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VS巨神

「ルーナさん!」


「あ……ラビさん? なぜに断空から出てるんですか?」


 まさかガビルが殴って破りやがったのか?

 ジト目で睨むと、ラビが慌てて弁解してくる。


「違うの! ルーナさんがベヒモスにやられた時に消えちゃったの!」


「……あ、そうか。私ってば死んだのでした。この頃、死ぬ感覚が当然になって来たんですよねぇ……」


 この頃、『死』っていう出来事を軽く見るようになっちゃったな。

 そりゃあ私もわざと死ぬようなことはしないけど、もし死んでも「あー、やっちまった」程度だからね。


 ……にしても、これはどうしようかな。


 もう一度『断空』を発動してラビ達を守ることが出来るけど、巨神(タイタン)と戦ったら絶対に死ぬよね。

 しかも、何回も。

 その度に断空を張っていたらMPの無駄使いだよね。


「何ヲヤッテイル。サッサトソノ者達ヲ安全ナ場所ヘ退避サセルガ良イ」


 思いもよらない所から助け舟が来た。


「え? 良いの?」


「我ハ弱キ者ニハ手出シヲセン。ナニヨリモ、ソレヲシテモツマランダケダ」


「じゃあお言葉に甘えて……すこーし待っててね」


 意外と巨神が良い奴で助かった。

 そんなこと言えるのは余裕だからだろうけど、お言葉に甘えさせてもらおうか。


 壁を魔法で削って穴を作り、ラビとガビルを穴に放り投げる。

 そこそこの高さもあるから戦闘での被害はないでしょ。


「ラビさん、ガビルさん、私は――」


「ルーナさん。そろそろ元の口調に戻して良いわよ? 本当のルーナさんの姿を私は知りたいの」


「正直言って、行動が野蛮なのに口調はお淑やかって気持ち悪かったぜ」


 ……この野郎。

 頑張ってお淑やかキャラを演じていたのに気持ち悪いとはなんだ。


「……はぁ、私はあの巨神って野郎を潰しに行って来るから大人しく待ってろ。それとガビル、てめぇ後で覚えておけ」


「……あぁ、仕打ちは受けてやるから――勝ってこい!」


「――チッ……」


 ガビルの激励に舌打ちをして、巨神の前に立つ。

 自分が他人に心から応援されるのはいつ以来だろう。


 なんだ、まぁ……悪くない。

 気分はどちらかというと昂ぶっている。


「……待たせたな」


「ソレデハ闘争ヲ再開シヨウデハナイ」


 巨神は動かない。

 初撃は譲るってか?

 ……ナメられたものだね。その余裕な面が崩れる瞬間はどれほどの快楽なんだろう。


「――カタストロフ」


 これ一本で一国を滅ぼす投擲槍。

 それを避ける素振りも見せずにただ目を瞑る巨神。

 全力で投げた槍は一直線に巨神の心臓へ。

 ベヒモスの体内で放ったよりも大規模な爆発が起きて、砂煙が視界を遮る。


 そして、煙が晴れた時、そこには――――


「……嘘やん」


 無傷の巨神がいた。


「……サテ、次ハ我ノ番ダナ」


 巨神がブレたと思った瞬間、私は吹き飛ばされていた。


「『先読』が――アガッ!?」


 なんで『先読』が発動しない!?

 ……いや、そうか。

 発動はしているけど、巨神の動きが速すぎて重なって見えるんだ。


 そう理解している間に巨神は、ぶっ飛んでいる私の目の前に移動していた。


「――フンッ!」


「……ァ――ガハッ……」


 巨神は空中を蹴って無防備な腹を蹴り飛ばす。

 私に抵抗なんてできる訳なく、激しい衝撃と共に地面に叩き落とされる。


 もちろん私は死んだ。


【死亡を確認しました。器の再構築を開始します】


【器の再構築に成功しました】


「――てぇ、こんちくしょう――ガ!?」


 高速で生き返って愚痴をこぼそうとしたところに巨神の追撃が直撃し、頭が破裂した。


「貴様ハ何度デモ生キ返ル。ナラバ心ガ折レルマデ殺スノミ」


 巨神は最悪の宣言を告げた。




        ◆◇◆




 それからは生き返っては巨神に殺されるというのが何度も続いた。


 私がいる場所は度重なる巨神の一撃で崩落寸前になっている。


「遅イ!」


「――グッ!」


 これでちょうど百回目。

 百回も何も出来ずに殺されるのを繰り返している。

 いわゆるハメ殺しというやつ。


 最初は聞こえていたラビ達の声援も一切聞こえなくなっている。

 圧倒的な差で途中から応援もできなくなっているんだろうなぁ。

 ま、そうなるのも仕方ない。


 今まで余裕の表情で(ただし虫軍団は別)階層ボス攻略をしてきた私が手も足も出ないのだから。



【死亡を確認しました。器の再構築を開始します】


 もうこの声を聞くのも何度目だろう。さすがに飽きたわ。


『どうやら苦戦しているようだね』


 誰だ……。


『助けてあげようか?』


 ハンッ! いらねぇな。


『……じゃあどうやって勝つつもりなんだい?』


 勝つ方法だぁ?

 そんなの隙があればいくらでもあるわボケ!


『へぇ……それなら僕に見せてくれ。ただの魔物が神を討つ、その瞬間を』


 ああ、どこの誰だか知らないけど、よーく見ておけよ。


【器の再構築に成功しました】



「マダヤルカ?」


「…………」


「――フンッ!」


 頭が爆ぜる。これで百と一回目。



【死亡を確認しました。器の再構築を開始します】


【器の再構築に成功しました】



「マダヤルカ?」


 さっきと同じことを聞いてくる。

 死んだら何度も聞いてくる気なんだろう。


 巨神も私の精神がそろそろ限界なのではないかと思ってきているらしい。


「…………て……」


「ナンダ?」


「もう、許して……ください。……お願いします」


 俯いて小さく掠れた声でつぶやく。


「ツマラン、結局ハ小サキ者ダッタトイウワケカ」


 巨神は心底つまらなそうに呟き、視線を外す。


「サァ、次ハオ前達ダ」


「――ッ! おいルーナ! お前はその程度で諦めるのかよ!」


 ガビルが怒鳴っている。

 一切の反応を見せないまま、力を抜いて脱力する。


「ルーナ!」


「ルーナさんっ!」


「無駄ダ。コヤツノ心ハ死ンデイル」


 巨神が私の頭を乱暴に掴んで持ち上げる。

 ラビが手を口で覆って泣きそうな顔になっている。


「……オ前達ハドレダケ我ヲ楽シマセテクレルノカナ?」


 もう巨神は私に一切の興味を抱いていない。

 だから俯いてる私が悪戯顔を浮かべているのに気づいていない。


「デハ……行クゾ!」


「――くふっ」


 いや、これは無理だわ。


「……ナンダ?」


 面白すぎて――笑いを堪えるのが無理だわ。


「……あぁごめんね。これだけは使わないでおこうって決めてたんだけど……お前が強すぎたのが悪いんだぜ?」



【禁忌魔法を発動します】



 右手に黒く濁った球体が出来上がる。


 やっと隙を見せてくれた。

 やっとこれを発動できた。

 やっと巨神を――殺せる。



「さぁ、開戦と行こうぜ?」


 黒い球体を巨神に突き出す。


「何故、貴様ハソコマデヤルノダ?」


「何故かって? そんなの決まってるだろ……」


 当然のように笑って返す。


「私の愛娘がピンチなんだ。私は娘を助けるまで止まれないんだよ!」


 娘への愛をナメんじゃねぇ!

巨神が巨神でない件について。安心してください巨神ですよ。

(何を言ってるんだ?)

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