化物VS怪物
『ベヒモス
ステータス
HP:32655/54325
MP:932/1055
筋力:35662
魔力:355
・炎魔力:563
・水魔力:563
・風魔力:563
・聖魔力:563
・闇魔力:563
物理耐性:19535
・斬撃耐性:10952
・打撃耐性:10952
・刺突耐性:10952
魔法耐性:10652
・炎耐性:8652
・水耐性:7415
・風耐性:9531
・聖耐性:8542
・闇耐性:7341
敏捷:5632
スキル
『状態異常無効』『物理耐性Lv10』『斬撃耐性Lv10』『魔法耐性Lv7』『剛力Lv10』『堅牢Lv10』『打撃耐性Lv10』『刺突耐性Lv10』『魔法適正』『全属性耐性Lv6』『倍化』『底力』
称号
『破壊者』『暴君』『迷宮守護者』』
「……ちょっと頭おかしいんじゃない?」
いくらなんでもこのステータスは狂ってでしょ。
今までの階層ボス全てを相手にして二万しか体力減らないって……うっわ、マジうっわ。
しかもこいつはただの階層ボス。迷宮主って訳じゃないんだよね。
これよりも強い迷宮主に私は勝てるのか? あ~、考えるだけで頭痛くなってきた。
……いや、まずは目の前のこいつに集中しなきゃ。
相手が怪物ならばこちらは化物だしね。
そう考えるとやる気出てきた。おばちゃんやったるでぇ! ――誰がおばちゃんだ!
「おニ人とも、約束してください。これから私は本気を出すので絶対に手を出さない事。……私は蘇生術が無いのでおニ人が死んでも助けられません」
私が本気を出すということは派手な戦闘になることは絶対。
それに、私もベヒモスに集中したいから他人なんて考えている余裕がない。
たとえ死んでも攻撃の手段として魂ごと爆発させちゃうかもね。
「我の定めしものを隔離せよ――断空」
詠唱をアレンジして短く創った空間魔法を使って、ラビとガビルの周囲に空気の膜を何重にも張り巡らせる。
『断空』は中の物を空間から切り離して全ての影響を妨げるという、中にいる限り無敵の魔法。
もちろん私のオリジナル。
凄いでしょ? 凄いでしょ(ドヤァ)
だけど、これには弱点があって、内側からの攻撃に非常に脆い。
デコピン程度の威力でも崩れちゃうから注意が必要だ。
「ルーナさん。信じているわよ」
「――ははっ、魔物を気安く信じたらダメですよ? では行ってきます」
短い言葉の交わし合いが終わり、ベヒモスに向かって眷属を召喚しながら駆け出す。
その時、自分の顔が笑っているのを理解する。
楽しいんだ。こんなに強い敵と戦うのは初めてで、気持ちが昂る。
「ハッ! 楽しもうか、デカブツ!」
◆◇◆
ベヒモスは余裕そうに待ち構えている。
対する私はすでに千の眷属を召喚して共に突撃状態だ。
「随分と余裕かましてくれてんなぁ、おい!」
それなら先制攻撃はこちらが貰う。
「痺れろ――紫電!」
掌底を激しいスパークと共にベヒモスに叩き込む。
『紫電』は威力はほぼ無いものの、雷撃を練りに練って相手の体内に打撃と共に叩き込む合わせ技だ。
雷属性などこの世界には存在しない。昔に一度、天候の雷を興味本位で喰らってみたらコツを覚えて出来るようになった。
邪龍と戦った時にもこれは有効だったんだけど、ベヒモスは…………
「――ブオォオオン!」
ああ、効いてませんねこれは。
皮膚も硬いんだな。私のほうがダメージ喰らってるじゃん。
けど、刺激されたのか、ベヒモスは鬱陶しい虫を払うように足をバタバタさせる。
「いや、ちょっと待てぃ!」
巨体がバタバタするだけでも結構な振動が起こって、バランスを崩しながらも眷属が待機している後ろに下がる。
危ない危ない。あいつに踏まれたら終わってた。
……にしても『紫電』が効かないのなら、次の作戦である『眷属の物量攻撃作戦』に移るか。
「レッツラ、ゴー!」
眷属達がそれぞれ気合を入れながらベヒモスに向かって歩みを進める。
だが、結果はベヒモスの圧倒的な殲滅だった。
ゴブリンが棍棒で叩くも全く効かず踏みつぶされて終わる。
私が八つ裂きにされたアグルボアの風纏い時の引っ掻きも硬い皮膚には傷一つ付かない。
蜘蛛野郎の鋭利な鎌でさえも鎌のほうが先に折れてしまう。最後の抵抗である毒ですら皮膚に阻まれて効果が無い。
ジェネラルオークの怪力で放った一撃さえも、皮膚とは思えない金属音を鳴らして弾かれている。
ガーゴイルの空中からの攻撃も、簡単に腕を振るうだけで粉々にされてしまった。
虫軍団による蜘蛛よりも強力な酸性毒は、若干ベヒモスの皮膚を溶かすが、ベヒモスの地団駄で全てがペチャンコになった。
その場がグロすぎてちょっと直視したくないっす。
炎竜の最大火力であるブレスは皮膚を焦がすが、ベヒモスに目をつけられて捕まり、呆気なく殴り殺された。
あー、これはダメだ。――爆破。
千の眷属が一斉に爆発して凄まじい轟音が鳴り響く。
耳塞いでなかったら鼓膜破れてたな。
…………お、少しはダメージ入ってる?
けれど致命傷じゃなさそうだな。……いや、マジかよ。もう少しダメージ喰らっとけよチクショウ。
これもうどうしようかな。
ってうお! 歩いてきた!
――ドシンッ! ドシンッ!
歩くだけで地鳴りが凄いな。これは空に退避。
「――っぶね!」
一安心していたところにベヒモスが放った力づくのパンチが来る。
ギリギリで避けたけど、パンチの風圧で吹っ飛ぶ。
「あー、もう! 絶対に殺して眷属にしてやるからな! 覚悟しやがれ!」
ビッと指を指してベヒモスに宣言するが、返事は長い鼻の鞭のような攻撃で返ってきた。
今度はちゃんと見えていたので余裕で避ける。
ったく、つれないねぇ。
「焔の幕は終わりなき舞台を造り出し、業火の演舞は役者を逃しはしない。故に舞台は終わらず役者は永久に踊り続ける――エターナルフレイム」
ベヒモスから距離を取って攻撃を避けながら少し長めの詠唱を繰り出す。
そして完成した魔法を放つと、足元から焔の柱がベヒモスを囲む。
これは私が意識して魔法を解かない限り終わることが無い獄炎の檻。中は果てしない量の焔の渦が出来ているでしょうね。
だが、骨を溶かさないように調整されていて相手が死んでも渦に呑まれたまま焔の檻の中で踊るように漂い続ける。
私が作った魔法の中でも上位に来る趣味の悪い魔法だと自覚しております。あの時は……確か嫌なことがあって酒を飲みながら考えたんだっけ。
それを披露した時のマルギンの顔ったら面白かったなぁ…………っと戦闘に集中集中。
この魔法で弱点を見つけられればいいんだけど、どうにもダメージが入っている様子はない。
ただ、動けないみたいで柱を壊そうと暴れているって感じ?
……はぁー、そしたらあれしかないよね。
やだなぁ、できればやりたくない方法立ったんだけど。
勝つためには我慢するしかないよね。
…………よし、行くか。
「――ブォオオオオ!」
怒りをあらわにしたベヒモスは吠える。
衝撃波みたいなのが私にぶつかるけど、それを押しのけて加速。
口を開けたままのベヒモスに突撃して、口内へ入った。
噛み潰される前に急いで奥へ移動する。
皮膚が硬いなら皮膚が弱い内側から攻めてやろう。と思ったんだけど……不死の私にしかできない荒業だったね。
けれど、ここからなら一方的に攻撃ができる。
誰だって自分の腹を殴ろうとは思わないし、普通の奴からしたら自殺しに来たと思うでしょ。
――さぁ、じっくりと殺してやろうか。




