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序章-1

 私の自我が芽生えたのは、この世に一人の女の子として生まれた時だった。私はその事実に驚き、頭が混乱した。私はまだ赤子で自由に振舞うことは出来なかった。泣くことしか出来ず、手足も碌に動かせない。誰かに頼らなければ何も出来ない存在。ただ茫然と時が過ぎていく。


 生まれて間もない頃、私は誰かの記憶を持っていることに気が付いた。名前を思い出すことはできないが、それが生まれ変わる前の自分だということだけは確かだった。その記憶は黒く、重く、朧げで、とても喜ぶような良いものとは言えない。それは私の中で違和感として存在していた。


 どうして過去を持っているのか。

 なぜ私は既に自我を持っているのか。

 その答えを求めて、私は黒く靄のかかった記憶を一つ一つ丁寧に思い出していった。


 記憶の中の私は狭い世界で生きていた。朝狭い部屋の中で目を覚まし、憂鬱な気分で何処かへと向かう。自分と同じような人達がたくさん集まり、毎日嫌になるまで同じことを繰り返す。そこに居る誰もが同じ時間にそこを出て、元来た道を歩き帰って行く。私も同じように来た道を戻り、狭い部屋に戻る。その中で薄い板のようなものを夢中になって覗き込み、絵ばかり描かれている本を開き、両手に収まる板を持ってそれの突起を親指でポチポチと弄る。その時だけは楽しさや幸せを感じていた。けれど、私が夢中になっている物が何なのか思い出そうとしても、言葉が喉元で使えて出てこない。肝心な事は思い出していない気がした。




☆+-----+☆+-----+☆+-----+☆+-----+☆+-----+☆+-----+☆+-----+☆




 私はこの世界でビビと名付けられた。ビビという名前はどこかで聞いたような気がする。しかし何所でそれを聞いたのか、誰から聞いたのか、やはり分からなかった。


 ビビ・ウィルダムはカタリア王国の騎士団団長を務めているヴィヌス・ウィルダムの一人娘だ。騎士団は主に国の警固を任されており、国内各地を訪れ、治安維持、逆賊鎮静、怪物討伐などに奔走している。現在の二代目カタリア王とは幼馴染であり、親友の間柄である。お互い信頼が置けない仲らしい。



 五歳になった頃、私は成長するにつれて思い出せる過去の記憶が減っている事に気が付いた。過去の記憶が知らない内に消えている。私の中で違和感として存在していたものが、いつの間にか私を形成するのに当たり前の要素になっていた。それが消えるとなると一抹の不安を覚える。過去の記憶は欠くことの出来ない、欠いてはいけないものに思えた。私は慌てて思い浮かぶ限りの記憶を書き出した。何時間もかけて記憶を洗い出したが、一番肝心な、一番大事だと思っている記憶は出てこなかった。もっと大切な、もっと重要なことをまだ覚えているような気がする。


 それからの私は常に本を持ち歩き、その日の出来事や思い出した記憶の事などを逐一書くようにした。


<< 序章-1 >>を最後まで読んでいただきありがとうございます。


6月15日に見易さを重視し、試行錯誤で改行を入れたり、ラインを入れたりと変更を致しました。

読みにくいだとか前の方が読みやすいなどご意見がありましたら、遠慮なくお申し付けください。


次話の更新は << 6月17日 18:00 >> を予定しております。

(変更があれば活動報告等でお知らせいたします。)

よろしければ次話も読んでいただけると幸いです。


【訂正】

次のお話の更新は << 6月 24日 21:00 >>を予定してます。

ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

全力執筆中ですので、お待ちいただけると幸いです。


ありがとうございました。

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