができ、グレイはその上に立っていた。


それを見てカルはぴょんぴょんと跳ねながら吠えてみたり唸ってみたりしたが、一向に使えない。


「キュン!ッッキュン!キューン!グルル!ガウ!!」


「ちげーって、何叫んでんのお前。こんなもんにいちいち叫んでたら足場の数だけ叫ぶことになるじゃねーか。

魔法は使うとか考えてたらそれだけ次の手が遅くなんだよ。使うとか考える前に出すんだよ」


そんな教え方では分からない、というのがカルの顔に出ている。


「なんだよその顔は。・・・・じゃあまず・・・そうだな・・・、俺の魔力を感じてみるか」


カルの不満そうな顔を見て察したのか、グレイは違う教え方を試してみようとカルの頭に手を乗せる。


カルは頭が柔らかいゼリー状のものに押される感覚がしたと思ったら、次の瞬間生暖かい風ようなものが体の中を突き抜けていったような気がした。


初めての感覚にカルは戸惑いを見せる。



「今のが俺の魔力だ。魔力っつーのは全身で使うから別に手じゃなくてもいいけど、固定の場所から出すイメージの方が安定しやすい。

ここから魔力が出るんだっつーのを強くイメージしながらやってみろ」


「キュン」


カルは右前足を自分の頭の上に乗せ、目を瞑り色々と試行錯誤を開始した。


傍から見たカルの恰好はとてもマヌケであった。


それを見たグレイは口を押えて横に向き、必死に笑いをこらえようとプルプル震えている。


そのまま30分、1時間と時が経つ。


カルはずっと同じポーズのまま未だに魔力と戦っている。


グレイは見飽きたのか、仰向けになり足を組んで空を見上げていた。


「キュンッッ!!!」


突然カルが叫ぶと、仰向けになっているグレイの頭に前足をのせ、ドヤ顔で見下ろしながら魔力を通した。


ニヤっとグレイは笑う。


「お、できるようになったじゃねーか。

じゃあ次はさっきの足場な。魔力が固まるようなイメージだ。

さっきみたいにいちいち跳んでたら疲れるから、自分の目の前で試してみろ」


「キュン」


それから足場ができるようになるまでには3時間かかった。


グレイはカルが乗れるほどの足場ができたのを確認すると、カルを軽々と担いで湖の上を足場を作りながら駆け上がっていった。


高さ30mほどの所で止まる。


「下は水だから死にはしねーよ。実践あるのみだ」


そう言うと、ぽいっとカルを放り投げた。

え、うそでしょ?と言わんばかりの顔をしたカルの挑戦第1回目は、「ギューーーンッッ」と悲痛な叫び声をあげながら一度も足場を作れず湖にダイブした。


グレイは下に降り、なにこいつちょっと信じられないという目を向けているカルを担いでまた上に上がる。


「お前ができるようになるまでやるからな」


落ちてはまた上がりを繰り返す。


グレイのスパルタのおかげなのか、カルの飲み込みが早いのか、5回目に挑戦した時には何回も足場を作り地面に着地できるようになっていた。


グレイはそれを確認すると、高さ30mの地点でぴょんっと跳ねると同時に前かがみになり、斜めに作った足場を蹴って一直線にカルに向かって飛び、目の前で着地する。


「足場は立つ為だけのものじゃねーぞ。練習しとけよ。んじゃ次の段階な」


「キュン」


グレイは目の前に足場を作り、カルに乗るように告げる。


カルは素直にその足場に乗った。


「これは乗れるだろ?んじゃ次」


グレイはもう一度足場を作る。


カルは同じ様に乗ろうとしたが、足場をすり抜けてしまう。


「こんな感じで、誰でも乗れるようにとか、こいつだけ乗せないとか色々できるんだよ。ほら、やってみろ」


カルは言われた通りに目の前に足場を作る。


グレイはそれに乗ろうとしたが、すり抜けてしまった。


「おー。やればできんじゃん。今回は一発だな」


グレイを乗せたくないという気持ちのおかげなのかは定かではないが、カルはすんなり習得できた。


その日は1日中カルの特訓にあてられた。


夜、グレイが捕って来たグレイトラビットの肉を食べながらも、魔法の授業は続いた。


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