甘い星
真夜中、魚たちも眠りにつき静まり返る海辺に、
二人の影が月明かりにぼうっと浮かび上がる。
「ねぇ、ぼうしさん。」
「何ですか?人魚姫。」
「ぼうしさんの好きなものはなぁに?」
「好きなもの?」
きらきらとした青い、深海のような瞳で少女は見つめる。
「好きなもの……綺麗なもの…ですかね。」
そのまんまるな目を大きくして少女は花のような笑顔になった。
「わたしも!綺麗なもの、好きよ。貝殻でしょ、珊瑚でしょ、青い海に白い砂浜、お空も綺麗だし……あと星も!」
頭上に浮かぶ満天の星空を見上げ少女は微笑む。
「……星。」
そう言うと男は何やら懐をごそごそと漁りだした。
しばらくして出てきたものは、手の平に乗る大きさの瓶。
瓶の中には色とりどりの小さな星の形をしたものが入っていた。
「口を開けてごらん。」
男は少女の口の中にそれを一粒投げ込んだ。
「んっ…なぁにこれ、……甘くて美味しい!」
「金平糖ですよ。」
少女は先程よりさらに目をきらきらと輝かせた。
「金平糖!美味しくて綺麗なんて、すごいのね!」
「喜んでもらえてよかった。よろしければそれ、プレゼントしますよ。」
「いいの?……嬉しい。ありがとうぼうしさん。」
少女は頰を林檎のように赤らめ微笑む。
「ああ!さっき言い忘れたのだけど。」
「……?」
「わたし、ぼうしさんのことも大好きよ。」
「……私には勿体無いお言葉ですね。」